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樋口直哉さんの【玉ねぎのピュレ】③「美味しいものを料理できないツラさ」の「発見」と可能性《頭の悪いレシピをばひとつ 13 》

 樋口直哉さんが提示してくれた玉ねぎのピュレ↓……

 「乳・大豆アレルギーでも食べられるものが見つかった!」というのがうれしかったことと、予想以上の美味しさのあまり、2回にわたってレポート↓してみました。
 そうやって、作りながら、書きながら、気がついたことを最後に書きとめておきたいとおもいます。

 

・◇・◇・◇・

 

 五百蔵は親子でアレルギーがあることが発覚して以来ずーっと、乳製品を使ったメニューの代替食を作ることも食べることも、あきらめて、目をそらしてきました。
 だって、豆乳が使えなければ、ほぼ無理ですやん。
 アレルギーでも食べられる、って書いてあるレシピ集でも、そこのへんは豆乳を使ってごまかしてて、五百蔵からしたら「サギやん!」としかいいようが無くて。

 だからずっと。
 クリーミーなものは視野に入れないようにしてきました。

 ……つらくなるから。

 

 だけど、この樋口さんのピュレでいろいろやってみて、気がついたことがあります。

 それは、アレルギーのせいで食べられないのがツライ、とずっと思ってきたけど、それがいちばんではなかった。
 もちろん、食べられないのはツライです。でも、実は、それ以上にツラくてツラくてたまらないことがあった。そこに開眼しました。

 いったい、何がいちばんツラかったか。
 それは、

 料理ができないこと。
 どんなに美味しそうでも、
 「作れない」と最初からあきらめないといけないものがあまりにも多く、絶望的になる

 ことです。
 普通食と除去食の両方を毎日作ることは、口でいうほど簡単ではありません。だからどうしても、毎日のご飯が、家族全員除去食、になってしまいます。
 代替のものが作れたらいいのですが、食べられない品目が多いので、代替食を作るのも困難な状況です。だから、家族全員が除去に巻き込まれて、寂しいご飯を食べないといけなくなってしまうのです。

 それだけでなく。
 書店の雑誌やレシピ本、料理番組、インターネットのレシピサイト。
 あ、これ美味しそう!と思っても、まず、作ることができない。
 それがどれだけ自分にとってツラかったのか……
 気がつくことができました。

 

 これについては、市販のアレルギー対応食品や食材を使うことはできないのか?という意見もあろうかと思います。
 だけど、ちっちゃなクッキーがいくつか入っただけで3〜400円だとか、レトルトの煮物やハンバーグが4〜500円だとか、とても毎日気軽に買える価格ではありません。
 ついでながら、大豆不使用の米味噌は500グラムでほぼ900円です。あまりにも高すぎて、日本人の心である味噌汁すら、おいそれと作れません

 ましてや、五百蔵は体調不良で働くことができず、夫の賃金もほぼ最賃のようなものです……ふたりとも、超氷河期の影響をモロに受けています。
 そのうえ、貯金を切り崩す覚悟で子どもを私学に通わせています。これは、子ども自身がレベルの高い学校で勉強することを必要としているからです。

 ときどき、
 「アレルギーがあったら、金持ちでないと、まともなご飯も食べられんのやなぁ……」とか、
 最悪落ち込んだときは、
 「貧乏人のアレルギー持ちは死ねっちゅーことかいな!」
 と本気で思います。

 そんな実態も、みなさんの心に留めておいていただけたら、と思います。

 

 ふだん使いの安い食材でどれだけ豊かなバリエーションを作り出せるか?
 それは、アレルギーが重たいほど、家庭のご飯の作り手の役割として求められざるを得ないのです。
 よほどの料理好きでない限り、いち家庭、いち個人で背負いきれるものでないことは、一目瞭然です。

 

・◇・◇・◇・

 

 さて。
 いままで食物アレルギー対策は、「アレルギーのある子どもになにを食べさせたらいいのか?」がメインだったと思います。
 つまり、「食べられないツラさ」に寄り添うことがアレルギー対策だと思われてきた。だけどそのせいで、「成長すれば改善するものだから、今がしのげたらいい」という観点でなされてきたのではないでしょうか?

 アレルギーのツラさには、さらに、「食べれるものを探すことが困難」というのがあります。
 ですが、最近では食品の表示が見やすくなり、「安心して食べられる食べ物を探すツラさ」は軽減されてきました……まあ、食べれる物がそもそもないじゃん!っていう問題は依然として大きいのですが。それでも、社会が助けてくれようとしている、と感じられて救われています。

 

 だけど、「アレルギーのせいで美味しいものを料理できないツラさ」なんて、だれも気が付かなかったし、注目することもなかったと思います。
 だって、あったとしても子どもが大きくなるまでの期間限定の問題で、極端な話、料理担当の母親がガマンさえしたらいい問題だと思われていたのではないかと思います。
 さらに、大人のアレルギーが少数派であることと、世間の目が「子どもへの対策」にばかり目がいっているので、「大人になっても、やっぱり作れんじゃん!ツラいわ〜!」ということに気がつくチャンスを見逃していたのではないか、という気がします。

 大人のアレルギー当事者の五百蔵すら、そこに気がつくのに、今日まで時間がかかってしまいました。子どもが生まれてから、ずっと「しんどい〜」と苦しみながら除去して料理してきましたから、都合、12年です。
 そして、もし、今ここで樋口さんのレシピに出会わなければ、気がつくことさえできなかったかもしれない……だって「アレルギーのせいで美味しいものを料理できないツラさ」に目をつけた提起なんて、今までいちども見たことないですから。

 社会的な提起の有無って、個人が「ツラさ」を「ツラさ」として認識できるかできないかに大きな影響があると思います。「それはツラいことである」という社会的な提起なくして、「がまんなくていい、素直にツラいと言っていい」ということに個人の力で気がつき、叫びをあげることは、非常に困難でかつ、勇気のいることだと思います。

 

 だからここで、五百蔵は、

「アレルギーのせいで美味しいものを料理できないツラさ」が存在すること

 を、声を大にして叫び、広めたいと思います。

 

・◇・◇・◇・

 

 さらに、この「アレルギーのせいで美味しいものを料理できないツラさ」の発見には、新しい可能性を感じています。

 いままでのアレルギー対策は、「食べられないツラさ」に寄り添うことがメインだったと思います。
 だけど、この発想、食べられない当事者の五百蔵としては、

 「食べられないひと」が「食べられるひと」に、
 「合わせてください」とお願いをする

 みたいな、なんだか非対称な関係を感じてしまって、いやでした。
 例えば、「障害のある人には親切にしよう」というスローガンや「24時間テレビ」に感じる、正しいんだけどどことなくウソくさいしよそよそしい感じ、といえばいいでしょうか。ぶっちゃけ、「恵まれてる人が恵まれてない人を助けてあげる」みたいなところが無いわけではない、と感じます。

 だからどうしても、食べれなくて困っているから助けてください、と口にすることに、ためらいを感じてしまいます。

 

 だけど、「美味しいものを料理できないツラさ」の前では、そうではない。
 食べられるか食べられないかに関係なく、対等でいられるような感じがします。
 なぜなら、

 「おいしい料理を作りたい」
 「作った料理で誰かを笑顔にしたい」という
 共有可能な目的が存在している

 からではないかと思っています。
 その目的を共有することで、アレルギーを持ってない人たちも「同じツラさを抱える当事者」となり、「ツラさを解消する当事者」となり、お互いに対等でいられるのではないか。こういう目的のもとなら、アレルギーをもっている人が、必要以上の遠慮や心苦しさを感じずにすむのではないか、という感じがしています。

 この感じはあくまで五百蔵の直感です。別の人にはそうは感じられないかもしれない。
 だけど、「美味しいものを料理できないツラさ」を乗り越えていくことのイメージとしては、「アレルゲンを除去してても美味しいレシピを生み出す」という険しい山を、各自が発見したルートから、単独で、あるいはパーティーを組みながら登ってゆく……そんな絵が浮かんできます。
 さらに、前回の記事で五百蔵は、「#樋口さんの玉ねぎのピュレ」というハッシュタグを作ることを提起しました。こんなふうに、インターネットは、登山家同士を結び、情報交換する無線の役割を果たすことができるのではないか、とおもいます。

 

 日本人は、困っている人を助けることも、助けられること、もまだまだ苦手としていると思います。
 「美味しいものを料理できないツラさ」に寄り添うことが、アレルギーの有無にかかわらず、対等な立場で助け合いすることの練習になればいいな、と思います。

 

・◇・◇・◇・

 

 最後に。
 樋口さんのレシピが出てきたとき、「救われた!」って思いました。
 しかも、こんなに美味しい。
 食べ物のことについては笑顔になれたためしのない五百蔵が、その瞬間は、心から笑顔になれました。感謝です。

 だから、
 アレルギーで困っている仲間に、このレシピが広まってほしい、笑顔になってほしい、
 アレルギーゆえのツラさに寄り添ってくれる誰かが増えてほしい、
 そう思いながらこの記事も書いてます。

 

 それと、もう1回ピュレを作ってみて、

 とある全く意外な日本の食材と合わせたら超絶美味かった

 ので、時間ができたらレポートしたいと思ってます。
 え、それ来た!?って、たぶんみんなひっくり返ります。

 

 この、樋口さんの玉ねぎのピュレのレシピで、
 ひと家庭でも、この冬、笑顔になれるおうちが増えますように!

《頭の悪いレシピを140字で》のマガジンもあります。
https://note.mu/beabamboo/m/m720f88c2485a


 
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五百蔵ぷぷぷッこ / 140字のもの書き / Espansiva の中の人
いま、病気で家にいるので、長い記事がかけてます。 だけど、収入がありません。お金をもらえると、すこし元気になります。 健康になって仕事を始めたら、収入には困りませんが、ものを書く余裕がなくなるかと思うと、ふくざつな心境です。