これぞ師弟関係。〜松井 浩「豪打 伝道の達人」を読んだ。
今年は、ほとんどプロ野球を見てません。
どうも、野球への関心が薄い一年です。
野球本もあまり読んでいなかったのですが、積読本からチョイスしたこちらを読み終えました。
「豪打 伝道の達人」
副題が「荒川 博 ・ 一本足打法を完成に導いた名伯楽」となっており、内容は王貞治と二人三脚で一本足打法を完成させていく過程を、荒川さんへのインタビューを元に綴ったもの。
以前、同じ著者のこちらの本を読み感想記事を書きました。
正直、この「打撃の神髄 榎本喜八伝」の方が面白かったかな。
というのも、榎本喜八という存在が謎めいており、榎本喜八の人物を追いつつ、その打撃の真髄・臍下丹田について理解していく読書体験が新鮮でした。
読む順番が逆の方がよかった気もします。
王貞治については、結構いろんな本や映像作品で、知っていることが多かったので。(実家が中華料理店で、幼少時、戦後にも関わらず食べることには困らず、頑強な体の基本が作られた、とか、プロ野球に入ったあと、伸び悩んだ時期に銀座を飲み歩いていた、など。)
とはいえ、興味深い部分もありました。
王貞治の打撃の流れのポイントが39箇所あり、いずれも荒川さんが論理的になぜ必要なのかを考え抜き、王貞治はそれを理解した上で、あとはひたすら実践することに集中した、というところ。
(野球をやっている人は、一つ一つの動作を自分でやってみても良いかも。バットの握り方、構え、ミート、スイング、フォロースルーまで、細かく解説されています。)
王貞治が昭和52年に不調に陥ったとき、荒川さんが解説者としてラジオの中継で「作った人間が直せば、すぐ直りますよ。」と発言したところ、ラジオ局にファンから「すぐ直してあげてほしい。」という電話が殺到し、それから連日、つきっきりで姿勢を直した結果、不調を脱することができた、というエピソードも良かったです。
当時、王貞治はハンク・アーロンが持つ755本のホームラン世界記録に迫ったところで、選手としては晩年の域。一本足打法も熟成の域だったと思いますが、それでも、最初に指導した荒川さんが見れば、一目でどこか悪いか見抜けてしまう、というのは凄い。
本当の師弟関係ですね。
あとは、巻末の「荒川博/王貞治年表」が、細かい情報満載で良かった。
中でも、王貞治がホームランの世界記録を塗り替えたとき、荒川さんの指導法を認めていなかった川上哲治が、「荒川、世界一おめでとう。いちばん喜んでいるのは君だと思う」と電報したという挿話が良かった。
王さんの芸術的なフォームの写真も満載です。
<野球本【INDEX】>も更新しました。