鳥のように飛び立ちたいと願う自由もあれば、巢ごもって誰からも邪魔されまいと願う自由もある 年越し安部公房の消化
2024年は安部公房の生誕100周年の年で、遺作となった『飛ぶ男』のオリジナル原稿が文庫化されたり
『箱男』が映画化されたり
神奈川近代文学館にて安部公房展が開催されたりしました
また、私にとって『砂の女』は特別に好きな本の一つです
昨年の11月頃、安部公房展への訪問を前に、予習だが復習だかを兼ねて、もう一度『砂の女』を読み返したいと思い書棚から文庫本を手に取りました 通読するのは3度目です
しかし、結局展示期間の都合により、読み終わる前に安部公房展を訪れることになり、そのまま年も明けてしまったので、残りの50ページあまりとともに年を越しました そして、お正月休みの持て余した時間を使って、散歩した近所の海辺にて、読み終えることが出来ました
やっぱり、何度読んでも面白いし、読めば読むほど面白いです
『こころ』や『細雪』や『雪国』のような、心地の良いリズミカルで美しい日本語という訳ではなく、村上春樹を含め近年の人気作家が書くような技巧的でスタイリッシュで読みやすい類いの文章という訳でもなく、どちらかというと陰湿で、文字を目で追う行為自体を楽しめるタイプの小説ではないのですが、それでも物語に引き込まれてしまう魅力があり、SFのようなファンタジーのような独創的な物語ではあるけれど、それらは何かに囚われて生きる現代社会または自分自身のことを映し出す隠喩であり、極めて社会的かつ内省的な内容として、今の自分の価値観を揺るがすような、そんないたずらな煽りを感じてしまう、ヒリヒリとする読了感が得られました
これは『砂の女』の序文です
そしてこちらは、安部公房展にて『砂の女』の展示エリアに掲示された著者の言葉です
どちらも、この物語を端的に捉えた文章であり、思わずニヤけてしまいます
ひとまず、年明けの『砂の女』の読了をもって、私の安部公房生誕100周年イベントがおわりました しかし、まだまだ読んでいない作品や、読み返したくなる作品もあるので、読み途中の本や高々と積まれている本を差し置いて、安部公房がいつそれらをインタラプトしてもおかしくないです
「これ絶対読んどけ!」とかあれば、是非教えてください
最後まで読んでいただきありがとうございました