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にぎやかな落日
にぎやかな落日/朝倉かすみ 光文社
ある雑誌の紹介文に、
『自分の今後、そして自分の老後について思いをはせながら読むことになる小説だ。』と書いてあった。
確かに読んでる最中に、何度も亡くなった父や母のことを思ったし、生きていれば必ず訪れるであろう自分の落日についてもいろいろ考えながらの読書であった。
物語は、北海道で一人暮らしをする83歳になるおもちさんが主人公。
甘いものが大好きで間食がやめられず持病の糖尿病が悪化してしまう。
夫(勇さん)は施設に入っていてもう帰ってくることはない。娘は東京で仕事をしている。
息子の嫁に日々の面倒をみてもらっているが、注意されたことをなかなか守れず、入院を余儀なくされる。少し認知症らしき言動も出始めて、本来明るい性格のおもちさんにもちょっと暗い影が時々顔を出すようになる。
目まぐるしく変わっていく日常がおもちさんの心にどう影響を及ぼしていくのか…
ばかになっていくような気もした。だけども、ばかを止められなかった。
ばかのお風呂に肩まで浸かっているみたいなところで記憶が途絶えて、
ハッと気づいたら糖尿病患者にされていた。
おもちさんはとてもキュートで明るいおばあちゃんだし、その様子は読んでるこちらも楽しくなるくらいなのだけど、老後問題は山積みでそこのところを考えるとやっぱり「自分はどうなるのだろう...」と不安になる。
おもちさんはいわゆる独居老人問題でニュースなどで取り上げられている一人暮らしの老人からすると恵まれてはいる。
周りに心配してくれる者がいて、いろいろ段取りをつけてくれる。
しかし、本人は「自分は大丈夫」と思っているからそれが余計なお世話として映るのだろうが、バスを降りるときにうまく降りれなかったり、プリンのスプーンをビニール袋から出すときにうまく取り出せなかったり、そんな些細なことを経験して「歳をとるってこういうこと」と納得していく。
でもにぎやかなのだ。おもちさんの周りはいつもにぎやか。
独特な文章と元気なおもちさんの様子を微笑ましく読むのもいいだろうし、
自分の両親、あるいは自分自身の今後を考えながら読むのもいい。
考えたところでなるようにしかならないのも世の常なのだけど。
独特な文体がとても新鮮だった。
とても現実的な表現があったかと思うと、目頭が熱くなるような情緒的な表現もある。「何かが起こるかも」と緊張が走るも、その後ふっと笑い話に変わるような感じだ。
北海道の方言をふんだんに使っているのもすごく新鮮。
あらためて北海道の言葉って可愛らしい言葉だなと思う。
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