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漢方から考える 【風邪のタイプ別対処法】

今回は少し各論的な、漢方医学からみた「風邪(感冒)」について。
ちょうど季節の変わり目で風邪をひいてしまった、なんていう方も多いのではないでしょうか?

風邪はその字の通り、「風」の邪気が身体に侵入して悪寒や鼻水・頭痛・発熱・関節の痛みなどがあらわれる症状のこと。
漢方ではかぜを風寒・風熱・暑湿・気虚の4つのタイプに分けて考え、そのタイプによって適した漢方薬や養生法が変わります。
今回は、そのなかでもメインとなる風寒タイプと風熱タイプの2つについて詳しく見ていきましょう。

《風寒タイプ(ぞくぞく風邪)》


ぞくぞく風邪と呼ばれる風寒タイプは、秋・冬など寒い季節に起こりやすく、風の邪気が寒さと一緒に身体の中に侵入することによって起こるもの。
主な症状は、悪寒・熱があっても寒気が強い・頭痛・節々の痛み・背中や肩のこわばりなどです。
風寒タイプの場合は、身体を温めて汗をかくことによって邪気を身体の外へ追い出す方法をとります。

養生としては身体を温めるために生姜を積極的に摂ると有効で、
生姜をすりおろし、ハチミツや黒糖などで甘みをつけてお湯を注ぐ「生姜湯」などがおすすめです。

風寒タイプに適していると言われている漢方薬はこの3つ。
(実際に漢方薬を使用する際は、必ず専門家や専門医にご相談ください。)

桂枝湯(けいしとう)
かぜの初期症状で汗がでている場合や、虚弱体質に。
*判別のポイント:汗をかいているとき

◎葛根湯(かっこんとう)
かぜの初期症状で汗をかいていなく、悪寒・頭痛・肩こり・筋肉痛などがある場合。
*判別のポイント:肩のこりやこわばりがあるとき

◎麻黄湯(まおうとう)
かぜの初期症状で汗をかいていなく、悪寒・発熱・節々の強い痛みなどがある場合。
*判別のポイント:節々の強い痛みがあるとき

※葛根湯と麻黄湯に入っている”麻黄”という生薬は交感神経興奮薬のため、重度の高血圧の方や前立腺肥大などの方は使用に際して注意が必要です。


《風熱タイプ(のど風邪)》


いわゆるのど風邪の風熱タイプは、春・夏など温暖な季節に起こりやすく、風の邪気が熱と一緒に身体の中に侵入したり、風寒タイプが熱化することによって起こるもの。
主な症状は、発熱・喉が腫れて痛い・咳がでる・黄色く粘る痰がでる・熱っぽく顔が赤い、などです。
風熱タイプの場合は、清熱といって喉や身体の熱をとることによって邪気を追い出す方法をとります。

養生としては身体の熱をとるために大根を摂るとよく、
1cm角に切った大根にハチミツか水飴を大根が浸るまで入れて、2〜3時間たったら上澄みに出てきた大根汁をそのままか、またはお湯で割って飲む「大根飴」などがおすすめです。

そして先日私が体験したちょっとしたエピソード。とても喉が痛くなってこれは長引くな、、と覚悟していたとき、ふと母にもらった葛湯があったことを思い出して何気なく飲んでみたところ、みるみるうちに痛みが和らぎ、飲み終わるころには痛みが半分くらいにおさまっていました。(*効果の感じ方には個人差があると思います。)

「葛根」は葛根湯などにも入っている生薬で身体を温めるイメージがありますが、実は生薬の効能だけでみると涼性で身体の熱をとってくれる作用があるんですね。
私はもともと熱がこもりやすい体質で風邪をひくときはいつも喉からなので、改めてその効果の高さに驚き、葛湯はいつも切らさないようにしよう!と思ったのでした。


そして、風熱タイプに適していると言われている漢方薬はこの2つ。

◎荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
喉の腫れと痛みがあり、鼻づまり、黄色い鼻水がでる場合。
*判別のポイント:喉と鼻に炎症があるとき

◎銀翹解毒散(ぎんぎょうげどくさん)/銀翹散(ぎんぎょうさん)
喉の痛みがあり、咳・頭痛・口の渇きがある場合。
*判別のポイント:鼻水や鼻づまりなど、鼻に関する症状が無いとき


ここまで2つのタイプの風邪についてお伝えしましたが、症状によっては寒気と喉の痛みの両方がある、という場合もありますよね。
そんなときは、「風寒タイプ」を優先に対処するのがおすすめです。

そして風邪の症状はみるみるうちに変わっていくので、はじめは寒気が強かったけど時間が経つにつれて喉の痛みが強くなってきた、なんてこともあるかもしれません。そんなときはまず葛根湯を飲んで、喉の痛みが出てきたら銀翹解毒散を飲むなど途中で漢方薬を変えても大丈夫です。

また、漢方薬は本格的に喉が痛くなってからや高熱が出てからだとあまり効果が期待できないので、少しでもぞくぞく寒いなと感じたり、喉に違和感を感じた時点で予防的に取り入れるのが効果的ですよ。

いつもどこから風邪をひくのか?によって、自分にあった漢方薬をバッグに入れておいたり、お家の薬箱に入れておくと安心ですね。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました◎

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