Chihiro Bekkuya

いつも迷子です。

Chihiro Bekkuya

いつも迷子です。

マガジン

  • かぞくのこれから

    家族のOB・OG訪問のようなものを、ゆるくやってみることにしました。不定期更新のインタビューマガジンです。いろんな人と、「かぞくのこれから」、一緒に考えていきたいです。

  • 「はじめからなかったこと」と同義にしたくない日々のこと

    なまものの自分と向き合う時間をつくるための日記

  • ドーナツとコーヒー、ときどき本

    特別に読書家なわけでも、文学に明るいわけでもない、ごく普通なアラサーの読書備忘録

  • ソファでわたしは旅をする

    • 15本

    いつかまた自由に出かけられるその日まで、「空想の旅」をテーマに文章を書いてみることにしました。 趣味や嗜好、旅のスタイルも異なる3人の書き手・べっくやちひろ、中前結花、吉玉サキがそれぞれお届けします。 束の間でも、みなさまを“ソファの上の旅”にお連れできたらうれしいです。

  • A day.

    どこかの誰かのある一日。インタビューを元に、私ではないひとの日記を書いています。

最近の記事

「ママになるつもりはなかったんだ日記」が完売しました

2023年11月、『ママになるつもりはなかったんだ日記』というZINEをつくりました。 思いがけず多くの方に手にとっていただき、何度か増刷をして全部で400冊近くを刷りました。そしてほぼすべてが手元から旅立ってゆきました。今後の増刷の予定は今のところありません。 『ママ日記』を通じて「“母”という肩書きに課される何がいやなのか」を整理できたのは大きな収穫でした。読んだ方の「私も同じように感じていた」「子どもを産むことに少し希望を持てた」という感想もとてもとてもありがたく、

    • 文学フリマ東京後記

      11月11日、エッセイZINE「ママになるつもりはなかったんだ日記」を持って文学フリマ東京に出店してきました。 ありがたいことに持って行った60冊は完売、たくさんの方とお話できて本当に楽しい時間でした。 * 10年ほど前から友人とリトルプレスをつくったり、5年前には同じく友人とZINEをつくって文学フリマに出店したりと、これまで自主制作で本をつくる機会はたくさんありましたが、自分の名義で1冊つくるのはこれが初めてです。 最初は全部ひとりでやり切ろうと思っていたものの早

      • エッセイZINE「ママになるつもりはなかったんだ日記」ができました

        自分で書いたものを、初めて1冊の本にまとめてみました。タイトルは「ママになるつもりはなかったんだ日記」です。 * 私はいま6歳と3歳のふたりの子どもと暮らしています。この状態を言葉にするとしたら「ワーママ」とか「子育て中」とか「母業をやっている」とか、当てはまるものはたくさんあるのだと思います。 でも、なんだかどの言い方もしっくりこない。例えるなら歳の離れた同居人が増えただけであって、私自身の属性が変わったわけじゃないのに、「ママ」と呼ばれることで自分が別のなにかに変え

        • 旅の朝

          人生でいちばん最初の旅行はいつだろう、と記憶をさかのぼると、あるひとつのシーンが浮かんでくる。 まだ真っ暗な、夜中と朝方の間くらいの時間。パジャマのまま母親に抱きあげられて、ゆらゆらとどこかへ向かう。半分夢みたいな頭で車のドアが開く音を聞いて、そのまま布団を敷き詰めた後部座席に乗せられる。エンジンの振動を感じながら、そのまままた眠りに落ちる。 たぶん4、5歳くらい。長野に向かう朝の一幕だ。 子どもの頃、わが家には毎年8月に長野県上田市の知人を訪ねるという恒例イベントがあ

        マガジン

        • かぞくのこれから
          1本
        • 「はじめからなかったこと」と同義にしたくない日々のこと
          138本
        • ドーナツとコーヒー、ときどき本
          9本
        • ソファでわたしは旅をする
          15本
        • A day.
          5本

        記事

          私のクストフ

          シンガーソングライター 寺尾紗穂さんの歌う『クストフ』という曲がある。 僕らは旅に出たんだ まるで思いつきの旅に 見るのは果てない夢さ そうだろう どうしてかな今ごろ 君のやさしさが温もりになって 空を見上げてわかった もう時が過ぎたこと 穏やかな日に (寺尾紗穂「クストフ」) 「僕」は「君」と無計画な旅に出たことがあって、それはどうやらずっと昔の話で、今は過ぎた日々をただ思い出すだけ。そんな歌だ。 私はこの曲を、寺尾さんの配信ライブで初めて聴いた。静かなピアノのイント

          私のクストフ

          失くしものの行く末

          すこし前、銭湯に櫛を忘れた。祖母からもらって20年近く使っていたものだ。父ゆずりの頑固なくせっ毛も、そのツゲの櫛でとかすと綺麗になる気がしていた。銭湯に電話をかけて探しに行ったけれど、もうどこにも見当たらなかった。 思えば忘れもの、失くしものの多い人生だ。買ったばかりの服を電車に忘れる、お気に入りの傘をカフェに置いてくる、旅行をすればピアス、文庫本、充電器、パスポート、あらゆるものをホテルのテーブルやらベッドやらに置き忘れる……。それらは落とし物として管理室に届いていたり、

          失くしものの行く末

          11/06/2021

          どこかの誰かのある一日。インタビューを元に、私ではないひとの日記を書いています。 この頃ずっと、商工会議所に提出する補助金申請書を作っている。 何にお金を使ったか書き出したり、レシートを集めたり、どれが補助金の対象に当てはまるのかを確認したり。そんな細々とした作業にもう何日も費やしている。こういう作業が本当に苦手だ。 でも、このあいだ商工会議所のおじさんに相談しに行ったら、「書類いいですよ、この調子でもう少し頑張りましょう」とすごく褒めてくれたので、たぶん大丈夫。だと思

          ただの夜を旅する

          夜に出歩くことがめっきり減った。この時期、友達を飲みに誘うのはちょっと気が引けるし、なにしろお店が開いてない。子どもに合わせて21時頃に寝る支度を始め、そのまま一緒に寝てしまうのが常だ。 昨夜はめずらしく寝落ちしなかったので、22時半頃、散歩がてらコンビニにアイスを買いに行くことにした。ポケットに財布とカギだけを入れて外に出る。さわりと風が吹く。夏をすぐそこに控えた夜風。季節というのは毎秒変わりゆくものだけれど、昼よりも夜のあいだに加速して進む気がする。なんだかそんな気がし

          ただの夜を旅する

          波とクラゲ

          うっすらと目が覚めて、まず聴こえてきたのは波の音だった。ざあーん、ざざああ、ざああ。カモメの声が近づき、また遠ざかっていく。まつげにやわらかい陽の光が降ってくる。洗い立てのシーツの匂いがする。 遠い頭のまま、体をゆっくり起こす。目の前の壁は一面ガラス張りで、その先にどこまでも海が広がっている。薄い雲が一枚かかった空は白く光り、空と海の境界はぼんやりと霞んでいる。 ざざああん、ざあーん。寄せては返す波をしばらく見つめていると、だんだんと目の奥に重力が戻ってきた。そして思う。

          波とクラゲ

          2021年のこと(地に足をつける言葉と、浮遊するための言葉)

          緊急事態宣言→自宅保育からの産休突入で、仕事らしい仕事はほとんどしなかった2020年。本格的に復帰する今年はこんなことをやりたいなー、についてつらつら書いてみます。 (2020年、憧れのSUUMOタウンで書かせていただけてうれしかったです) “書くこと”に軸足をおく「もの書きの仕事をもっとしっかりやりたい」という気持ちは、ずっと前からうっすらと、いつでも心のどこかを漂っていたように思います。 編集の仕事も、もちろんこれからも続けていきたい。ありがたいことに尊敬できる人た

          2021年のこと(地に足をつける言葉と、浮遊するための言葉)

          28/07/2020

          どこかの誰かのある一日。インタビューを元に、私ではないひとの日記を書いています。 少し前からジムに通っている。行くのはだいたい夜。今日も仕事のあとでジムに行った。 フロアに入ると、ちょうどチェストプレスのマシンを使い始めた人がいた。うーん、と僕は思う。「トレーニングはチェストプレスから」と決めているからだ。トレーニングの順番はいつも同じにしている。まずチェストプレス。そのあとは腕まわりの筋トレをして、背中→足→腹筋。最後に40分間走る。 筋トレは、1セットやってちょっと

          15/07/2020

          どこかの誰かのある一日。インタビューを元に、私ではないひとの日記を書いています。 ドラマチックな出来事から一日が始まった。 いつもは7時半まで寝ている5歳の息子が、6時半にしゅっと起きた。そして、まだうつらうつらしている私に「パンツどこ? パンツ濡れちゃってさあ」と声をかけてくる。ん? 濡れた? 「おしっこじゃないよ。たぶん、ちんちんにいっぱい汗かいたんだと思うんだよね」と息子。いや違うよね、おねしょだよね? 布団を見ると、明らかに湿っているところがある。人生で初めて、息

          14/07/2020

          どこかの誰かのある一日。インタビューを元に、私ではないひとの日記を書いています。文中の名前は仮名です。 農家の朝は早い。ときどき6、7時まで寝てしまうこともあるけれど、最近は毎日4時半に起きている。今朝もiPhoneの目覚ましのおかげで、無事に4時半に起きられた。えっちゃん(妻)とこうちゃん(息子)を起こさないように、そろそろと蚊帳から出る瞬間はいつも少しだけ緊張する。今朝は静かに動いたつもりが、こうちゃんを起こしてしまった。ごめんよ。ちなみに、目覚ましは黒電話の音と決めて

          09/07/2020

          どこかの誰かのある一日。インタビューを元に、私ではないひとの日記を書いています。 梅雨の時期に体調が悪くなるようになったのは、10年ほど前からだ。 今年も同じように調子が悪い。毎日なんとなくだるくて、頭と体が重い。今日は朝起きたときから寝汗と頭痛がひどく、仕事を休もうと決めて早々にslackで「休みます」と連絡を入れた。 思えば、子どもの頃から自律神経が過敏だった。ことあるごとに気分が悪くなったり吐いたりして、よく母親に病院へ連れて行かれた。他の子と比べて病院へかかる回

          戦わずして、世界に“属する”ことはできないのかもしれない

          僕らは何かに属していないと、うまく生きていくことができません。僕らはもちろん家族に属し、社会に属し、今という時代に属しているわけなんですが、それだけでは足りません。その「属し方」が大事なのです。その属し方を納得するために、物語が必要になってきます。物語は僕らがどのようにしてそのようなものに属しているか、なぜ属さなくてはいけないかということを、意識下でありありと疑似体験させます。そして他者との共感という作用を通して、結合部分の軋轢を緩和させます。 村上春樹さんが読者からの質問

          戦わずして、世界に“属する”ことはできないのかもしれない

          ていねいに暮らしたい

          毎朝コーヒー豆を挽くとか、季節の変わり目に手紙をしたためるとか、家の中に花を絶やさないとか。「ていねいに暮らす」と聞くと、なんとなくそんなイメージが沸いてくる。もちろんそれらはとても素敵できれいな暮らしだ。と思う一方で、わたしの中の「ていねい」の定義とは、どうしても相容れない。 たとえば、どこか遠くへ旅行したとき。その土地にしかないおいしいものを食べるのが、旅行の“正解”かもしれないけれど、「今日はビッグマックの気分だなー」の感情に従ってマクドナルドに行くほうが、わたしは「

          ていねいに暮らしたい