エンドレスエイトーー「風の詩を聴け」
小説をかいて見た。
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夏日が終わりそうな予感が漂う都会を走る電車の窓から、赤い光が刺す。目が痛い赫い線で眼光から脳天に刺さる。僕の周囲には鉄柵から外界に幸せを望むような、気が狂いそうな魚のような目そして、腐臭が漂っている。
僕は腕時計を見た。ORISの短針は午後6時を指そうとしていた。
そのORISは僕が、今の広告代理店の入社した時、父が買って祝いにくれたものだった。
「社会人は時計はいいものをしろ。」
初見は外見で判断されるものだと彼の信条だった。電機メーカーで30年営業をこなし、定年前に退職。直後に喉頭がんが発覚し、あっという間に、旅だった。
たばこを好み、ハイライトを、1日2箱は嗜好していた。スーツにはタールに匂いが染み込んでいたが、汗の匂いはなぜかクリーニングに頻繁に出していたので、しないのが、彼の特徴だった。
ORISで時間を確認する度にコンマ0に近い時間が頭をよぎる。
株式会社Aに勤め出したのは、野村ゼミで知り合った、希美にいい格好をしたかったからだ。
彼女と寝たのは、大学を卒業する間近であった。12人所属して、7人のゼミ生では、明るく、1番人気があった。
彼女が僕を選んだのは、学棟から1キロほど離れたBキャンパスと言われる別棟でギターを練習していたのを、お気に召し、ある曲をリクエストしてきた。
B棟は、以前、学生運動が行われていた時代に「アジト」として、使われていた。「改革」と赤いペンキで古びているが、まだ読めるほどにかすんで存在している。
「「イエスタデイ」は弾けるの?」
「ビートルズ?」
「まずは、ビートルズから、始めるんでは音楽って」
希美はギターを音楽とひとくくりに呼ぶ。ピアノも管楽器、カラオケさえ音楽と呼ぶ。その手には疎い。
野村ゼミで、女性学生は生保か化粧品メーカーに勤めることが多い。
「卒業したら、どうするの?」
「アメリカでは、大学を卒業してから、希望する仕事を探すというのを、高志が言っていた。彼は、もうアリゾナの短期ビザを取ったと言っていたが」
「高志の話でなくあなたのこと。私は硬い仕事が好き」
「公務員?」
僕の通っていた大学は都内の有名私大ではあるが、キャリア職や官僚の卒業生は聞いたことない。
「公務員って思いつくところがあなたらしい。たとえば、テレビ局とか、制作とかだって、倒産しないんじゃない。給料もいいし、ゼミの先輩にもC局のディレクターがいるじゃん」
希美は大雑把で、くくる癖がある。ギターを音楽、硬い仕事は資本金が多い会社。
希美は関西から都内の大学に進みたいため、現役予備校に通い詰め、関西の大学は受験せず、第二志望であるこの大学を選んだ。野村ゼミはその中でも一番人気であった。なぜ人気なのかは、論文のテーマが、学部と離れていていも研究テーマとして良い。
そのため、研究色の強いイメージのゼミで、企業には、ウケがよい。先輩にも、成し遂げる力の社員が多いと評判がある。
希美は今では、二人とも阪神ファンの年子の男子小学生の親である。
Aに入社して、2年目に長男を身ごもった。付き合って5年。同棲していた。
電車を降り、少し早めの帰宅になる。
もうギターで「イエスタデイ」を弾くことはしばらくないことはとっくの昔に気づいた。僕が父が亡くなった年齢になってもコードすら覚えている自信もない。
1日に100回は確認する、ORISは知っているのかもしれない。
ノーベル賞の時期が近づくなぁー
別に小説を書いたわけでなく、もう直ぐ、ノーベル賞の話題にうごめく時期だなと思いつつ。
ふと、今年も文学賞「村上春樹」がノミネートされ、受賞されるのか、ハルキストがブックメーカーでわくわくする時期なのかなと。
ふとふと大学時代を思い出したので、村上春樹風に文章を書いてた。
僕は関西私大の文学部卒だが、学部の教員は現役の批評家や売れっ子左翼作家がいた。実利を尊ぶ学風だったため。
批評家の教授陣はすごく「村上春樹」を酷評していた。
わからないでもない。大した内容でもないので、ふくらまして、日常を特別に大げさに書いている。その才能はすごいが、The Beatlesや、ロック、酒、SEXを散りばめた、学生と大人の行き来を繰り返す冗長が基本。
好きな人は好きなんだろうけど。大学4回生の時、批評家でもある40代の現役バリバリの文学批評W教授と「春樹」についてバトルしていたのを立ち止まって見ていた。
学生が優っていた。それはそうである。W教授は「村上春樹」専門の批評家ではないので、仕事量の100分1を注いではいないと思う。学生は100分の90は村上春樹なので、討論というより、ケンカである。
「春樹の何がわかるの!」もう泣きながら訴えていた女子学生を見て、「風の詩を聴け」の文庫で映画を見たことのある当時の僕は、
「。。。。。。」であった。「She's Rain」や「台風クラブ」といったマイナー映画をすこし嗜んでいた僕は、「いつかは嗜好は変わるのに。。。。。。」とその女学生を見ていた。
いつからかのファンタジー
大学時代の批評家の教員陣、はよく「村上春樹はファンタジー」だと、言っていた。直木賞とか芥川賞には相応しくなかったのだろうね。直木賞取った教授がいたので尚更。しかし今では、ファンタジーもオタク文化も立派になった。「なろう系」とか「異世界転生」ものの方が、スケールは大きいのかも。
春樹がリリックで比喩する人がいるが「涼宮ハルキの憂鬱」の方がエンドレスエイトなのかもしれない。
あの女学生は今は心を射っている作品はなんだろう?嗜好もきっと変わっているんだろうと。20年くらい10月過ぎると思い出す。
10月は僕の誕生月で今年は4回目の年男だと思うとぞっとする。
以上