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最終電車物語:長い一日の終わりに

 大都会の長過ぎた一日がいま幕を下ろそうとしている。

 眠らぬ街などとはよく云うが、しかしそこに公共交通でアクセスできる時間はだいたい決まっている。四六時中休む間もなく動き続けるステイションが、僅かばかり小休止する間がある。

 現代の文明のなかでも、終電くらい美しいものもなかなかないだろう。日毎ほとんど時刻通りにターミナルを出たら、夜の寝静まった近郊までをひた走っている。そこにはただ静寂と侘しさだけが乗っている。

 思えばきょうもまたあすも、夜の街の空気をそのまま乗せこんで、真空パックのごとくいよいよ走り出す。

 ぜひとも御乗り遅れのなきように。


このホームから発車する本日最後の列車です─

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