《エッセイ》学び
先日の催眠商法の一件で
両親といろいろ話した。
父は『こんなうまい話があるわけない』
と詐欺であることは理解していたが
どうやって最終的に騙すのか見て見たかった、
経験してみたかった
とふざけた事を言って
家族から総スカンをくらった。
ひとまずもう行かないと約束してくれて
ほっとしたのだが
久々に父といろいろ話して
考えることもあった。
父は終戦直後に生まれ
裕福だったわけではなく
食べるものにも困った時期もあり
高校に行くのもやっとだった。
高校卒業後
長距離トラックの運転手として
定年まで勤め上げた。
繊細で優しい父が
ありのままで生活できるわけはなく
生活のために
強くならなければならなかった。
人に騙されたこともある。
が、本人は人が良すぎて気づいていない。
私が仕送りをしても
お金の使い方がわからない。
自分のためにお金を使ったことがないから。
欲しいと感じるものも
特にないのだ。
今回、催眠商法の営業マンたちは
丁寧に相手をして話をしてくれるわけで
孤独に何十年も
昼夜逆転の長距離運転を続けた父は
人との関わりが
とても嬉しいものだっただろう。
人のさみしさにつけ込む
詐欺を働く輩を
私は激しく軽蔑する。
父は携帯も持っていないし
ネットも使ったことがない。
健康食品の話を聞くのも
本当に
「勉強」
として興味深く
真面目に聞いていたようで
「塩にもいろいろあるらしいんじゃ。
四国の塩と別の所の塩は
また成分は違うんかのぅ?」
そんなことを
嬉しそうに話す。
私は
父は学びたかったんだな
って思った。
びっくりするくらい
いろんなことを知らないというのは
それだけ
仕事だけに
集中して生きてきたからだ。
深夜、長距離運転。
荷物の積み下ろし。
肉体労働。
家に帰ってくるのは
週に1〜2日。
帰っても昼間に寝るだけの生活。
「これはこうらしい、あれはこうらしい」
とすごく些細なこと
騙すための健康食品の営業説明を
父は
新しいこと・学びとして
新鮮に吸収したんだ。
父がピュアすぎることは知っていたので
バカにする気持ちは全くなかった。
生き生きと話す父の声を聞いて
私は嬉しかった。
「うん、うん」
と聞いた。
どんなことからも学びはある。
父にとって
あの営業マンは
知らない様々なこと
健康に関する大切な真実を
優しく教えてくれる
まるで先生のような存在と感じていたのかな、と思う。
その先生のような人が
自分を騙そうとしていると
受け入れるのは
つらかっただろう。
いや、今はまだ受け入れられていないのかも
しれない。
店長のことを嬉しそうに話していた。
それでも父は家族を信じ
ひとまず家族の意見を尊重してくれたのだ。
ありがとう。お父さん。
世の中知らないことだらけで
新しいことに
好奇心を持って
『知りたい』
と楽しんでくれること
詐欺師からじゃなく
日々の生活から
学ぶこと、これからも楽しんでね。
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