閻魔羅闍-ENMA THE GREAT chapter3
皆さま、こんにちは。
いつも、お疲れ様でございます。
小閻魔でございます。
ええ、相変わらず閻魔大王様がおられません。
だいぶ時間も経ってしまいましたので、
ここまでを振り返らせていただきます。
↓
現在は閻魔大王様は人間の裁きを行わず、鬼や銃など人間を殺してきた者の罪を裁くようにしました。働き方改革と言われるものでございます。分業を始めまして、私小閻魔が人間を裁くようにしました。人間が地獄に来る基準も高めまして、そう安易に地獄へは来られぬ様になりました。そう甘くはありません。さて、現在閻魔大王様が裁く対象の砂糖と呼ばれるものでございます。ペットの狗も行ったきり帰ってこず、痺れを切らした閻魔大王様はみづからの脚で砂糖を探す旅に出られました。砂糖とは一体何者なのか、(人間でないことは確かですが。)私は地獄に来た人間にそれの詳細を聞きますが、聞けば聞くほど不可思議なことばかりで。最近やってきたのがある老爺でございました。大層貧相な身なりでございまして、取り敢えずその罪状を聴くと不思議な返答が返ってきました。その老爺は米を喰べただけで地獄へ来たというのです。ミツマタの罪状には、極悪人として書かれております。
ふう。
少し話が複雑になりますが、この宇宙には輪転と呼ばれる仕組みがあります。輪廻転生の略称でございます。しかし、一つの魂には211年という区切りがございます。211年を過ぎた魂は、地球の近くの天国と地獄の輪廻から離れ、くらやみに向かいます。そこで魂は消され、新しい魂が生まれ、地球の近くに戻り待機するという流れになります。この211年という数字でございますが、蝉が輪転を頻繁に繰り返すことからきております。一般的な素数セミの場合17年の周期ゼミと13年の周期ゼミでは約211年で初めて出会うとされ、それを基準にさせていただいております。罪状にはあくまでも輪転できる者とありますが、罪を償う時間が211年では到底足りず、これではこの老爺は惨めで仕方がありません。ですのでこの極悪人老爺のしたことは何なのか、なぜこのようなことになったのか。また、冤罪であるならば魂の延長を閻魔大王様に懇願する必要がありますので、閻魔大王様を一刻も早く大王の椅子に戻さなくてはなりません。今は地獄に居るものが砂糖という奇跡に近い状態でございますので。いやしかし砂糖というものがどのようなものなのか分かりかねますので、砂糖に関する情報を手に入れたいという次第でございます。
まずはこの真っ直ぐと腰の座った老爺に立ち往生していただきたいのですが。
さて、以上が粗筋でございます。
しかし。
いいわぁ、俺はもう充分生きたんべ。
食べたもんが不味くて、それで腹ぁ壊したのは情けねぇ。
んでも、俺がしたことだ。
どんな罪だってええよ。
いえ、そういうわけにはいかないのです。
まず、地獄法典には、いかなるものも地獄に来たものは裁かれなくてはならない。ということが書かれております。なので、貴方様がどのような罪を犯してこのような罪状になったのかを教えて頂きたいのです。
んあ?そんなこと言ってどうすんだべ。
俺はどんな罪でもいいって言ってんだ。
ええ、貴方様はそれでもよろしいかと。
これ、地獄に来た人間はみーんなやってんのかこんなこと。
いえ、毎回ではありませんが、貴方様の持ってきた罪状自体に不備がある可能性もありますので、一応確認をさせていただきたいのです。
なんだ、おめーは。
はい、初めてお目にかかります、小悪魔です。
一瞬消し去ろうかと思いました。
カカ、小悪魔か。随分人間に優しいんだんべ。
優しいのではなくて、正当に罪を裁くことがお勤めなのです。
ほうか。ただ、なんとか法典ってのにゃ、正当だなんとかなんて書いてねぇんだべが。
ええ。解釈の違いですが、罪人の持ってきた罪状を認め、執行すれば法典に則ったことになります。
がしかし、正当というのは、私の個人的な趣味でして。
趣味か。プライドっつんじゃねぇべか。
いいえ、嗜好です。
ところで貴方様は、先ほどダンゴを喰べたと言いましたが、罪状には米とあります。
こちらはどのようなことでしょうか。
あぁ、どっちも正しいだんべ。
ダンゴは米がらできてる。
ええ、しかし、その場合は最終的に米ではなく、団子と罪状にかかれるはずなのです。
ん?説明がめんどくせぇなぁ。
大変お手数おかけします。
俺が、米から育てたんだべ。
それをダンゴにしたんだ。
うちは和菓子屋やってたんだべ。
親父の作った和菓子屋で団子売ってたんだべ。
俺が死ぬ12年前に潰れちまったけど。俺が潰したんだ。潰れてから、俺の人生はくだらねぇもんだべ。
なるほど。では、お米も育てていたんですね。
いや、であれば、もっとおかしな話です。
自分で育てた米を作り、それをダンゴにした。
その団子を食べただけで地獄へ…?
もういいか。俺がやった事だべ。
食べて死んだのも俺のせいだべ。
死んで地獄に来たのも俺のせいだべ。
それをなして小悪魔が人を助けるが?
おめぇそれでも悪魔か?!
なんと、悪魔に歯向かう珍しい人間です。
なるほど、もう結構です。
それならば、なぜ食べただけで地獄に堕ちたのか、
これを持て余す私の時間を使って、
考えてみましょうか。
ええ。分かりました。
しかし、
この老爺はまだあと一つ、
話していただきたいことがあります。
分かりました。
大変お時間をおかけして申し訳ございません。
最後に、一つお聞きしたいことが。
あ、いいべ。なんだ?
ええ、砂糖とはどのようなものなのでしょうか。
あ?
砂糖?なんでそんなもんのこと言わなきゃなんねんだ。
ええ、今砂糖が大変われわれを苦しめておりまして。
人間をたくさん殺してきた物ですから、
地獄へやってきたのです。
砂糖について、何か知っていることをなんでもよろしいので、教えてください。
俺はさっきも言ったが…元は和菓子屋だんべ。
ダンゴには砂糖入れる。
だから地獄に来たのかもな!カカ!
なんと、砂糖はそうやって人を殺していたのか。
ダンゴに入るほどの小ささ。
そして、人間が食べる物に寄生し、摂取すると死に至らせる。
だとしたらこの老爺が死んだことには説明がつく。
しかしそれは老爺が地獄に来る理由にはならない。
まだ未解決の部分がある。
しかし、これ以上、老爺を詮索することができず、
残念ながら本人の了解を得たということで
罪状通り執行することを認めた。
その件については、まだ遺恨が残る。
閻魔大王様に話を聞いてみよう。
さて。
その閻魔大王様は今頃、
何をしてらっしゃるのか。