TIMELESS
【読書感想文】 TIMELESS ・ 朝吹真理子
揺蕩うような物語だなと思った。
愛する人と、昔話を語り合ってるような…
そんなお話しだった。
揺蕩うようなと最初に書いたが、書かれている言葉自体はとてもテンポが良くて、言葉がシャワーのように降ってくる。
ポンポンポン弾んだり、シャーシャーと流れたりする。
読む側が理解しようが彷徨っていようがお構いなしに降ってくる。
「ここまで読もう」と決めて読み始めるが、その箇所に来るとやっぱり次のページを捲りたくなるような騒動に駆られる。
突然、シーンが変わる。
最初は少しそれに戸惑うが、読み進めていくとそれが揺蕩うことにつながっていく。心地よくなっていくのだ。
物語は…
高校生たちの放課後の風景。
教室に残っている生徒たちの他愛ない雑談から物語は始まる。
そしてその10年後 …
高校の同級生だった『うみ』と『アミ』は恋愛感情がないまま交配のために結婚する。
つかみどころのないアミに戸惑いながら結婚生活を始めるうみだが、私からすると、うみの感情もまたつかみどころがない。
交配が成功して、うみが妊娠して、アミは姿を消した…
そして生まれた息子アオ。
ふとしたことで知った他人の子供である『こよみ』という女の子も引き取って、うみは2人の子供を育て上げる。
アオは父親の顔も知らぬまま17歳になっていた。
ここまでだと、単なる若い男女の無責任な結婚物語?と思うかもしれないが、そんなに単純な話ではない。
うみとアミのそれぞれの中にある想いが、家族の形を次々と変えていく。
(あくまでも個人的感想だが)うみは、悲しんではいない、苦しんではいないように思う。
まるでそうなることがあらかじめ決められていたかのように、その道を歩いていく。
うみの言葉でとても素敵なのがある
『私たちはなりゆきでいっしょになった。なりゆきで相合い傘をした。
なりゆきで妊娠した。
なりゆきでこよみに会って、なりゆきだった、ぜんぶ。
たいせつになったなりゆきだった』
なりゆきって今まで責任逃れの言葉かなと思っていたが、もし、そうなる運命とか言うのであれば、運命もきっとなりゆきなのだなと思う。
自分が今、ここでこうやって生きているのも『なりゆき』の結果なのではないだろうか。
そう思うと、よくある不都合も「なりゆきだね」と、素知らぬ顔で通り過ぎることができるかもしれない。
なりゆき....なりゆき.…
物語の後半からアオの目線で物語は描かれていく。
アオもまた何か深い想いを持ってその時を生きている。
最終的にアオは父親であるアミに会うことがあるのか、ないのか…
さて、どうなるのだろうか。
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