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《大学入学共通テスト倫理》のためのアブラハム・H・マズロー

大学入学共通テストの倫理科目のために歴史的偉人・宗教家・学者などを一人ずつ簡単にまとめています。アブラハム・ハロルド・マズロー(1908~1970)。キーワード:「欲求の階層(生理的欲求→安全→所属や愛情→他者承認や自尊心→自己実現)」「自己実現の欲求」主著『人間性の心理学』『動機と人格』

📝センター倫理のマズローは「欲求の階層」論がとにかく大事です!

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アメリカの心理学者マズローの「欲求の階層」はこのピラミッド状の五段階でよく説明されます!

📝それの拙訳がこちらです!

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📝この「欲求の階層」論は要チェックなすごくいい話です!

△まず第一階層はこれです!

生理的欲求は、疑いの余地なく、あらゆる欲求の中で最も優勢なものである。(略)人間がパンのみによって生きるということは、パンのない時には確かに真実である。しかし、パンが豊富にあり、いつもお腹いっぱいの時には、人間の願望はいったいどうなるであろうか?(『[改訂新版]人間性の心理学 モチベーションとパーソナリティ』(A. H. マズロー著、小口忠彦訳、産業能率大学出版部)p57/60から引用)

これがマズローの「欲求の階層」第一階層。「生理的欲求」は最も大切なものと認めながら、それが満たされれば別の欲求にかられる人間というものについてコメントしている箇所です。

△続いて第二階層はこれです!

生理的欲求が比較的よく満足されると、次いで、新しい一組の欲求が出現することになる。大まかに安全の欲求と範疇化できるものである(『[改訂新版]人間性の心理学 モチベーションとパーソナリティ』(A. H. マズロー著、小口忠彦訳、産業能率大学出版部)p61から引用)

これがマズローの「欲求の階層」第二階層。この「安全の欲求」は生活の必要を確保する欲求ということができるでしょう。

△第三階層はこれです!

生理的欲求と安全欲求の両方が十分に満たされると、愛と愛情そして所属の欲求が現れてくる。(『[改訂新版]人間性の心理学 モチベーションとパーソナリティ』(A. H. マズロー著、小口忠彦訳、産業能率大学出版部)p68から引用)

これがマズローの「欲求の階層」第三階層。この「所属・愛情」は集団の中での安定をより強く求めていく欲求ともいえます。

△第四階層はこれです!

社会では、すべての人々(略)が、安定したしっかりした根拠をもつ自己に対する高い評価、自己尊敬、あるいは自尊心、他者からの承認などに対する欲求・願望をもっている。(『[改訂新版]人間性の心理学 モチベーションとパーソナリティ』(A. H. マズロー著、小口忠彦訳、産業能率大学出版部)p70から引用)

これがマズローの「欲求の階層」第四階層。「自尊心」の項目がでるように、自分の満足が社会的な関係の中にきざしています。センター倫理的に、この第四階層までの「基本的欲求(欠乏欲求)」と扱います。

△ラストの第五階層です!

これらの欲求がすべて満たされたとしても、人は、自分に適していることをしていないかぎり、すぐに(いつもではないとしても)新しい不満が生じ落ちつかなくなってくる。(略)人は、自分がなりうるものにならなければならない。人は、自分自身の本性に忠実でなければならない。このような欲求を、自己実現の欲求と呼ぶことができるであろう。(『[改訂新版]人間性の心理学 モチベーションとパーソナリティ』(A. H. マズロー著、小口忠彦訳、産業能率大学出版部)p72から引用、ただし「自分に」「うる」「なければならない」の傍点を略した)

これがマズローの「欲求の階層」第五段階&「自己実現の欲求(成長欲求)」。飽くことなく「自分」というものを追及していく人間の姿を、マズローはこの「階層」によって説明しました!

📝マズローは際限なく上昇する人間を肯定しています!

「自分自身であるというこの課題に関しては、それぞれの個人がみな勝利者になり得るだけでなく、地球上に住む全人類がまさしくこの意味で同時に勝利者となることもできるのである。」(『マスローの人間論 未来に贈る人間主義心理学者のエッセイ』(エドワード・ホフマン編著、上田吉一・町田哲司訳、ナカニシヤ出版)p95から)

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マズローは、全人類の基本的欲求が満たされ、同時にそれぞれの「成長欲求」を完成するという人類の破格のゴールを思い描きました。スケールの上でも、求めるレベルも青天井なのが彼の「欲求階層」理論です!

📝マズローは人類の上昇志向を"B"と名づけて記述を加速します!

B-Cognition, because it makes human-irrelevance more possible, enables us thereby to see more truly the nature of the object in itself.(COGNITION OF BEING IN THE PEAK EXPERIENCES, The Journal of Genetic Psychology, 1959, p47)

「B認知は、人間が関与しない状態を可能にする。このおかげで、我々は対象自体の本性を正しく理解することができる。」が拙訳(同僚に訳文をチェックしてもらいました、記して感謝です!)。"D(Deficiency)"=「欠乏」による欲求の次にあらわれる、"B(Being)"=自身の「存在」に根ざしたこの領域をマズローは、「B認知」「B価値」と名づけて繰り返し論じています。こんな風に、欠乏の充足をこえた人間の欲する力をハイテンションに肯定したマズローの「欲求段階」説はものすごく素敵です!

📝最後は「ポリアンナ」とも渾名された彼の前向きな言葉をどうぞ!

生命の営みに対する奇跡の感覚を取り戻す努力をする。たとえば、赤ん坊は奇跡である。(『マスローの人間論 未来に贈る人間主義心理学者のエッセイ』(エドワード・ホフマン編著、上田吉一・町田哲司訳、ナカニシヤ出版)p104から引用)

これがマズローの「至高感覚」のひとつ。マズローは人間が生きる上で「至高感覚」という奇跡的な感覚を感じることも必要だと述べています。たとえば、赤ちゃんに感じるまぶしさがそう。

原子化は、人生のあらゆる側面に、あらゆる対人関係に、精神内部の関係に、自然や物質界とわれわれの関係に、(略)また愛、結婚、友情、家族といった最も基本的な概念にも、浸透している。われわれは、しばしば無意識のうちに、そういった関係を、相対立するもの、ゼロサム的なもの、反シナジー的なものとして、つまり、人は支配するか支配されるかであるとか、「私の利益はあなたの不利益に違いない」といった具合に見てしまうのである。(『マスローの人間論 未来に贈る人間主義心理学者のエッセイ』(エドワード・ホフマン編著、上田吉一・町田哲司訳、ナカニシヤ出版)p172から引用)

こんな感じがマズローの「シナジー(相乗作用)」。マズローはゼロサム(誰かが得れば誰かが失う合計ゼロ)の関係を越えた社会の「全員勝つ」ラインを想定しました。そこで「シナジー効果(「相乗効果」と訳される)」という、互いにより利益を生み出せるレベルがあると力強く説きます。「欲求段階」と「シナジー」の2つの概念で、マズローは経営理論の分野でも有名です!

あとは小ネタを!

「幸福というものは、実際には何か別のものに付随して起こってくる現象、副産物であるらしい。その時点では気付かなくても後で振り返ってあの時は幸福だったと認識できるのは、なにより、やり甲斐のある課題、価値ある目的に没頭し献身した時である。」(『マスローの人間論 未来に贈る人間主義的心理学者のエッセイ』(エドワード・ホフマン編著、上田吉一・町田哲司訳、ナカニシヤ出版)p40から引用)。私にとってマズローは、人間が前向きになるときの『間違いない感覚』をクリアに言葉に移せる存在です。啓発的な人生哲学の語り手としてものすごく魅力的な人物です!


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