僕がペーパーバックを読み始めたわけ⑦
この日も私はペーパーバックをもとめてさまよっていた。場所はブックオフ飯田橋店。ここにはものすごい量の洋書があるので、自分の読み通せそうで面白そうなものを厳選していく作業がとてもたのしい。
そして手にとったのはLois Lowry の “THE GIVER” である。すごく格好いいカバーだなあ。SF的世界設定のジュブナイルみたいだぞ。日本語訳は出ているのかなあ。たまにしか来ないし値段が安いので買ってしまおう。
おわかりだろうか。私は邦訳もばっちりある現代の児童文学の超名作『ギバー』(シリーズ)を知らずにいたのである。こんな面白い小説を知らずにいたのがすぐに恥ずかしくなった。映像化もしているし余計にそう感じる。
私は幸福だった。予備知識なしに本作が読めた。世界設定のおそろしさを予感しながら、次々と明かされる秘密におどろいた。主人公のとまどいに共感した。そして、終局での主人公の決断とラストに心臓をつかまれた。
この作品はネタバレなしに読むのがおすすめ。私が連想する作品は大今良時の漫画『不滅のあなたへ』である。まったく似ていないが、どちらも世界をひたむきな物語でつかもうとする最高のエネルギーが読める作品なのだ。
引用は冒頭の一節を。
It was almost December, and Jonas was beginning to be frightened. No. Wrong word, Jonas thought. Frightened meant that deep sickening feeling of something terrible about to happen.
“THE GIVER” written by Lois Lowry, HMH BOOKS, p1
(拙訳)もうすぐ12月でジョナスは怖れはじめていた。いいや、この言葉はまちがいだとジョナスは思う。怖れるっていうのはなにかひどいことが起きそうでものすごく不快になる感覚という意味だ。