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ねえ、佐々木さんちに行けたの?
練馬にいた時。
2月のあるいちじつ。
こたつでひくりかえっていたら 隣の部屋でごそりと
音がした。スーツが落ちたんだ。
ハンガーがどうにもやる気のないやつで ハンガーなのに
スーツを着ていられない?というか
ハンガーだけが欄間に残り スーツが落ちるという事がよくあった。だから
スーツが落ちたと思った。
ま、いいか。
2~3分後 まて、スーツの持ち主の顔が浮かぶ。
ちょっと、くちゃくちゃなんだけどと、怒られるのはめんどくさいなと。。
で、起き上がり隣の部屋へ。
見ると知らない人がいる。 あれ?ここ私のうちなんだけど誰かな?と
「どなた?」彼曰く
「ここは練馬の佐々木さんのうちだと聞いたのですが、あなたこそ誰ですか?」
と言いながら、落ちたスーツを拾い上げハンガーに着せようとしている。
「スーツ落ちていたんだ、拾ってくれてありがとう、すぐ落ちちゃうんだ」
といいながら、私の苗字は佐々木ではない。
彼にこの家は佐々木家ではないことを伝えた。
伝えながらふと、彼の足元を見たら靴を履いている。
「・・・てか、佐々木さんのうちより先に、お家に上がる時は、靴は脱がなきゃだめでしょ。しかもその絨毯(や、ラグ?)。我が家で一番高いシルクで1万円したんだから。」
と、注意。だってそうでしょ。外国じゃないんだから。しかも私が欲しくて買ったシルクの上に土足だよ。
「あ。ごめんなさい。」
すなおにあやまられ仕方ないなと思ったので、とりあえずどこから入ったのか聞いたら、空いている窓からと。
当時1階に住んでいて、掃出しになっていた窓から彼は入ったのだと言う。
「お家にはいる時は、玄関から入らなきゃだめでしょ。
私、住宅地図持っているから、佐々木さんをいっしょに探してあげるよ。
玄関から入っておいで。待ってるから。
庭をぐるっと回ればいいんだよ。わかった?」
彼はうなづいて窓から出て行った。
私は玄関に回り、ドアを開けて待っていたんだけれど、
おそくとも15秒後には現れるはずの彼が現れない。
何なんだよ。一緒に探してあげるのに。
「おーい!おーい!どこ?」
と聞いても答えない。変だなあと思い
庭を探しに行ったけど、辺りを見回したけれどどこにもいない。
近所に従姉妹がいたから電話して一部始終を話したら
警察に電話しろと。
「美樹ちゃん、それはあきすだから」
空き巣?にわかに信じられず、言われた通り警察に電話。
パトカーがやってきて、世帯主にも連絡しろと。
電話したら、割と近くにいて一時間しないうちに
警官と、夫と、私と集合できた。
いろいろ聞かれて、なにもとられていないし、
と言ったら、夫だけが外に呼ばれ警官とぼそぼそ話している。
耳をそばだてて聞いてみたら
「大変失礼かとは思うのですが、もしかして奥さんは
少し障害をお持ちですか?」と警官。
「いや、妻は、いつも、あんなです笑笑。」と夫。
「ご主人も大変ですな笑笑」と警官。
「・・・・・」
ふと思い出した。
10年以上前の話だけど。
佐々木さんを探していた彼は、
佐々木さんちに辿り着けたんだろうかと、
あの日私はずっと考えていた。
時々この話をすると、いろいろ言われるけれど、
でも気になるのは、それだけだった。