#011 竹林整備は地域に馴染む近道
就農して3年後。地域おこし協力隊の方から紹介を受けて、谷川裕之さんと出会いました。竹林の有効活用について指導を受け、そこから見様見真似で竹林に分け入って今年で4年目。
元々美しい竹林を見ることが好きではありましたが、それを自ら生み出すことは考えたことがなく、とても新鮮な気持ちで取り組むことができています。
従来は建築や農業などに使われる資材であった竹。近年は新しい素材に切り替わり使われる機会が減った竹林は荒廃が進んでいます。うちのような中山間地域では年に1度のとんど焼きで細々と使われていましたが、コロナ禍を経たことで継続が難しくなり、それすら途絶えてきています。
私は地元にUターンしたので、ある程度地域の人にも認知されてはいましたが、仕事としての接点は限られていました。竹林整備を通じて、地域の方との接点を生み出しつつ、発生していた諸問題を解決し、本業である米作・畜産にも活かすなど竹は最早なくてはならない存在にまでなっています。
この4年間の取り組みを整理するとともに、その魅力を皆さんにも紹介したいと思います。
〇竹林の現状
昔は建築資材として、近年は広島という土地柄もあって牡蠣筏で使用するために、業者が「刈らせてくれ」と問い合わせてきたこともあったようですが、より便利な土地に移っていったことからも需要は全くと言って良いほどなくなってしまいました。
もちろんそのような状態であるので、厄介者扱い。成長速度の速い竹に整備が追い付かず、次第に放置する人が増えて田舎では放置竹林が重大な問題となっているほどです。枯れて倒れる竹で、交通や電線への物理的干渉が問題に。特に2021年1月の大雪の際は除去に大いに手間がかかりました。
森林組合では竹を切る仕事は手に余るようです。竹は木に比べて固くチェーンソーの歯の摩耗が激しいこと、切った後の竹の処理方法に手間がかかることなどが理由として挙げられます。
〇竹林整備をするようになったきっかけ
小さい頃筍を掘ることが好きで祖父に連れられて竹林を訪れることはありましたが、そこは祖父によって管理済で「管理する」ということを意識することはありませんでした。
就農後に荒れっぱなしで放置されている竹林が近所にあり、田んぼの管理を任せてくれている方がその竹林の持ち主の一人でした。私にとっては祖父くらいの年齢の方でしたが、非常に気さくで「いいの?ありがとう。全伐してもいいよー」とすべてを任せてくれました。
このように口を出さず、すべてを任せてくださる方は本当にありがたく、おかげで取り組みに集中することができました。
1.竹林整備
整備の1年目は立ち枯れた竹を除去することから。長年放置されたこともあって立ち枯れした竹が絡み合って単純に引っ張り出すのにも大いに苦労します。無論人の通れる幅が確保されていることはなく、その絡み合った竹の下から新たな竹も生えており、今考えても物凄い時間を割いて作業にあたりました。
枝を払い、大体1m間隔で竹をカットし、積み上げ。
色が落ちて乾燥した竹は稲刈りの済んだ田んぼに運搬し、組み上げて炭焼き。
火のついた竹を砕きながら全体を混ぜ返します。ここで火力がピークに。そこですかさず水を撒いて急速に温度を下げてこれで完成。
水を撒く前に、別に組んでおいた竹に種火を移し、炭焼きを並行で行っていきます。焼きあがった竹炭は冷めたあとに紙袋に詰めて一時保管し、天気の良い日に天日干しを経て完成となります。
完成した竹炭は手で砕けるほどの固さ。硬質な炭に比べて短時間で作成することができるので土壌改良などに便利です。
2.竹の活用
畜産には飼料として竹炭を利用することを想定していました。近年は竹を砕いたチップを敷料や飼料に活用する取り組みがあります。もちろん竹チップはひとつの手ではあるのですが、破砕機が必要ということもあり、採用を見送っています。安芸高田市が破砕機を保有しており、それを借りることも可能ですが、作業時の音がすさまじく、近所迷惑となることを恐れてその点でも敬遠しています。
竹炭の整腸作用に期待して採用しようとしたものの、飼料として給与するには1欠片が大きい状態なので粉砕する方法を模索しました。
まずは薬研。確実ではありますが、生産量を考えると埒があきません。
次に米粉を作る製粉機。「米粉を作成する際に竹炭も混ぜれば一石二鳥なのでは?」と予想しましたが、これは失敗。竹炭を破砕後した粉炭はきめが細かく、破砕するための金属パーツの溝に詰まってしまい、思うように粉砕が進まず。粉炭が溝に詰まった状態で製粉機が稼働し続けた結果、炭が摩擦熱で発熱してしまいました。
竹林整備を指導して頂いた谷川さんに専用の製粉機を見せてもらいましたが、稼働時間がまだ限られる分、すぐに導入するのではなく、もっと柔軟に考えようと思いました。
専用機のない状況ですり潰すそうとすると生産効率が落ちてしまうので、"圧力をかけてつぶす"コンセプトで工程を整理。今あるものを使って効率を最大化することを目指しました。
使ったものは以下の通り。
①フォークリフト
②ビニールシート×2
③くわ・スコップ
④角ふるい
⑤網戸の交換網
竹炭をビニールシートに並べ、その上にビニールシートをかぶせてフォークリフトでその上を走行し砕くという力業。くわでならしながら繰り返し作業を行い、踏みつぶされた竹炭を角ふるいで分別。ここで手に入りやすい網戸の網を使用することで比較的きめ細かい仕上がりとなります。
出来上がった竹炭粉を飼料に混ぜて牛に給与しています。しかしながら生産量がまだまだ十分でないため、継続して生産量の増加を検討しています。
〇竹林の魅力
非常に早い成長速度で、内部が空洞のため比較的軽量で運搬しやすく、加工も容易。筍やメンマとして食用にも適しており、炭化することで土壌改良や消臭効果も期待でき、多くの活用方法があります。それに直立して伸びる竹の整った美しさは"凛”という表現が似合い人々を魅了しています。
しかしながら竹の勢いに圧倒されてその魅力を感じる前に、管理が追い付かないことから厄介者扱いされているのは本当に勿体ないと感じます。私自身ほぼ一人で作業を行うため、思うように作業面積を広げられていないのが課題ですが、整備を進めて少しずつその輪を広げていくことが目標です。
竹林を整備して竹炭を作るくらいなら道具もほとんど必要なく、気軽に始められるので身近な方が竹林をお持ちでしたら是非トライして頂きたいです。チェーンソーを使われる方も多いですが、慣れていないと危険なので伐採は手ノコで、刈り倒した後の玉切りはレシプロソーで行うのが初心者には最もオススメしやすいです。雑然とした竹林を整えるのはハマりますよ。
私には本業として米作・畜産があるのでそれら農業分野に竹を活かしつつ、竹林と共生していく様子に魅力を感じて頂けるように色々な企画を考えていきたいと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
今後も硬軟使い分けながら田舎の小さな肥育農家のリアルを伝えていきたいと思います。スキ・コメント・フォローなどを頂けますと励みになります。