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ミャンマー再訪

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「私」のミャンマー・ラカイン滞在記。 「伝える」など高尚な目的はなく、ある出来事と私の心の変化を書いてます。 マスコミESに書けば確実に落ちる文章と内容。
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#ラカイン

スタディーノート9 小火

スタディーノート9 小火

ミャウー。ラカイン州北部に位置し、15-18世紀にかけて栄えた古都である。かつて花めいた王宮こそ残ってはいないが、今でもその堅牢無比(?)の苔だらけの石垣は今もアラカン人を横目に居座り続けている。私は横を通る時、やはり日本の築城技術はすごいのだとほくそ笑むのであった。今年6月からアラカン軍とビルマ軍の衝突の影響でラカイン州のインターネットが遮断されている。9月初目に一部地域のブラックアウトは解除さ

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スタディーノート8 亡霊

スタディーノート8 亡霊

私は今ミャウーの宿に滞在している。ついにシットウェを後にしたのだ。そっと聴覚を森の虚空の方へ集中させてみる。鈴虫か何か虫と宿のペット犬の耳を強く掻き毟る音しか聞き取ることはできない。宿の主人によれば、昨日、近隣のビルマ軍施設から発砲音が聞こえたという。戦闘を行っている訳でもなく、山に潜むアラカン軍を威嚇するための射撃だそうだ。22時46分、一発の銃声が虚空を切り裂いた。

↑ラカイン州地図

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スタディーノート7 脳内議論

スタディーノート7 脳内議論

世界各地で働きバチが失踪していることを皆さまはご存知であろうか。日本でもまた多くの外国人実習生の失踪が相次いでいる。今年4月から政府により改正入管法が施行され、この5年間で日本の外国人労働者受け入れの数は増加するとされている。彼らは希望とともにやってくるのだ。しかし、その冀求を打ち砕かんとする社会構造が日本には部分的に存在している。現在滞在中のシットウェにもそんな希望を持つ若者たちがいた。
 8月

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スタディーノート6 浸水

スタディーノート6 浸水

生まれて21年、初めて洪水というものと対面した。水位がサンダルの底の高さを越えた時、私は屋台で朝食を取っていた。幸運であったのは目の前に麺をすするフロントマンが座っていることである。一人でずぶ濡れのまま、凍えながら啜る暖かいスープなど孤独の極致に違いない。
 9月10日(月)、シットウェは今雨季でも群を抜く豪雨に見舞われた。浸水してしまったメインロード界隈の食品店の従業員たちは椅子の上にしゃがみ込

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スタディーノート5 アラカン人の一面が垣間見える日

スタディーノート5 アラカン人の一面が垣間見える日

現在私が滞在しているシットウェでは、多くのアラカン人が「アラカンヒーロー」として崇め奉っている一人の僧がいた。ビルマの英領からの独立運動に貢献した、ウーオッタマ僧である。
本日9月9日は彼の命日である。昨晩、ビールを飲んで酩酊状態のまま床に就いた私は、翌朝太鼓の音頭と特大スピーカーにより何倍にも増幅された歌声で目を覚ました。朝から何事であるか。歯磨き粉を乗せた歯ブラシを持って外に出ると、学生ほどの

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