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【制作秘話:tarilala】友達のリストカットの跡を見た。


2016.12.27 制作
この曲が出来たキッカケの出来事のはなし。

☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

当時、上京して間もなかった。

その子は
東京でできた戦友というか、友達だった。

その子は
バンドのボーカルをしてて、作詞作曲してて、
私よりも1歳か2歳、歳上の男の子だった。

社会人の傍ら音楽活動をしていて
人気も無いし世の中に見つかってすら無いし
趣味の範囲内のような音楽活動をしているだけだった。

だけど、
作詞の才能があって
作曲の才能があって
わたしはその子の作る音楽がぜんぶ大好きだった。

ほんとうに、センスの塊だった。

わたしの目に映るその子の人生は
とても充実した人生に見えてた。

その子のバンドのライブが大好きで
わたしは毎回必ず観に行った。

わたしがライブをする時には
同じように毎回必ず観に来てくれた。

作詞や作曲の話をたくさんした。

こんなにも才能のある子が一般人のままなのかと
いつもいつも驚いた。

わたしは、新しく曲ができる度に
その子に弾き語りの録音を送り、聴いてもらった。

いつも全く褒めてはくれなかった。

「ここの歌詞がしっくり来ない」
「ここのコードはこっちの方が弾きやすいよ」
「このメロディーは微妙だね」

いつもいつも指摘をされた。

でも、それがとても心地良かった。

わたしはその子のセンスや才能が
大好きだったから。

その子が新しく曲を作れば
データを送って聴かせてくれた。

「なんでこんな素敵な曲を作れるんだろう」

いつも思ってた。


その子も、わたしと同じ、
全て独学で音楽をしてた。

右も左も分からないまま
作詞作曲をしていた、ライブハウスで歌ってた
そんなわたしにとって
一種の希望の光だった。

一緒に色んな場所に行った。

夜の海の向こう側に光る
アサヒビールのオブジェを
「あれが金のうんこだよ」
と教えてくれた。

安い居酒屋チェーンに行っては
カピカピの色の悪い味のしないマグロを食べて
「美味しい!!」と喜んでた。

ビールを片手に、人気の無い夜の街を散歩した。

バスに揺られてカウントダウンライブに行った。

東京のこと、たくさん教えてくれた。


東京が寂しい場所だということも。


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わたしはきっと
何も知らなかった。

何も知ろうとしなかった。


ある日、その子の手の甲に
大きな傷を見た。

すごくお酒に酔っていて
荒ぶってた。

手首の内側に
沢山のリストカットの跡があったのを
その時初めて知った。


手の甲の大きな傷は
わたしに" 気付いてほしい "
と言わんばかりのものだった。

わたしはリストカットのことには触れなかった。
その後も結局、一度もリストカットについては
何も言わなかった。

その子は
リストカットのことを何か聞いてほしそうだったけど、
わたしはあえて何も触れなかった。

別に、腕に傷が有っても無くても
その子はその子のままだと思っていたから。

でも、リストカットをした事もなければ
しようと思った事すらない私にとって
リストカットと言うものは
只管に馴染みの無いものだった。

だからなのか、よく分からないけど、
その時から、心がグラグラと揺れていた。

その子のリストカットの跡を見るたびに
心が、揺れた。

可哀想ではない。
痛々しいとも思わない。

でも、その傷跡があることを
当たり前だとは思えなかったから。


気付いたら
曲が出来ていた。

その子の傷跡の為の曲。

ううん、わたしの為の曲。



誰も傷付けない優しいその子は
ずっと自分自身を傷付け続けてた。

戒めかのように。

優しくある為かのように。

自分を生きる為に。
自分自身を連れて生きていく為に。

どんな状況だとしても
生きていかなきゃいけない、

出来るだけ他人を傷付けずに、

出来るだけ他人に迷惑をかけないように、

そんなその子の
強さが刻まれていたように思う。

強さは、優しさで、
優しさは、脆さで、
脆さは、美しさで、

リストカットをすることも
その傷跡も含めて
その子なんだと思った。

その子にとってはリストカットが
一種の希望の光だったんだと思った。

思ったから、この曲を作った。

そう思った、わたしの為に。


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歌詞


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