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【読書感想文】本性 伊岡瞬 著
台風の土曜日、残りを一気に読んだ。8月当初に読み始め、7割終えたところで、しばらく放置していたのだ。私はそういう読み方をよくする。よって当初懸念したような、読む手が止まらず日常生活が奪われることはなかった。ただこれ、非常に読後感が悪く、感想を書こうにも気分が悪くなりそうに。じゃあ書かなきゃいいんだけど、方向性が決まったので、やはり書く。皆さん、気分悪くならないでね。あと、ネタバレ多分にあります。
この小説はミステリーで、章により視点人物が変わり、最後に全ての繋がりが見えてくる。一番の謎は、サトウミサキは何者か、何の目的があって彼らに近づくのかだ。この目的については、1章の最後辺りで検討がつき、2章であらかたの予想がついたこともあり、私は途中で離脱。その後3章からまた読み始め、この章の最後のトリックが面白いと思ったことから、また2章に戻って読み、それから4章を読み終えた後、残る5章以降は答え合わせのような、刑事の視点だったので、しばらく放置していた。
ごく簡単にいうと、サトウミサキは復讐のため、彼らに近づき、陥れたのだ。15年前に中学生だった弟がいじめを受け、自殺未遂をした。その当時の担任教師、教頭、いじめをした主犯格の男女に近づき、次々と罠に嵌めたのである。
こう書くと、やはりドラマや漫画で、既に聞いたことがある話だし、現実には、いじめを受けた本人が同窓会を開き、爆破か何かして復讐を果たそうとした事件もあった(母親の通報で未遂に終わる)。
しかし、この読後の「気持ち悪さ」は何なのだろう。一番はいじめの描写だと思う。性的で執拗な描写があり、それが読んでいて辛かったし映像が浮かんでしまう。
いじめそのものを扱った小説で、思い浮かぶのは「風葬の教室」山田詠美・著だ。これは小学生女子がクラスメートの女子にいじめられる話で、確か原因は嫉妬だったと思う。男性教師が、えこ贔屓して、少なくともリーダー格の女子にはそう見え、それが引き金になり、主人公はターゲットになる。スリップ姿で水をかけられるなど痛ましいシーンはあったが、読後に「気持ち悪さ」は残らなかった。最後、遺書を残して自殺しようとしたところに、事情を察した母親と姉が、シュークリームを作ってあげようとする、それを知り、少女は自殺を思いとどまるという、救いのある話でもあった。
テレビドラマでは、子ども同士の執拗で残酷ないじめのシーンは、ほぼ見なくなった。私の想像では理由は主に3つ。一つは、教育的配慮。そういうシーンを子どもが見ることで、助長されるから。2つ目は見る側の心理的ストレス。目にした人によっては、過去の被害を思い出すから。3つ目は、演じる側のストレスだと思う。
中学の時、演劇部で「もう、いいよ、こんな奴!ほっとけよ!!」と怒鳴られた。これは劇中のことで、いじめとは、また違うシーン、相手も役の上でのセリフであったが、一定期間、毎日、それも何度もこのセリフを浴びるのは、非常に辛かった。相手の同学年の女子とは、もともと険悪、且つ、向こうが上、私は下と力関係もはっきりしていたので、役に乗せて私情をぶつけているとしか思えなかったが、誰にもその辛さを話せなかった。
プロの俳優の世界では、役柄上のメンタルケアはある程度されていると思うが、小中学生が過酷ないじめをする、される役を演じるのは相当なストレスで、危険だと思う。成人した役者が演じて、深夜ドラマで放送されるなら、また別かもしれないけれど。
いろいろ話がずれたが、読後感の悪さを残すこの小説が「危険」であるのは確かだ。私には「花より男子」が丁度良いかも。
↓こちらにも著書、作者について少し書きました。
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