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ソフィア・コッポラ作品『オン・ザ・ロック』。夫と父親、どっちが暗礁に乗り上げているのだろう。
2020年のソフィア・コッポラ監督の映画『オン・ザ・ロック(On the Rocks)』が、先週目黒シネマで上映されていたから、ラスト一本上映に駆け込んで観てきた。
『セレステ∞ジェシー』を観て以来、ラシダ・ジョーンズが好きで、そんな彼女の主演で、それもソフィア・コッポラ作品ということで観たいと思っていた作品だった。
タイトルの”on the rocks”は直訳すると、”暗礁に乗り上げた”とか”破綻した”とかいう意味になる。暗礁に乗り上げているのは何なのか?そんなことに注目して観ていきたい作品。
夫婦関係
ほんの些細なきっかけで夫が会社の同僚と浮気しているのでは?と疑ってしまう。一度気になると忘れられなくなり、ついそれを”プレイボーイ”の自分の父親に相談する。(そういうことに詳しいはずだと思って。)
父親は娘のそんな相談に対して、『きっちり調べ上げて証拠を掴むべきだ』とアドバイスし、それをきっかけに父娘で探偵ごっこのようにニューヨークの街を(しまいにはメキシコにまで行く)駆け回るようになる。
夫婦関係は暗礁に乗り上げているのか?そんなテーマが作品を貫いているが、最後まで見るとこれが”見せかけ”のテーマだったと分かる。
父娘関係
幼い頃、自分と母親を裏切ったプレイボーイの父親に対して、本当は消化しきれない気持ちを持っているのに、探偵ごっこ中は父親に(渋々、とは言え自ら決めて)付き合っており、なんだかちょっとバディ感がある。
最後の最後、派手に親子げんかするわけだけど、そこで気づくことがある。こんなに大人なのに、父離れ、子離れできていない。それはもしかすると、過ごすべき時間を一緒に過ごしてこなかったからかもしれない。お互いが小さい子供とその父親に戻ってしまう。
この父娘関係暗礁に乗り上げている?
夫を透かして父親と向き合う そしてすっきり
ユニークだなと思うのは、夫と向き合っていたはずなのに、いつの間にか父親と向き合っているという構図だ。しかも観客はそのことに最後の最後で気づく。(少なくとも私はそう。)
不利な状況証拠ばかりが見つかって、どんどん夫の立ち位置が悪くなっていくわけだけど、最後にわわっと状況が変わって、主人公を取り巻く世界がぐるっと回転する。ここが観ていてすごく”すっきり”する。
このすっきりは、別に父親を追いやったすっきりではなく(実際追いやってはいない)、何か、自分の正解を見つけられたすっきりという感じ。日本語では”腑に落ちた”が近い感覚な気がする。
夫と父親は”ジェンダー観”や”カルチャー観”でも対照的に描かれている。父離れすることは、何かそういう古い感性からも解放されることを意味しているのではないかなと思う。
女性監督作品に関する記事を最近読んだので、観たいものがいくつか溜まっている。次は『レディ・バード』を観たい。あと韓国映画の『はちどり』。