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【「嗜む」のすすめ】自分の凹を他人の凸が埋める社会に焦がれ本を嗜む

嵐田大志さん撮影

私達が密かに大切にしているものたち。

確かにあるのに。

指差すことができない。

それらは、目に見えるものばかりではなくて。

それらを、ひとつずつ読み解き。

それらを、丁寧に表わしていく。

そうして出来た言葉の集積を嗜む。




■テキスト

「[増補版]知の編集工学」(朝日文庫)松岡正剛(著)

本書刊行時の時代背景と執筆時の思い、そして、今回、増補した制作経緯を明かし、あらためて「知の編集工学」で問おうとしたメッセージを、以下の5つの視点で解説しています。

1.「世界」と「自己」をつなげる

2.さまざまな編集技法を駆使する

3.編集的世界観をもちつづける

4.世の中の価値観を相対的に編み直す

5.物語編集力を活用する

これらの視点の大元には、「生命に学ぶ」「歴史を展く」「文化と遊ぶ」という基本姿勢があることも、AI時代の今こそ見直すべきかもしれません。

■自分の凹を他人の凸が埋める社会

人間はロボットとは異なり、それぞれ凹凸があるという事実。

各自が完璧ではなく、

「いい加減」

であることで、この社会は成り立っている。

例えば、人間はなぜ、記憶違いを起こすのか?について考えてみると、サービス精神が旺盛で、話をちょっと盛る人は、言っているうちに、その人には、本当にそう記憶されてしまうので、他人から見たら嘘であっても、その人にとっては、それが現実となる。

記憶エラーのメカニズムを知ることは、他人を、そして、自分を理解することでもある。

その人は、記憶の変容を起こしやすいタイプなだけだと考えられる。

そう思えば、不要に人を嫌わなくてすむし、話を大げさにしがちな本人にとっても、自分の認知のクセを自覚することで、周囲とのコミュニケーションがしやすくなるだろう。

そもそも記憶エラーも多様である。

例えば、ネガティブな性格の人は、

「面倒見がいいね」

と言われても、

「おせっかいだと言われた」

と記憶に残す傾向があるし、逆に、

「嫌です!」

と本気で断っても、

「嫌です♥マークと言われた」

と勘違いして喜ぶ人もいる。

記憶エラーのない、パーフェクトな人はいない。

人によってエラーの仕方が違うだけである。

それを理解できれば、色んな人がいることを許容でき、人間関係も、少し楽になるのではないだろうか。

そう言えば、シリコンバレーで働くエンジニアたちには、発達障害の人、または、発達障害傾向が高い人が多いと言われるが、私たちが使っている数々の道具は、彼らが、イノベーションを起こして生み出してきたものであることも記憶に留めておきたい。

ここから導き出せる点としては、自分の凹を、他人の凸が埋めているという感覚、つまり、適材適所の感覚を持つことが大切だという点である。

お互いの認知の方法の違いを知ろうと努力することは、多様な価値を許容すること、自分も他者から許容されていると知ることにつながっていく。

この様に、人間というものは、自分のことを、自分の記憶だけで埋めてはいない。

自分にとって、憧れたいもので、埋めようとしてきただけなのである。

そうだとすれば、人間なんて、もともとフラジャイルなもので、そうだからこそ、こんな考えも成り立つはずだし、

・こわれやすいのなら、思い切ってこわしてみる。

・そうすることで、破れ目から、芽が出て、花が咲くかもしれない。

自分を、何か別のものによって構成したり、何か別のものに託したかったり、するわけなのだ。

「エントロピーのなかからのエピファニー」とは、そういう意味である。

<参考記事>
『人間というこわれやすい種』
著者:ルイス・トマス
翻訳:石館康平・石館宇夫

■16夜160冊目

2024年4月18日から、適宜、1夜10冊の本を選別して、その本達に肖り、倣うことで、知文(考えや事柄を他に知らせるための書面)を実践するための参考図書として、紹介させて頂きますね(^^)

みなさんにとっても、それぞれが恋い焦がれ、貪り、血肉とした夜があると思います。

どんな夜を持ち込んで、その中から、どんな夜を選んだのか。

そして、私達は、何に、肖り、倣おうととしているのか。

その様な稽古の稽古たる所以となり得る本に出会うことは、とても面白い夜を体験させてくれると、そう考えています。

さてと、今日は、どれを読もうかなんて。

武道や茶道の稽古のように装いを整えて。

振る舞いを変え。

居ずまいから見直して。

好きなことに没入する「読書の稽古」。

稽古の字義は、古に稽えること。

古典に還れという意味ではなくて、「古」そのものに学び、そのプロセスを習熟することを指す。

西平直著「世阿弥の稽古哲学」

自分と向き合う時間に浸る「ヒタ活」(^^)

さて、今宵のお稽古で、嗜む本のお品書きは・・・

【「嗜む」のすすめ】自分の凹を他人の凸が埋める社会に焦がれ本を嗜む

「グラバー魚譜200選」長崎大学/倉場富三郎(著)

「インスパイアード・シェイプス - Inspired Shapes」小山織(著)桑田瑞穂(写真)チャールス・ウィプル(訳)

「日本語源大辞典」前田富祺(編)

「山と川と海と サチとユウタの物語」森山京(著)太田大八(イラスト)

「BASTARD!! 完全版 全巻セット」萩原一至(著)

「新学社 近代浪漫派文庫 全42冊」

「平野区誌」平野区誌編集委員会(編)

「アフタヌーン四季賞CHRONICLE 1987-2000(春)」

「アフタヌーン四季賞CHRONICLE 1987-2000(夏)」

「アフタヌーン四季賞CHRONICLE 1987-2000(秋)」

「アフタヌーン四季賞CHRONICLE 1987-2000(冬)」

「井上嘉瑞と活版印刷 著述編」井上嘉瑞(著)

「井上嘉瑞と活版印刷 作品編」井上嘉瑞(著)

「かいじゅうだぁ!! 新装版」(ドキドキ しかけえほん)木村裕一(著)

■(参考記事)松岡正剛の千夜千冊

・才事記

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