歪んでいるのは、世界か?あなたか?Is the world or you distorted?

 先日『木になった亜沙』(今村夏子著・文藝春秋刊)を読了しました。この単行本には「木になった亜沙」「的になった七未」「ある夜の思い出」の3つの短編が収められています。今村さんの小説は時系列にすべて読んでいますが、『こちらあみ子』から『むらさきのスカートの女』まで続く、独特の今村ワールドが今回もありました。帯に「読んだあと、世界の色が違ってみえる。芥川賞作家の最新短編集。」と書かれているように、読後には奇妙な歪みを感じました。ネタバレになるのであえて書きませんが、亜沙が木になる? 七未が的になる? 思い出になった夜とは? それは童話のような、まさか人生のような、そのうえ異形のような。今村さんの物語は常に「歪んでいるのは、(小説)世界か? それとも、あなた(読者)か?」と問いかけてきます。想像の無限性から生まれる創作の可能性を感じさせてくれる一冊です。

追伸

 ちなみに、ほぼ同時期に『タマ、帰っておいで』(横尾忠則著・講談社刊)も読了しています。タイトルからだけでも想像できるように、すごく哀しくて…。猫好きなら、いろんな意味で堪らない一冊です。読後には、愛猫をぎゅっと抱きしめたくなりました。

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