【新書が好き】安全と安心の科学
1.前書き
「学び」とは、あくなき探究のプロセスです。
単なる知識の習得でなく、新しい知識を生み出す「発見と創造」こそ、本質なのだと考えられます。
そこで、2024年6月から100日間連続で、生きた知識の学びについて考えるために、古い知識観(知識のドネルケバブ・モデル)を脱却し、自ら学ぶ力を呼び起こすために、新書を学びの玄関ホールと位置づけて、活用してみたいと思います。
2.新書はこんな本です
新書とは、新書判の本のことであり、縦約17cm・横約11cmです。
大きさに、厳密な決まりはなくて、新書のレーベル毎に、サイズが少し違っています。
なお、広い意味でとらえると、
「新書判の本はすべて新書」
なのですが、一般的に、
「新書」
という場合は、教養書や実用書を含めたノンフィクションのものを指しており、 新書判の小説は、
「ノベルズ」
と呼んで区別されていますので、今回は、ノンフィクションの新書を対象にしています。
また、新書は、専門書に比べて、入門的な内容だということです。
そのため、ある分野について学びたいときに、
「ネット記事の次に読む」
くらいのポジションとして、うってつけな本です。
3.新書を活用するメリット
「何を使って学びを始めるか」という部分から自分で考え、学びを組み立てないといけない場面が出てきた場合、自分で学ぶ力を身につける上で、新書は、手がかりの1つになります。
現代であれば、多くの人は、取り合えず、SNSを含めたインターネットで、軽く検索してみることでしょう。
よほどマイナーな内容でない限り、ニュースやブログの記事など、何かしらの情報は手に入るはずです。
その情報が質・量共に、十分なのであれば、そこでストップしても、特に、問題はありません。
しかし、もしそれらの情報では、物足りない場合、次のステージとして、新書を手がかりにするのは、理にかなっています。
内容が難しすぎず、その上で、一定の纏まった知識を得られるからです。
ネット記事が、あるトピックや分野への
「扉」
だとすると、新書は、
「玄関ホール」
に当たります。
建物の中の雰囲気を、ざっとつかむことができるイメージです。
つまり、そのトピックや分野では、
どんな内容を扱っているのか?
どんなことが課題になっているのか?
という基本知識を、大まかに把握することができます。
新書で土台固めをしたら、更なるレベルアップを目指して、専門書や論文を読む等して、建物の奥や上の階に進んでみてください。
4.何かを学ぶときには新書から入らないとダメなのか
結論をいうと、新書じゃなくても問題ありません。
むしろ、新書だけに拘るのは、選択肢や視野を狭め、かえってマイナスになる可能性があります。
新書は、前述の通り、
「学びの玄関ホール」
として、心強い味方になってくれます、万能ではありません。
例えば、様々な出版社が新書のレーベルを持っており、毎月のように、バラエティ豊かなラインナップが出ていますが、それでも、
「自分が学びたい内容をちょうどよく扱った新書がない」
という場合が殆どだと思われます。
そのため、新書は、あくまでも、
「入門的な学習材料」
の1つであり、ほかのアイテムとの組み合わせが必要です。
他のアイテムの例としては、新書ではない本の中にも、初学者向けに、優しい説明で書かれたものがあります。
マンガでも構いません。
5.新書選びで大切なこと
読書というのは、本を選ぶところから始まっています。
新書についても同様です。
これは重要なので、強調しておきます。
もちろん、使える時間が限られている以上、全ての本をチェックするわけにはいきませんが、それでも、最低限、次の2つの点をクリアする本を選んでみて下さい。
①興味を持てること
②内容がわかること
6.温故知新の考え方が学びに深みを与えてくれる
「温故知新」の意味を、広辞苑で改めて調べてみると、次のように書かれています。
「昔の物事を研究し吟味して、そこから新しい知識や見解を得ること」
「温故知新」は、もともとは、孔子の言葉であり、
「過去の歴史をしっかりと勉強して、物事の本質を知ることができるようになれば、師としてやっていける人物になる」
という意味で、孔子は、この言葉を使ったようです。
但し、ここでの「温故知新」は、そんなに大袈裟なものではなくて、
「自分が昔読んだ本や書いた文章をもう一回読み直すと、新しい発見がありますよ。」
というぐらいの意味で、この言葉を使いたいと思います。
人間は、どんどん成長や変化をしていますから、時間が経つと、同じものに対してでも、以前とは、違う見方や、印象を抱くことがあるのです。
また、過去の本やnote(またはノート)を読み返すことを習慣化しておくことで、新しい「アイデア」や「気づき」が生まれることが、すごく多いんですね。
過去に考えていたこと(過去の情報)と、今考えていること(今の情報)が結びついて、化学反応を起こし、新たな発想が湧きあがってくる。
そんな感じになるのです。
昔読んだ本や書いた文章が、本棚や机の中で眠っているのは、とてももったいないことだと思います。
みなさんも、ぜひ「温故知新」を実践されてみてはいかがでしょうか。
7.小説を読むことと新書などの啓蒙書を読むことには違いはあるのか
以下に、示唆的な言葉を、2つ引用してみます。
◆「クールヘッドとウォームハート」
マクロ経済学の理論と実践、および各国政府の経済政策を根本的に変え、最も影響力のある経済学者の1人であったケインズを育てた英国ケンブリッジ大学の経済学者アルフレッド・マーシャルの言葉です。
彼は、こう言っていたそうです。
「ケンブリッジが、世界に送り出す人物は、冷静な頭脳(Cool Head)と温かい心(Warm Heart)をもって、自分の周りの社会的苦悩に立ち向かうために、その全力の少なくとも一部を喜んで捧げよう」
クールヘッドが「知性・知識」に、ウォームハートが「情緒」に相当すると考えられ、また、新書も小説も、どちらも大切なものですが、新書は、主に前者に、小説は、主に後者に作用するように推定できます。
◆「焦ってはならない。情が育まれれば、意は生まれ、知は集まる」
執行草舟氏著作の「生くる」という本にある言葉です。
「生くる」執行草舟(著)
まず、情緒を育てることが大切で、それを基礎として、意志や知性が育つ、ということを言っており、おそらく、その通りではないかと考えます。
以上のことから、例えば、読書が、新書に偏ってしまうと、情緒面の育成が不足するかもしれないと推定でき、クールヘッドは、磨かれるかもしれないけども、ウォームハートが、疎かになってしまうのではないかと考えられます。
もちろん、ウォームハート(情緒)の育成は、当然、読書だけの問題ではなく、各種の人間関係によって大きな影響を受けるのも事実だと思われます。
しかし、年齢に左右されずに、情緒を養うためにも、ぜひとも文芸作品(小説、詩歌や随筆等の名作)を、たっぷり味わって欲しいなって思います。
これらは、様々に心を揺さぶるという感情体験を通じて、豊かな情緒を、何時からでも育む糧になるのではないかと考えられると共に、文学の必要性を強調したロングセラーの新書である桑原武夫氏著作の「文学入門」には、
「文学入門」(岩波新書)桑原武夫(著)
「文学以上に人生に必要なものはない」
と主張し、何故そう言えるのか、第1章で、その根拠がいくつか述べられておりますので、興味が有れば確認してみて下さい。
また、巻末に「名作50選」のリストも有って、参考になるのではないかと考えます。
8.【乱読No.96】「安全と安心の科学」(集英社新書)村上陽一郎(著)
[ 内容 ]
交通事故や医療事故、あるいは自然災害が頻発しているが、元凶は車や劇薬なのか、人なのか、あるいはシステムなのだろうか。
われわれの安全を脅かすものは、「安全」の名のもとに人間が作り上げた科学的人工物、社会的構築物である場合が多くなっている。
また現代のような文明の高度に発達した社会では、心の病気、自分が生きている社会との不適合に悩む人の割合も増えてきている。
これまで定量的に扱えないということで無視されることの多かった「不安」や「安心」といった問題に目を向けなければいけない時代になってきたのだ。
[ 目次 ]
序論 「安全学」の試み
第1章 交通と安全―事故の「責任追及」と「原因究明」
第2章 医療と安全―インシデント情報の開示と事故情報
第3章 原子力と安全―過ちに学ぶ「安全文化」の確立
第4章 安全の設計―リスクの認知とリスク・マネジメント
第5章 安全の戦略―ヒューマン・エラーに対する安全戦略
[ 発見(気づき) ]
「優先道路が分かりにくい三差路など構造上、事故が起こりやすい交差点」
「交通規制道路標識が乱立し、重なり、認識しにくい」
「カーブミラーの視界を遮って、交通規制道路標識が立っている」
「等幅でくの字に曲がった道路は、自動車の構造上センターラインからはみ出る」
「縦にポールを並べ、斜め横から見ると絵が浮かび上がる柵は、見通しの良い交差点でも、左右確認の視界を遮る」
交通事故が良く起こる場所で、これらが事故の主要因を占めていても、注意義務違反になってしまう。
『年間8000人の犠牲者を出す交通事故情報は、警察と保険会社に独占され、航空機事故の原因を調査する第三者機関・・・法律で定められている航空事故調査委員会のような交通事故原因究明のための第三者機関がない。
警察の行う「責任追及」の調査では、「原因の究明」を行うことは難しく、宝の山の「事故情報」を安全のために利用されていないのが現状である。』と、著者は指摘する。
「ヒューマン・エラー」・・・人は誰でも間違える可能性を持っている、人は間違える、機械は故障する、ことを予想して、「フール・プルーク」・・・ミスをカバーできる、「フェイル・セーフ」・・・ミスがあっても安全、などの対策をとる。
また、それは、「ナチュナル・マッピング」・・・自動車を運転する時、右にハンドルを切れば右に曲がる、右に倒せば右のウインカーがフラッシュする等、人間工学的に操作が自然であることを踏まえて設計し、時には「自然な」流れに任せず、意識的に操作する構造にする。
また、「過ちに学ぶ」ことこそ、安全対策のアルファでありオメガだ。
これらは、安全戦略のイロハで、航空機業界・運輸業界・製造業などではごく当たり前に行ってきているが、交通事故対策や医療事故対策などでは、それは一向に当たり前でなかった、と著者は指摘し、交通・医療の安全対策の問題点、原子力の安全対策に学ぶこと、安全と安心の定義、安全の戦略と展開していく。
使われている文言は、専門的であるが、病院での患者の心構えなど、より安全な生活を送るために、職場での事故を防ぐために、有効な内容になっている。
読み終わって感ずるとことは、報道のあり方として、事故発生の事実報告に留まらず、原因の究明、または事故原因のデーターベース化もひとつの役割ではないかと感じた。
人工物を設計する側に、上記した安全戦略のイロハで構築された技術・知識が継承されず、始めに書いたことなどが放置されているのが現状である。
気が付いた危険箇所を事前に指摘し、改善しておくことの重要性を確信させる本であった。
[ 問題提起 ]
セキュリティ、トラストワース(信頼に足る)、コンプライアンス(法令順守)、リスクマネジメントなど、近年、安全と安心は時代のテーマだと思う。
これは、元東京大学先端科学技術研究センター長で現在ICUの教授の村上陽一郎氏が語る安全と安心の科学。
大局的な視点で、この問題の捉え方が示されている。
人間は安全であっても安心できない。
あるいは安全ではないのに安心する。
飛行機は落ちる確率が低いはずなのに、自動車に乗るよりも神経質になる。
原子力発電所は他のどんな施設よりも安全性に配慮されているのに、危険に思われる。
現代においてリスクの大きさは、それが発生する可能性で測られる。
だが、その可能性を人間は主観でとらえている。
1万年に一度しか起きないことでも、明日が1万日目なのではないかと考えて、不安を感じてしまう。
大隕石の落下を題材にした映画は最近だけでも何本もあり大人気だが、実際に私たちの生きている間に、それが起きる可能性はほとんどない。
逆に私たちはまったく不安を持たずに、自動車を運転したり、タバコを吸ったりしている。これで死ぬ確率は、天変地異や原発事故で死ぬ確率より遥かに高い。
交通事故では毎年数千人が亡くなるが、これは阪神淡路大震災よりも多い。
メディアも人々の確率認識のズレを助長する報道をしている。
原発事故や飛行機事故は滅多に起きないし、安全性も極めて高いのに、何か小さな事故が起きただけで、危険だと騒ぐ。
だが、著者によるとたとえば原発の小さな事故で、多くの場合、放射能が漏れたりしないのは、安全機構がよくできている証明だと見ることもできるという。
”人は間違う”を前提とした「フールプルーフ」機構と、間違いが起きても大事には至らない「フェイルセーフ」機構が安全戦略の基本である。
しかし、安心した状態こそ危険なのだと著者はこう指摘している。
「システムの中で、「安全」は絶対的な価値として追求されなければならないが、それで「安心」が保障されることは避けなければならない」
過度にフールプルーフとフェイルセーフで設計されたシステムは、使う人間がそれを空気や水のように当たり前と思いはじめた途端、危険なシステムになってしまうのだ。
[ 教訓 ]
実際、原発や飛行機などの近年の大事故は、少なからずフェイルプルーフが準備されたシステム上で起きている。
車の運転にしても、安全機構が充実すればするほど、運転手は少し乱暴に扱っても平気だろうと考えて無謀な運転をしてしまう。
いくら安全にしても使う側が安心で気を抜くので、リスクの大きさは変わらない「リスク恒常性」が発生している。
組織上の改革としては、内部監査の仕組み、間違いを発見したら内部の人間が警告をする「ホイッスル・ブロウ」の重要性が指摘されている。
日本社会ではホイッスルブロウは内部告発であり、裏切り者として組織から排除される傾向がある。
だが、QC活動の一環として考え、積極的に取り入れるべきだと著者は提言している。
また、具体的なフールプルーフの戦略として、
1 システム全体をいつでも目に見える形で捉えられるような工夫をしておく
2 操作パネルや作業手順に十分に「人間工学的」な考慮がなされていること
を挙げている。
一言で言うと「アフォーダンスに合った」システムを作れということらしい。
誤操作を回復不能にしないという意味での回復不能性も大切。
この本ではパソコンのデスクトップのゴミ箱が例に挙げられていた。
一度ファイルを捨てても、ゴミ箱を空にするまでは取り戻せる。
このように、冗長性をもたせて保護するのが良いという。
これらはITのシステムやアプリケーションの基本設計思想として活かせそうなリストである。
どうしても必要に迫られない限り飛行機には乗らない人もいる。
だが、この本に書かれているように、飛行機はきっと他の乗り物よりも安全なのだろうなと思っている。
そこで飛行機の危険性について、ネットで調べてみると、こんな面白い数字が見つかった。
・市民と事業者のためのリスク・コミュニケーション・ガイド
自動車、飛行機、列車の利用者数と移動距離から、死亡リスクを求めたもの。
交通機関別死亡リスク(単位) 自動車 飛行機 列車
利用者数と移動距離あたりで計算した時(100 億人・マイル) 0.55 0.38 0.23
利用者数あたりで計算した時(100 万人) 0.027 1.8 0.59
解説の引用:
「車の運転中に事故にあう確率は,何人乗っているかだけでなく,運転の時間あるいは移動する距離が長ければ高くなります。
そこで,交通機関による死亡リスクは,一般的に利用者数と移動距離をかけたものを分母として計算されています(表4の欄)。
この方法で計算すると,自動車運転のリスクが最も高く,飛行機に乗るより危険で。
しかし,飛行機の場合,事故の危険性は離着陸時が最も高く,水平飛行状態ではほとん事故は起きません。
つまり,飛行機の危険性は飛行距離にはあまり関係ありません。
このとを考慮して,分母を利用者数とすると,実は飛行機のリスクが最も高くなります(表4下の欄)。
分母をそろえるということは,どんなリスクを考えるかということを示す一例です。」
これが本当なら、この本は間違っているのか?
移動距離では、確かに飛行機が一番安全だ。
だが、利用者数で調べると飛行機が危ないという結論。
やはり、新幹線の選択はある程度、正しいのかもしれない。
[ 教訓 ]
この世の中は危険に満ちている。
交通事故では国内だけでも年間数千人が死亡し、その数倍の人間が身障者になっている。
飛行機事故は少ないとはいえ起きたら大惨事になるし、原子力発電所の事故もそうだ。
地震は突然起きるし、前触れもなく津波が押し寄せる事もある。
病院で医療事故は起きるし、学校やスーパーで殺人事件に巻き込まれる事もある。
この本は、それらの危険のうち、医療事故や交通事故、原発事故などの発生をいかにしたら少なくできるのか、そのためにはどのような事をしなければいけないのかを、極めて多方面から理論的に説明している。
例えば交通事故だ。
年間数千人前後が死亡しているのだから、一日あたり、けが人も含めたら50人以上が死傷している事になる。
この数年間で日本では航空機事故は起きていないし、死者を発生させた列車事故もほとんどなかったはずだ。
もちろん、原子力発電所事故での死者もゼロである(東海村JCOの臨海事故はあったが、これは原子力発電所ではない)。
それらに比べた時、交通事故の死傷者の多さは異常である。
航空機事故と交通事故で何が違っているかといえば、事故原因の究明システムの違いであるらしい。
航空機事故の場合は事故の責任を問うことを目的とする警察の調査のほかに、警察とは独立の第三者機関が事故調査を行うのが常識となっている。
この第三者機関の目的は事故原因の究明であり、誰に責任があったか、どれほどの過失があったかは問題としていない。
なぜこのようなシステムになっているかといえば、失敗から学ぶためである。
なぜそのような事故が起きたのか、その事故はどのようにしたら防げるのかを徹底的に究明し、それをもとに現在の飛行機の構造や操縦席の構造で直せるものは直し、操作マニュアルを修正し、人為的・機械的ミスを少なくするのだ。
そしてこの時に重要な事は、事故調査委員会への証言は警察の証言とならない、ということだ。
もしも自分の罪が問われるとなったら警察へは証言拒否する事もあるだろう。
しかし、「あなたのミスがどのように起こったかだけ教えて欲しい。それは警察には秘密にしておくし、それで罪を問われる事もない」と言われたら、スムーズに証言してくれるだろうし、その証言は次の世代に生かされることになる。
航空機業界は実は、このようなシステムを作り上げる事で事故を激減させたという。
しかし、交通事故の場合はどうだろうか。
事故究明は警察と保険会社だけが行っている。
前者は責任の所在を明かにするのが目的だし、後者は保険金の支払いを決めるのが目的だ。
だから、何度交通事故が起きてもその知識が生かされることはないし、何度も同じ原因で事故が起きてしまう。
なるほど、これなら日本で交通事故がなかなか減らない理由が理解できる。
減らすためのシステムが全くないから当然なのだ。
事故が起きた時に責任を問う前に、何が起きたのかを正確に把握し、それによって将来同じ事故が起きた時に同様に悪い結果にならないようにするシステムが重要だ。
それが「フール・プルーフ(fool-proof:ミスをカバーできる)」や、「フェイル・セーフ(fail-safe:ミスがあっても安全)」である。
要するに、あらゆる可能性を想定する事は人間にはできないし、過去に起きた事がない事態を予測する事もできない。
そうである以上、人間は過去の過ち、過去の事故から学ぶしかない。
そう考えた時、過去の事故や過ちは「宝物」に変化する。
この「宝物」を大事にして活用しよう、ということが事故を減らす第一歩なのである。
アメリカではクリントン大統領時代に「医療の質」委員会が設けられたが、その調査結果をまとめた本のタイトルは、'To Err is Human' だった。
つまり、『人間は間違えるものである』である。
そして冒頭、「医療の分野は,基本的な安全対策を重視するハイリスク産業に比べて10年以上遅れている」と指摘しているそうだ。
現在の日本の医療現場はどうだろうか。
クリントン時代のハイリスク産業の安全対策に追い付いているのだろうか。
本書でも指摘しているが、「自分達は愚行など犯さない」、「失敗は未熟や注意力不足から来る」という考え、愚行を非難し、未熟を咎め、不注意を叱責するだけでは何の解決にもならないのである。
「今後同様に事故が起きないように心がけましょう」と言うだけでは、同様の事故は必ず起きてしまうし、再発を防ぐ事もできない。
そのような事故の再発を防ぐ唯一の方法は、失敗やミスの報告義務とし、それに対して責任を問わないシステムを作ることで、それらの知識を相互の財産とすることである。
そしてこれは品質管理の立場から見れば、基礎中の基礎なのである。
失敗した人間の責任を糾弾する事は、実は事故防止では最悪の選択肢なのである。
叱責されることがわかっていれば、失敗したとき人間はそれを隠すのが自然な姿だからだ。
また、「安全が達成され、安全な状態が続いているときこそ、実は最も危ない」という指摘も本質をついていると思う。事故が起きていない状態が続いていると、どうしても「努力しなくても事故なんて起きないもんだなぁ」と考えてしまうからだ。
さらに、「機械は故障し、人間は過ちを犯すものだ」ということを前提にシステムを組みたてろ、という指摘ももっともである。
人工物である限り破壊は起きるし磨耗も起きる。
永遠に壊れない機械なんてない。
おまけにどんなに注意しても人間の側のミスは防ぐ事はできない。
要するに、機械があってそれを人間が操作している限り、「絶対に安全」「絶対にミスが起きない」というのは机上の空論であり、「このような事故が起きてはならない」というお題目を唱えていても、またいつか同様の事故は起きるのを防げない。
事故が起きるためには、事故を誘発するような操作システムがあったり、操作を間違いやすいボタンの配列があったり、人間の反射的動作と反するような操作システムがあったり、そのようなことが積み重なって事故が起きている。
それらによる事故であれば、それを修正するだけで事故を減らす事ができる。
実際、航空機業界はそのような事故を洗い出して修正する事で、劇的に事故を減らしているのである。
それに比べたら、医療現場の努力はまだまだ不足していると思う。
また、「リスク・マネジメント」を日本では「危機管理」と訳しているが、これも本来のリスクの意味とニュアンスが違っているらしい、というのも面白い。
本来のリスクとは、「「行為者が自ら危険を認知しつつ敢えてその危険に挑む」という意味で、要するに「虎穴に入らずんば、虎子を得ず」という雰囲気の言葉だという。
決して、天から降ってくるのが「リスク」ではないのである。
例えば日本では、「この池に立ち入るのは危険」と言うときは「ここから先は立ち入り禁止」という看板を出すが、英語では 'Beyond this barricade at your own risk!' となるそうだ。
つまり、「この柵から先は、君自身の責任において入るなら入ってもいいよ」という意味である。
ニュアンスが全く異なっていることがわかると思う。
文化の違いといえばそれまでだが、その意味するところはかなり違っていると思う。
考えてみたら、医療行為の全てはまさに上記の「「行為者が自ら危険を認知しつつ敢えてその危険に挑む」そのものである。
リスク管理とはそういう「リスク」を何とかしよう、という考えであるという。
リスクは、起こる確率を人間の手で減らすことができる危険、あるいは万一起こってしまったらその被害を減らすことができるような危険であるという。
自然災害が起こる確率を減らすことはできないので、諦めるほかなかった災厄を、私たちは天災と言い習わしてきた。
しかし、諦めずに、起こったときの被害を減らす努力をしようとするとき、災厄はリスクの範疇に入ることになる。
[ 結論 ]
本書は、交通、医療、原子力を題材にして、人間のもつ「リスクに立ち向かう営み」について考えたものである。
「すべてを諦めるのではなく、できることは何かを探し出し、一歩でも前進しようとすること、そして時に人間の力の卑小さと自然の力の大きさの前に頭を垂れること」「人間のそうした存在の形を受け入れ、また信じたい」という著者の思いが、本書を通底して奏でられている。
「リスクの認知は、主観的な、あるいは心理的な要素を多分に含んでおり、それは個人や社会の価値と密接に繋がって」いる。
しかも「絶対安全」はあり得ないという。
リスク評価の科学的合理性と、一般の人々が抱く不安とのあいだの乖離をどのように調停するかは、安全性を考える上できわめて重要な問題である。
本書では予防原理と参加型技術評価法を紹介し、この「調整」の進むべき方向を示唆している。
「安全と危険」、「安心と不安」、「満足と不足」という三つの軸を総合的に眺めることによってこの問題の解決を図ろうとする著者の試みが成就することを期待したい。
また、日本は安全で安心な国ではなくなったのか?
昨今、安全・安心、ストレスといった言葉が新聞・雑誌紙面を飾らない日はないといっても過言ではない。
特に、「安全性」が強調される分野には、医療、公共交通機関(航空、鉄道)、食品、原子力、大規模なコンピュータ障害などがある。
2005年の秋は、構造計算書の偽造問題で住宅の安全性が大きく取り沙汰された。
コンピュータ障害を除けば、これらの分野はすぐさま人命にかかわる事柄であるため、コトは重大であり、「安全であったはずのわが国が、“危険な”国になってしまったのか」と“不安”になり、嘆く国民は多いと思う。
文部科学省「安全・安心な社会の構築に資する科学技術政策に関する懇談会」(平成16年4月)の調査報告書では、「特に近年身の回りの危険が増したか」という質問に対し、「多くなった」と「どちらかといえば多くなった」を合わせると、回答者の約70%を占めている。
また、2004年の世界経済フォーラム(ダボス会議)の2004年の主題は「安全と経済的繁栄」であった。
このダボス会議の開催に合わせて、「安全と経済的繁栄」に関する国際世論調査が実施され、この結果、日本人は、「自国が10年前に比べて安全でなくなったと思うか」という質問に86%が「安全でなくなった」と回答し、全世界の平均57%に比べ、高くなっている。
さらに、「次世代は今より安全でない世界で暮らすと思うか」という設問に対しても、68%が「そう思う」と回答し、全世界平均の48%を大きく上回る結果となっている。
これまで日本国内での暮らしは、安全について意識しなくとも、同質性が高く、他国に比べて所得格差が小さいこと、専門家への信頼感などを背景に、ある程度の安全や安心が得られてきたのではないかと思う。
特に意識しなくとも、安全や安心は所与のものであった。
ところが、技術の進歩が事故の規模やその影響度合いを拡大させ、生活様式の多様化、所得格差の拡大、及び国民に求められるスピードの速さなどから、安全性を問われる事故が多発し、国民全体に広くかつ浅い不安感が広がっている。
まさに「安全神話の崩壊」である。
今後ますます、日本でも「安全であること、安心できること」は所与ではなく、一人ひとりが自ら確認すること、確認する手段を得ることの重要性がクローズアップされてくることになろう。
では、安全文化とは何か?
このような環境の中で企業が成長し存続し続けるためには、安全性を確保し、ユーザの信頼感を得ることが最重要課題となっている。
安全を確保するためには、ハード面(技術力の向上、設備投資など)と、マネジメントスタイル、コミュニケーション、及び教育訓練といったソフト面(人間的側面)について、総合的に取り組む必要があることは容易に理解できるが、どのように考え、どのようなやり方で進めていったらよいかは、議論がつきない。
さて、「安全文化」という切り口からとらえられるようになったのは、いつからであろうか。
多くの文献では、国際原子力機関(IAEA)の諮問機関として事務局長下に設置された(1985年3月)国際原子力安全諮問グループ(INSAG)が、1986年4月のチェルノブイリ原子力発電所事故についての事故後検討会議の概要報告書からであるとしている。
この1991年に取りまとめられた報告書(INSAG-4)では、安全文化を次のように定義している。
「安全文化とは、組織ならびに個人の示す特色と姿勢の総合体であって、何よりも高い優先度で、原子力施設の安全問題がその重要度に相応しい留意を受けることを保証しようとするものをいう。
安全文化は二つの要素からなる。
一つは組織内の必要な枠組みと管理機構の責任の取り方である。
第2にはあらゆる階層の従業員が、その枠組みに対しての責任の取り方及び理解の仕方において、どのような姿勢を示すか、という点である」
これらについて、本書では、次のように解説している。
「このような非常に厳しい文言で規定される安全文化は、政策にお ける意志決定者から、組織の管理者を経て、文字通りの一介の従業員にいたるまで、安全達成のために、どのような責任があるか、どのような役割を果たすべきか、という点を克明に示すことによって、 各組織体に普及することが期待されていることになります。
(中略)
一つ一つの事業者や企業組織などは、こうした大まかな枠組みに従いながら、自分の組織文化に最も適した詳細を規定し、実践していくことが求められていると言ってよいでしょう。」
自社の組織文化に適した安全文化の醸成とは?
では、「自社の組織文化に適した安全文化の醸成」をどのように考えたらよいだろうか。
安全を確保するために、管理を強化し、厳格なルール作りと詳細なマニュアル化を行うことを考える企業も多い。
マニュアルというとISOを思い出す人も多いと思う。
ISOの認証取得件数を「The ISO Survey of Certifications 2004」でみてみると、日本は、全世界でISO9001が4位(48989件)、ISO4001が1位(19584件)である。
しかしながら日本人の生真面目さなどから認証取得は容易だが、多くの弊害を指摘する声もある。
最も悪い例は、形骸化したISOを運用するために、報告のための報告、記録のための記録と、手段が目的となり、認証取得したために仕事が増え、現場が疲弊するといった現象である。
そして、日本人の特質として、実態に即したマネジメントシステムよりも「こうありたいと思い描くシステム」、「お隣の企業と同じ、もしくはそれ以上のシステム」を構築してしまう傾向にある。
このような自社の組織にそぐわないマネジメントシステムの構築とマニュアルの詳細化は、日本の企業の本来の強みを失う。
なぜ、マニュアルの詳細化は日本の企業の本来の強みを失うのであろうか。
米国の文化人類学者であるエドワード・ホールは、日本がもっともハイコンテクストで、中国、韓国が続いて、次にアフリカン・アメリカの順だという調査 結果を1990年に発表している。
ハイコンテクスト文化とは、コンテクストの共有性が高い文化で、お互いの意図を察しあうことで、何となく通じてしまう環境のことをいう。
日本では、コンテクストが、主に共有時間や共有体験に基づいて形成される傾向にあるため、「コンテクストの量」でコミュニケーションの成立具合が決まってしまうことになる。
一方、欧米などのローコンテクスト文化では、言語そのものによりコミュニケーションを図ろうとするので、言語に対し高い価値観と積極的な姿勢を示す。
したがって、欧米では論理的思考力、表現力、説明能力は、学校教育の中でも培われている。
近年、日本の学校教育でも論理的思考力や表現力強化の取り組みが始められてはいるが、まだまだ欧米ほどではない。
このコンテクストの面だけからみても、日本人が現場で機能するマニュアルを作成することは容易ではないことがわかる。
まして、マニュアルを管理強化のために現場と離れた第三者が、現場での関係性や文化を考慮することなく作成した場合、現場から「現場がわかっていない輩が書いたものは、使い物にならない」といった不満がでることも当然といえる。
それでは、日本の本来の強みとは、何であろうか。
一言で言えば“現場力”である。
80年代の日本の企業の競争力は、現場力で支えられてきたことは周知のとおりだが、90年代のバブル崩壊後のリストラや構造改革が進む局面で“現場”は疲弊してきた。
“現場”を支えているのは、言うまでもなく「人財」である。
品質や安全を担保する主役は“現場”であり、協力会社を含めた一人ひとりの従業員である。
いくら優れたビジネスリーダが存在しても、ひとりで価値を生み出すことは不可能だ。
いくら合理的な戦略や戦術を描いても、それを実現できる“現場”がなくては「絵に描いた餅」で終わってしまう。
(社)日本経済団体連合会も、
「2005年版経営労働政策委員会報告『労使はいまこそさらなる 改革を進めよう』」で、「低下しているのではないかといわれる『現場力』(現場の人材力)を復活するためには、まずはトップ経営層が現場に対して深い関心と関与をもつという意志を示し、現場の人々が、より強い当事者意識をもって努力する仕組みをつくることである。
日本の企業の競争力を支えているのは現場の従業員であり、従業員の知的熟練の向上を支えるのは、マニュアル化が困難な、いわばアナログ的な能力、暗黙知である。
こうした知的熟練を形成していく上でも、能力の開発、向上への取り組みと従業員の貢献に適切に報いる姿勢が必要となる。
さらに個々人の現場力を企業としての競争力へと結びつけていくのが、いわば組織力であり、これは職場のリーダや管理職の能力にかかっている。
管理職の能力伸張は、現代の企業における最大の経営課題である」
としている。
なお、コンテクストとは、コミュニケーションの基盤である「言語・共通の知識・体験・価値観・ロジック・嗜好性」などのいわゆる「文脈」ことである。
安全文化を醸成するための方策としては、従来、日本の、特に現場の技術者は、プライドで品質すなわち安全を確保してきた。
つまり、現場は裁量権を得てプライドを保ち、それが動機付けになっていた。
ところが、マニュアルで管理することで、現場は自ら思考し判断できない従業員を増やしているばかりか、三遊間(隙間)となった「仕事」がすっぽり抜けるようなことも起きている。
また、プロならではの感性から生まれる「違和感」を大切にし、安全性や品質の向上にどのように吸い上げ、取り込んでいくかが、「安全文化の譲成」のカギになるのではないか。
そして、変化に敏感になるためには、管理体制をシンプルにする必要がある。
なぜならば、感度をあげて変化をみつけても、しくみに反映するために複雑な手続きが必要ではタイムリーな「改善」は困難になるからだ。
当然のことながら、懲罰的な教育システムは従業員を萎縮させる以外に何も残らない。
現場のマネジャーは、部下一人ひとりの強みと弱みを把握し、理解することからコミュニケーションが成立すると考えるとよい。
日本人は、自己批判的になることで、自らの欠点や弱みを見つけ出し、不断の努力により、これを矯正することが是認されているといわれているが、このプロセスが高じるとストレスフルな状態になることは多くの方が経験されていることと思う。
現場の上司には、まず「ほめる技術」、「傾聴する技術」を身につけることをお勧めしたい。
また、大手企業になればなるほ ど、組織のレイヤーは深くなり、現場の様子がわからないマネジャーの数も増える。
どのレイヤーのマネジャーも「現場まかせ」と「現場にまかせる」ことの違いを認識し、自らの目で現場の従業員を把握し、理解する不断の努力が現場の士気を高め、自社に必要な価値観、すなわち安全を第一に考える「安全文化」の醸成が可能になるのではなかろうか。
この安全文化の醸成には、経験豊かなベテラン社員の貢献が期待できる。
改正高齢者雇用安定法では、平成18年度は62歳までの雇用延長だが、平成19年度には63歳と段階的に年齢を引き上げ、平成25年には65歳まで雇用を確保しなければならない。
どの企業も高齢者に提示する「仕事」に頭を痛めていると聞くが、自社の文化を熟知している高齢社員を登用して、従業員の心の健康を含めて効率化と対極にある「安全」について検討することも一案ではないか。
最後になるが、読者の企業にとって「安全」とはどのようなものかを振り返ってみていただきたい。
ISO/IECガイド51(規格に安全面を導入するためのガイド)では、安全を「受け入れ不可能なリスクが存在しないこと(受け入れることができないリスクからの解放)」と定義している。
「安全文化」を考えるためには、まず、自社にとって、“受け入れ不可能なリスク”とはどのようなことかを考えるところから、始まるのかもしれない。
「どのようにすればうっかりミスをなくすことができるのか」。
言葉は簡単でも、解決法を考えるのはとても難しい問いである。
本書でも、この問題にかなりの筆が費やされている。
本書では、「安全」や「安心」をキーワードにして、交通や医療、原子力などさまざまな分野での取り組み(あるいは取り組み不足)を紹介している。
どのような場合も、筆者がよりどころとするのは「フェール・セーフ」「フール・プルーフ」「原因追究」という三つの大きな軸である。
簡単な言葉でいえば、それぞれ「失敗しても安全なシステムにする」「うっかりミスに備える」「失敗に学ぶ」といった感じになるであろうか。
本書は結局のところ、「安全」を志向する上では基礎の基礎ともいうべき3つの軸の大切さを何度も繰り返して述べている印象が否めない。
確かにそれらは大切なことではあるのであるが、もっと注目していかなければならないのは、それら3つの軸を徹底化しても、完全な「安全」にはならないということではないであろうか
もちろん、この主張の一部は、筆者が本書の中で触れている。
〈ヒューマン・エラーはどんなに注意をしていても発生してしまうし、フェール・セーフの機能にしても限界がある〉とは本書のまとめで述べられていることである。
だからもっと「安全」対策を取っていかなければならない、というのが筆者の主張であるわけであるが、しかし、これはどこまで行っても終わりが見えない議論である。
[ コメント ]
屋根の上に屋根を重ねていったところで、「危険」は残ってしまう。
この種の危険に対して、どのような対策が可能なのかというのが、「安全」を考える上では最も大切なのではないであろうか。
その意味で、本書が一番見逃してしまっているのは、人間の悪意の問題である。
本書の安全対策はどれも、人間が悪意を持っていない場合にのみ効果を発揮する。
たとえば筆者は、病院における患者の取り違えを防止する案として、ICタグを患者の体内に埋め込み、何かの治療をする際には、それの情報を確認するようにする、という考えを提示している。
この案については、まず、ICタグの取り違え、情報の書き込み/読み取りの誤りといったうっかりミスへの対策になっていないという問題があるほかに、ICタグに治療情報が一元化された際、それを悪用するのは非常に簡単であるという問題も指摘できてしまう。
ある患者のICタグさえ読み取れれば、その人がいつも飲んでいる薬の情報など、すぐにわかってしまう。
すると、その薬と組み合わせたとき、副作用を起こす薬を選ぶことも容易くなり、結果としてICタグがあったせいで危険にさらされるということも生じる。
このような問題は、原子力や航空機の安全について語るときにも見え隠れしている。
本書では飛行機が原子力発電所に墜落する確率を算出しているが、その際、テロなどで人為的に飛行機が墜落させられる可能性は省かれている。
「安全」や「安心」は現代のキーワードである。
うっかりミスの防止ももちろん大切であるが、このような悪用までも見据えた「安全」対策が本当は必要とされているのではないかと思う。
9.参考記事
<書評を書く5つのポイント>
1)その本を手にしたことのない人でもわかるように書く。
2)作者の他の作品との比較や、刊行された時代背景(災害や社会的な出来事など)について考えてみる。
3)その本の魅力的な点だけでなく、批判的な点も書いてよい。ただし、かならず客観的で論理的な理由を書く。好き嫌いという感情だけで書かない。
4)ポイントを絞って深く書く。
5)「本の概要→今回の書評で取り上げるポイント→そのポイントを取り上げ、評価する理由→まとめ」という流れがおすすめ。
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