#010 生産コストの増加は厳しいがポジティブに対応しよう
コロナ禍を経て円安が一気に進んだことで、生産コストの増加が畜産業界を直撃。生産現場ではコスト削減に取り組んでいるものの、業界的に輸入品に支えられているものが多く、工夫の余地がない部分が多い。コストの増加を価格に転嫁しようにも市場出荷では需給で価格決定されるので、それも難しい現状があります。
今年2回目の島根子牛市場の結果とともに、コスト増加の現状を整理して今後の対応について整理しようと思います。
〇2月の島根中央家畜市場
1.前月が安すぎた
例年雪の多い時期ではあるものの、前月と同様に天候に恵まれた島根中央子牛市場。購買者の来場者数にも影響がでることがありますが、そのような影響もなく、無事に開催されました。
価格は前月から上昇傾向。平均的に取引価格が引き上げられた形で、前月ほど雌の最高値は高くなりませんでしたが全体で見ると平均+3万。最低値は前回と比べると底高い印象で前回結果を踏まえて割安感のある子牛狙いの業者が集まったような形でしょうか。
2月の平均価格は昨年比2万円安の55万。
入場頭数:286頭 / 取引頭数:282頭
全体平均 55万(前月比+3万)
去勢:149頭 / 148頭
平均59万(最高 88万 最低22万)
平均体重309kg
雌:136頭 / 133頭
平均51万(最高 82万 最低22万)
平均体重280kg
2.最高価格の子牛
今回最高購買の血統は以下の通り。
雌
364kg(287日齢)
父牛:福之姫
2代祖:百合茂
3代祖:安福久
4代祖:勝忠平
...88万
前月と同様に発育状態を非常に評価されたことが伺えます。父牛の血統で
ある「福之姫」ですが、もはや文句なしの結果を出し続けている名牛。以下記事の通り、流通量トップクラスの種雄牛の早逝は業界に衝撃が走ることになりました。
昨年も1月から2月にかけて価格が下落しており、年末の出荷増がひと段落し、年始に出荷頭数が落ち着くことがこの傾向の理由。とはいえ出産スケジュールは思うように調整できるものではないので、同じ子牛でも肥育農家の導入意欲によって収入が左右される難しさがあります。その上現状生産コストの増加は全く加味されないので、今後どのような戦略で経営を行っていくかが繁殖農家の関心事となっています。
〇コストアップによる影響
1.円安と実際の負担感
青色申告に切り替えて、経費等の整理が大体固まってきた2019年と比べてみるとドル円で約35円上昇。
実際の支払った金額で見てみると燃料代が1.2倍、飼料価格は1.4倍。為替の影響や人件費の高騰、輸送時の燃料代など致し方ない部分が大きく、畜産業界としては国産飼料への切替が熱心に行われています。
近年の新たな取り組みとしてはおからを引き取り、麦ぬかを仕入れ、草地を新しく引き受け、竹林の整備を通じて竹炭を飼料としてきました。身近な副産物や地域資源を活かすことは小さな経営体にとって非常に重要な着眼点。必要となる飼料や資材が少ない分、自給することのハードルが低くなります。
2.他業界の合理化
しかしながらインフレとは違う理由でコストが増加しているケースがあり、その対応にこれから着手します。具体的には牛舎の床に敷くおがくず。畜産農家にとって「おがくずが手に入らなければ廃業しなくてはならない」と言われるほど重要な資材。長く取引先として供給をして頂いていた業者が生産拠点を集約するため、条件が変更されることになりました。これまでは各農家がトラックで引き取りに行っていましたが、専門の業者が運搬することになり、1回あたりの量はほぼ変わらず、おがくずだけでなくプレンナーくずも混ざるとのこと。それで代金は従来の約5倍。
送料を含むので単純な比較はできませんが、ここまで費用が上がってしまうとこれまでと同様に潤沢に使うことは困難。価格的に他の業者と比べて特別高いというわけではないらしいですが、となれば他に条件の良い業者を探すことも期待できません。幸いにもうちは飼養頭数が少ないので仕入量は抑えながら、飼料と同様に地域資源を活かして対応していこうと考えています。
3.今年からの取り組み
具体的には近隣の農業法人と協議し、もみ殻を引き取り、仕入れるおがくずと混ぜることによって量を確保するように計画しています。協力頂いた農家には堆肥を散布することで還元。
もみ殻は一部燻炭にして、消臭効果の実証実験もしてみたいですね。これまで生産して飼料として使ってきた竹炭も敷料としての活用も模索していきます。
〇おわりに
1.「大変」だから次に何をするのか
この状況ではどこへいっても「大変ですよね」という話題になります。需要の低迷に起因する市場価格の下落しか体験してきたことのない農家にとってこれほどまでのコストアップは前代未聞。
今回の投稿でも紹介した通り、子牛市場現時点も枝肉価格は軟調であり、コストアップを繁殖農家、肥育農家などの生産段階で吸収している状態です。この状況から早く脱することができるように、従来してこなかった取り組みにも積極的に挑戦していきたいです。
2.一歩ずつ積み上げていくこと
ご縁があったお店で使って頂く様子を見ることができるのは本当にうれしい限り。でも見るだけだと伝わらない部分があると思うので、近々お店にお邪魔させて頂こうと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
今後も硬軟使い分けながら田舎の小さな肥育農家のリアルを伝えていきたいと思います。スキ・コメント・フォローなどを頂けますと励みになります。
参考データ
市場名簿のデータです。
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