トレスレチェ

私の目覚めは、7：34と決まっている。毎朝自然に意識が回復して枕の下にうずめているスマホを取り出して見たくなると決まって、7：34を示すのだ。そのおよそ１時間前に起きる予定の彼と一緒に寝るようになっても、この数字は変わらない。二度寝するから。大音量で女性歌手の歌が流れて、私が止めたくなる寸前でそれは無事止まるが、彼もまた止まる。6：30を示すスマホを握ったまま、枕とは反対側に倒れるようにしてまた眠ってしまう。

シャワーで歯を磨き、夜より朝にしっかり泡立てて全身を洗う彼は、熱いと少し水を入れて飲むからコーヒーはカップ七分目。一度、先にあがってお湯を沸かしておこうとしたら、寂しそうにして不満げだったからやめた。「なんで？」ってハッキリ言われた。一緒にシャワーを浴びてるのに取り残されるのは気分が悪いんだと分かった。私はただ、コーヒーを先に入れておけば、飲むころにちょうど冷めていいのではないかと思ったのだ。シャワーを浴びる前に入れては冷めすぎてしまうから。そんな、私の挙動一つ一つはすべてが杞憂で恥ずかしくなるから、彼はいつも説明してくれる。「全然」って。

いつだったか出張の時、メッセージのタイムスタンプを見返したら7：24とかだ。氷結の隣のニベアはへこみ、貝殻型のマドレーヌがパッケージに入ったまま写っていた。私はこれが好きと言って冷やして食べるエッグタルトの写真を送ったら、今度買ってみるよと返ってきたから、私はその日の昼にマドレーヌを買ったんだけど、別に買ったよとは送らなかったし、彼はエッグタルトを買ってないと思う。だけどなんとなく、彼はエッグタルトが好きなんだということが分かった。

飲みすぎで迎えた朝にはユンケル。ていうか、風邪にも効くからユンケルというわけだと思うけど。ウコンじゃダメってことが分かった朝だった。しじみの味噌汁なんて飲むだろうか（やめといたほうがいい）焼きおにぎりに浅漬けを添えたら（ソフトフランスよりはマシかも）ベーコンエッグにパリパリのバゲットだとしても食べないかもしれない。あるなら食べる（出されたら食べるだったかな）と言えどもその実コーヒーすら要らないと断ることを彼は厭わない。

タイレノールは効いたらしいから嬉しかった。ワンシート、胸ポケットに滑らせてスーツ。仕事の時にはパンツを穿くと言うからそれならブラジャーとおんなじだ。ワンサイズ下にすると谷間ができるから喜ばれるなんてよくも恥ずかしげもなくDカップ。もっとちゃんと服を着たり化粧をしたりすべきだろうか。ギフトのシングルピアスだってすぐ脱ぐから着けづらいなんて誰が想像するだろうか。