『ノートルダム・ド・パリ』を読了しました。 立ち上がりの遅さを乗り越えさえすれば、あとはノンストップの一大スペクタクルロマン小説でした。 舞台は折々に鐘の鳴り響く、中世魔女狩り時代のパリ。 美しく無垢なジプシーの踊り子、 邪恋に狂う聖職者、 醜い躰に愛情を隠して涙する鐘番、 婚約者がいるのに浮気三昧のイケメン騎兵、 娘をジプシーに奪われた老女。 ノートルダム大聖堂を中心として描かれる、思いのすれ違いと狂乱と恋情と光と影の二転も三転もする物語に、思う存分、浸りながらページをめ
先日読んだ、『ドゥームズデイ・ブック』(コニー・ウィリス/早川書房)がものすごく良かったので感想を書きます。 今のところ、今年度の上半期ベスト。 下半期もこれを超える読書体験をできそうか?と考えると怪しいです。 そのくらい良かったです! ネタバレにならない程度にご紹介しますね。 物語は、キヴリンの訪れた中世パートと、予期せぬパンデミックに巻き込まれながらも生徒を連れ戻すため奔走するダンワージー教授の現代パートが並行して進みます。 前半はゆったりと進むのですが、後半第三
『続あしながおじさん』を読みました。 幼いころは無印の『あしながおじさん』が愛読書だったのに、続編の存在自体を長じて初めて知ったのです。一生の不覚! 読んだのはこの版。曽祖父の本棚で見つけました。 現在入手可能なのは、下の新訳です。 図書館の骨とう品みたいな翻訳(Daddy-Long-Legsに「あしながおじさん」という訳語を初めて充てた訳者による翻訳本…)で今回初めて読んだんですが、いやあ、とんでもなく面白かったです! もっと早くに読んでいたかった! ……と思う反面、
角川つばさ文庫版の『あしながおじさん』を読みました。原書既読済。 子ども向けの抄訳って、今までそんなに前向きなイメージを持っていなかったんですが、これが、とってもよかったんですよ!! 表紙/挿絵のイラストもかわいいですし、かといって原作者の直筆挿絵もおろそかにせず、ちゃんと収録してあるのも好感度高いです。 子どものころに初めて読んだ『あしながおじさん』の表紙がこちらです。 秋田県に法事で行ったとき、親戚のおばあさんに貰った記憶があります。すぐに夢中になりました。ラストの
トーベ・ヤンソンの大人向けエッセイ『島暮らしの記録』を読みました。 ムーミンシリーズの作者さんですね。 好きな海外文学感想ブログさんで紹介されていたので気になりまして…。 内容は、フィンランドのある小さな孤島に小屋を建て、二十年以上暮らした彼女が、小屋を建てる時のエピソードや、暮らしていく中であった出来事などを諸々つづったエッセイです。 ですが読んでいて、ちょっと引っかかったことがありまして。 明らかに、トーべ女史は一人で住んでいるわけではなく、トゥーリッキ・ピエティラさ
胃がなんだかぐるぐるときもちわるいです。 やだ…繊細だからストレスで…っ?!(昨晩夜更かしして本を読んでいたせいですよね?)(はい…) というわけで、古本市的なところでもらってきた気がするけれど詳細な記憶もなく出自も不明な「現代東欧文学全集」<9>より、ルーマニアの国民的小説 『はだしのダリエ』 を読み終わりました。 すごく良かったです。 次々と馴染みない言語の名前が乱舞し、話はややとっちらかり気味です。 いきなり親戚の話になったりいきなり世間話になったりいきなり回想になっ
『居酒屋』(ゾラ)を読みました。 古い海外文学全集の、 古賀 照一 訳です。 前半までの感想 しんどい。 非常に有名なフランス古典文学であり、ゆえに結末が悲劇になることは残念ながらわかってしまっています。 精緻で手の尽くされた描写を積み重ねながら、貧しくとも平凡で善良な庶民の女性がじわじわ、じわじわと泥にのまれていくように沈んでいくさまが丹念に丹念に描かれていくの、かなりつらい。 ちょっと浮上したかと思うとそれは罠でしかなく、浮上させてくれた人のために緩々と沈み、また浮上
『ロリータ』(ナボコフ/新潮文庫刊)を読みました。 今やすっかりお馴染みの「ロリコン(ロリータ・コンプレックス)」なる単語を生み出した伝説の古典です。 なんかもう、とにかくすごかったです。 狂人の独白体を巧みに使い、見事に読者を煙に巻く手腕。 物語そのものが、ジャンルごと繋ぎ目もなく二転三転していくドラマチックさ。 間違ってもストレスなく読めるような小説ではありませんが、その「ストレス」こそがこの小説の何よりの魅力でもあると思いました。 例えば。 語り手(主人公のハンバ