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音を「なんとなく決める」。
この文章は、2024年7月21日にFacebookにて投稿したものを再掲載したものです。
「 ── 作曲が上手なのか下手なのかは二の次、
せめて “楽しむ気持ち” だけは維持したい…!」
ここ数ヶ月、スランプが続いていました。
自分が「好きな音」「聴きたい音」を見失っていました。
喩えるなら、料理好きな人が「自分が食べたい味」が分からなくなって、全く調理できなくなっちゃう感じでしょうか。
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そもそも、僕はなぜ曲を作り始めたんだっけ…?
ピアノを始めたのは5歳の時。
家の中で、先に習い始めた姉の練習を、隣で見ていた。
ある日、習い始める前にピアノを弾いていたらしい(憶えてないけど)。
母親が「なんで弾けるの!?誰からも教わってないよね?」と訊くと、当時の僕は「幼稚園の先生のマネしてるだけ」と答えた、とのこと。
つまり、自分の意志100%でピアノを始めてる。
僕にピアノをオススメしたり、強制しようとした大人はいなかった。
…ここまでだと、作曲ではなくピアノにハマりそうな感じだけど、なんだか「ピアノを上手に弾きたい」という熱意はなくて、純粋に「弾いているのが楽しい」状態だったので、よくある「ショパンの◯◯が弾けるようになりたい」みたいな目標がなかった。
それどころか、目の前の楽譜に束縛されるのがイヤだった。
「あらかじめ決まっている音符に沿って、正しく弾かなきゃいけない」ことに対する抵抗が原動力となり、6歳ごろから即興演奏していたと思う。
…そうだよ、僕の創作の原点は「ピアノの即興演奏」じゃないか。
今さらこんなことを言ってはいけないかもしれないが、他の作曲家と比べて「楽譜を書く」ことに対する情熱はうすいかもしれない。
喩えるなら、目の前で実際にウォッカやらカシスやら炭酸水やらを混ぜて、どうしたら自分好みのお酒になるのかを試すのが好きなのであって、それを「レシピとして言語化する」方向へ興味を持ってなかったのかな。
✳︎
高1のときに、本格的に和声やら対位法やら楽曲分析やらを習い始めました。音大受験に向けて、真面目に「質」を向上させなきゃいけなかったのですが、この辺からちょっとおかしくなりました。
「作曲」と「即興演奏」が分離。
そして、即興演奏は作曲に比べて格段に劣っていると考えるようになりました。なぜなら、クオリティ=思考量だと思い込み、感覚メインの即興演奏は「雑なモノ」だと思ってしまったから。
そもそも、僕の中に「楽しむこと」と「真面目にやること」は両立できない、という思想がありました。
中学までは、学校の勉強をけっこう真面目にやってました。しかし、楽しくはなかった。
それでいいと思ってたんです。「イヤなこと、つらいこと、精神的ダメージを伴うことを、グッと我慢して、耐え忍んで続けている人が、世間では “エラい” ということになってる」って、本気で思っていたので。
だから、やりたくもない勉強をやるのは良いことだし、将来はやりたくもない仕事を歯を食いしばってやるモンだと思ってました。そういう人が「真面目な人」として評価される世の中なんだから…。
その考え方は作曲にも影響を与え、大学での「真面目な作曲」と、プライベートでの「趣味の作曲」とで分離したんです。
学問として取り組む作曲は、無理して調性っぽい響きを避けたり、無理して特殊奏法を多めに使ったりしてました。
直感メインで、非論理的で、…そういう大雑把な音選びは「心理的苦労がないからダメ」だと思っていました。
客観的に、純粋な芸術として評価されることを重視しすぎて、僕という1人の人間にとって「何が好きなのか」「何が聴きたいのか」という部分に向き合うことが、どうでもよくなっていたんですね。
…そこが最も重要なのに。
喩えるなら、コーヒーが大好きなバリスタが、世間のタピオカブームに合わせて、好きでもないタピオカメニューをイヤイヤ開発する感じでしょうか。本人は、それを飲んでも全くワクワクしないにも関わらず。
でもまぁ、さすがに限界が来るんですよ。
「真面目な作曲」と「趣味の作曲」に分かれていた、と書きましたが、前者の引き出しがなくなってしまいまして。
…当然ですよね。言い換えれば、どうやって「自分に無理をさせるか」という選択肢なんですから。
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なんというか…、
子どもの頃に比べて、すっかり「右脳で生きる」ことが下手になりました。間違いたくない、という気持ちが強すぎて、日常生活における1つひとつの選択に理由を求めるようになってしまって。
でも、「なんとなく決める」って、
めちゃくちゃ人間らしいですよね。
AIと比べて、これは大きな差です。
取り戻したくなりました。
幼い頃の「なんとなく決める」感覚。
即興演奏を心から楽しんでいた「本来の自分」を、もっともっと掘り起こしたい。
だから、真面目に即興演奏に取り組みました。
今回は、真面目だけど楽しいんです。
「楽しむこと」と「真面目にやること」が両立できるって、26歳でやっと分かりました。
電子ピアノとパソコンをUSBでつないで、MIDIに変換したものを音源にしています。あまり高音質ではないので、「機械で作られたピアノの音が苦手」な方にとっては聴きにくいかもしれませんが。
これはずっと続けていこうと思います。
「なんとなく決める」を、上手になりたいから。
12曲ごとに↓こうやってYouTubeにアップして、記録を残そうと思います。僕が「右脳で」音を選ぶと、こんな感じになります。 (完)