【読書感想文】『ノートルダム・ド・パリ』ユゴー
『ノートルダム・ド・パリ』を読了しました。
立ち上がりの遅さを乗り越えさえすれば、あとはノンストップの一大スペクタクルロマン小説でした。
舞台は折々に鐘の鳴り響く、中世魔女狩り時代のパリ。
美しく無垢なジプシーの踊り子、
邪恋に狂う聖職者、
醜い躰に愛情を隠して涙する鐘番、
婚約者がいるのに浮気三昧のイケメン騎兵、
娘をジプシーに奪われた老女。
ノートルダム大聖堂を中心として描かれる、思いのすれ違いと狂乱と恋情と光と影の二転も三転もする物語に、思う存分、浸りながらページをめくり続けました。
『レ・ミゼラブル』でもそうだったんですが、作者のユゴー先生は(もともと戯曲を書かれているからなのか)非常に映像的な文章を書かれる方なんですよね! 光と影を操り「絵」を描き出す手腕は、まさに光と影の魔術師。
映像的なギャップのつけ方がまた素晴らしい。
鐘つき塔という「一番美しく高いところ」から、地下牢という「もっとも穢く低いところ」まで。
パリ中心部の「残虐な都市の広場」から郊外の「美しく退屈な田園」まで。
あらゆる点で対照的な舞台が、効果的に物語の中に織り込まれていくんですね。
ドラマが書かれる前の、舞台の「設定」だけで心が沸き立つってすごい。
これは本当にすごいことです。
正直、ここまで面白いとへこみます……。
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最近ご無沙汰ですが、私も趣味で小説書いたりしているんですね。
それで、こういうお話は読む分にはほんと大好きなんですけど、自分で書くとなるとなかなか書けなくって。私、周囲の世界を「映像」ではなく「文字データ」に置換して脳内処理するタイプらしく、こういう「映像的でグッとくるシーン」がどうしても書けないんです。
でも、『レ・ミゼラブル』にせよ『ノートルダム』にせよ、ユゴー先生の作品は文字の連なりを読んでいるだけで、脳内に舞台や映画のような映像があらゆるアングルで次々と再生されていきます。そりゃ誰でもメディアミックス化したくなるよな、と妬ましくなるほどに。
もちろん向き不向きはあります。
でも、昔はコメディなんて絶対に書けないと思っていたのに、蓋を開けたら意外と書けてしまったりもしたので、私のやる気次第なのかもなあ…と思ってみたり。
(これです)
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閑話休題。
ところで、この小説って某漫画でいうところの「登場人物全員片思い」のアオリがぴったりだなって……(俗な感想だ!)その結果が四葉のクローバーみたいな温かなエンディングじゃなくて絞首台とか白骨とかになっちゃうのが本作品が悲劇の傑作たるゆえんであると思います。
まあでも、ディズニーさんがハッピーエンド改変しちゃう気持ちはわかる。すごくわかる……美しいけれど、強い想いが報われず血にまみれ、乾涸びて朽ちていくのもまた、やりきれないのが人の心なのです。
というわけで、ディズニーで『ノートルダムの鐘』というタイトルで結末を変えて映画化されているらしいので、機会を見つけて鑑賞してみようと思いました。※
あーーー、それにしても面白かった!
悔しいなあ!!!!
2017.6.19