茶柱の立つところ ・ 小林聡美
【読書感想文】 茶柱の立つところ
何かの女性雑誌を立ち読みしていたら、小林聡美さんが新刊を出されたという記事を見かけた。
それは日々のことを綴ったエッセイだと知った私は、その足で雑誌コーナーから新刊書コーナーに移動してこの本を買った。
私は小林聡美さんの佇まいというか、持ってらっしゃる雰囲気というか、どこがどうという理由ははっきり答えられないのだけど、とても好きなタイプの女性だ。
以前(2021年1月20日)に『誰もが小林聡美になりたがる』というエッセイをこのnoteに書いた。それはその当時彼女が主演していたWOWOWオリジナル連続ドラマ「ペンション・メッツァ」を観ての感想を含めて書いたものだったのだが、その記事を再度読み直してみて、私の中で彼女に対する気持ちは1ミリも変わってなかったことに気付かされた。
そしてこのエッセイは、50代半ばになった小林聡美さんが日々の暮らしの中で気づいたことや、楽しんでいること、あるいは悩んでいることなどが綴られた本になっている。
とても失礼な言い方になるかもしれないが、とても普通の感覚で書いてらっしゃる。私の中にある何かとか…友人が考えてる何かとか…親戚のお姉さんが考えてる何かとか...そういうものと変わらない普通の感覚でいろんなことを思ってらっしゃる。女優さんだから特別なことが書かれているわけではなくまるで友人からの手紙を読んでいるような感覚で読み終えた。
それが彼女の素敵なところであり、その素敵さを真似しようにもできない不思議な魅力を持ってらっしゃる方だ。
本文には、老眼鏡のお世話になる話や、心身の安全のためにゆっくり生きることに決めた話や、近所の体操教室に通っている話…など、年齢を感じさせる話も少し織り込まれている。着実に年齢を重ねていらっしゃるのがわかるのだが、とても上手に重ねられていらっしゃる印象がある。
私がうんと若い時、そして小林聡美さんもうんと若い時、ちょっと接点があった。その時は「とてもキュートな方だな」と思ってみていたが、今はその時のキュートさも残っているものの、多分に加味されたのはナチュラルさ。
キュートでナチュラルってかなりの武器になる。
やっぱりね、誰もが小林聡美になりたがる…はずだわと思った。
そのキュートでナチュラルな彼女の思いや行動が、微笑ましく読める作品だった。
そして相変わらず猫がお好きなのは、私としてはとても嬉しいことだった。
最後の「もろもろのおわび」の項で、
『今に至るまでとうとう可愛げは芽生えなかった』
と書いてらっしゃるが、いえいえ、とんでもない。
あなたはとても可愛げのある女性だと思いますよ。
それを、私の感想の締めの言葉としたい。