ビニール傘。Vinyl umbrella.
『ビニール傘』(岸政彦著・新潮社刊)を読みました。第156回芥川龍之介賞候補作品で、第30回三島由紀夫賞候補作品でもあります。岸さんは、社会学者ですが、作家としても非常に映像的な感覚の持ち主だと感じました。刊行年は2017年ですが、2020年の今読んでも全く古くありません。大阪在住の私には、特に若い頃に市内で暮らして、市内で働いていた私にとって、市内の懐かしい景色が目に浮かんで、そういう意味でも楽しめました。
『ビニール傘』には同名小説のほかに「背中の月」も収録されています。これも切ない物語です。どちらの作品も、都市で暮らす男女のやるせなさ、人生に対する早すぎる諦観、出口の見えない叫びに溢れています。それでいて、絶望には落ちていかないところに、作者の人生に対する最終的な肯定感を感じました。
追伸
大阪を感じたいという他の都道府県の方なら『ビニール傘』はきっと楽しめることでしょう。
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