待ち合わせは、いらない【夢見る恋愛小説】
もしもあの頃の僕が
「恋」というものを自覚していたら、
片想いと片想いが出逢って「両想い」という
マジックが起こせたのだろうか…
高校3年の春、
高校生活最後のクラス替えの掲示を見てから
僕は新しいクラスの下駄箱へ向かった。
明日からしばらく気をつけないと、
朝ボーッとしてたら無意識に2年の下駄箱に
着いてアレ?なんてことになる。
脱いだ靴を手に取ろうと下を向き、
起き上がった時に話しかけられた。
「おはよう…!」
「お、おはよ!」
と答えながら僕は必死に自分の記憶を
辿っていた。
僕より20cmくらい背が小さい。
ぱっと見おとなしそうだけど、
実は意思がしっかりしてそうな女の子。
正直あまり見覚えがないなぁ、
今まで同じ学年にいたのか。
でもその子は僕を知っていた感じがした。
知らない人に言う「おはよう」とは
何か違う感じがした。
まぁいいか、今日から同じクラスなら
どっちみち今日から友達ってことになる。
それからあっという間に季節が巡り、
何度か席替えもあったが見事に席も
近くなることなどなく、僕とその子の
距離は1ミリも縮まらなかった。
休み時間だって僕は男友達とサッカーの話
とかワイワイしてるし、
その子も仲良しの女の子たちと
おしゃべりしてる。
変わったことと言えば、
飲み物に特にこだわりのなかった僕が
その子がいつも飲んでいる甘そうな
キャラメルマキアートとやらが気になり、
1度飲んでみたらどハマりしてることくらい。
次に僕たちが会話を交わしたのは、12月。
もう体育祭も文化祭もあったというのに
僕たちの運命はこんなにも交わらなかった。
給食のデザートを巡って争奪戦が
起こる日がある、焼きプリンの日だ。
今日も朝から寒かったし、プリン日和だ!
と謎に盛り上がるクラスの男たち。
その輪の端で、ちゃっかりジャンケンだけは
参加しようと思って笑ってた僕に突然、
その子が話しかけた。
「これ…、食べる?」
「え、いいの?! ○○ありがとうな!」
おはようしか話したことないやつに突然、
名前を言われるわ頭わしゃってされるわで
その子が固まってる。
「わ、ごめん前髪崩しちゃったね…
でもほんとありがと、いただきます!」
断わる選択肢は僕になかった。
だってキャラメルマキアート好きな女の子が
プリン嫌いなワケないだろ?
あとでこの17年で1番味わって食べるよ。
そんな、おはようとプリンのエピソード
しかない僕たちはそのままバタバタと
卒業までしてしまったのだ。
もちろん、連絡先など知らない。
卒業と同時に芸能の道へ進んだ僕は
世界のいろいろな恋の歌なんかも、
たくさん聴くようになった。
そこで思い出すのがいつも、このなんとも
内容の少ない女の子との思い出だった。
それで初めて気付いた。
あの「おはよう」からの1年間、
僕はずっとその子を見ていたわけだが、
まさかそれが恋だったのだ。
今の僕なら簡単に気付けることなのに、
話してもないのに好きな飲み物まで
わかるほど興味がある子がいたら、
それが何を意味するのかなんて。
今の僕の仕事はたくさんの人に出逢う。
僕は現実的な考え方をする方なので
その全てに意味があり、
全て大事な出逢いだと思ってる。
だから、思い出のなかのあの子とも
何か意味があるのなら、焦らなくても
またいつか逢えると思ってる。
それがいつになるかはわからないし、
なんの意味もないならほんとにあれきり
かもしれない。
まずは目の前のことを頑張る。
次に逢うときに、かっこいい僕でいたいし。
あれ、実はいつかに期待してる僕もいるな。
だから、明確な待ち合わせは、いらない。
あの頃と変わらない、
地球が存在するだけでいい。
それだけで必要ならまた逢える。
ねえ、今夜も月がきれいですね。
~※~※~※~※~※~
待ち合わせシリーズなのに、まさかの
いらないと言い切る理論系男子きました!笑
とある芸能人の男の子が、
高校生の頃の思い出がほんとは恋だったと
後から気付くというお話でした♪
女子より「恋」という感覚に気付くのが
遅かったりする男子あるあるですよね。
その頃から自覚してたらまた違ったのかな?
なんて、大人になってから戻れない過去を
振り返った記憶、あなたにもありませんか?
今回のお話を産んだのは珍しく曲ではなく、
このツイートに付いてた1枚の写真でした↓
この写真を見た、とあるフォロワちゃんと
即興の妄想トークでひととき盛り上がった…
そのふとした会話があまりに具体的で素敵な
"妄想の高校時代"を一瞬で作り上げてしまい
私の熱が冷めやらなくなって、スゴい勢いで
1話書き上げたところでございます。
(寝なさい、明日も仕事よ私)
はぁ、書いたらやっと冷静になってきた 。
その子にもこの物語が届きますように♡
【追記】
今回私が自分でTXTの曲とつなげられなかったんですが、お話を読んでくれたフォロワちゃんが思い浮かんだと教えてくれたこの曲↓
制服に教室に…いや、ピッタリじゃん!!
ということで後から追記でオススメでした♪
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