【チューバ】一生遅いと言われ続けるか
おはようございます。
チューバ奏者、指揮者、金管バンド専門家の河野一之です。
今日はチューバ奏者、指揮者、金管バンドの専門家として多角的に書いてみる。
チューバ
金管楽器の中でも最大の楽器で、チューバの種類にもよるが長いものでは全長9m、頑丈なハードケースにいれると26kgにもなる巨大な楽器だ。
この楽器は大きく太く、管が長いおかげで大きな音や他のトランペットなどの金管楽器に比べて低い音が出る。アンサンブルの低音部を担当するためにワーグナーやベルリオーズなどの作曲家や、当時の音楽に必要ということで発明された。
そんなチューバ、僕もある時までひたすら指揮の先生やご指導くださる先生方に言われてきた言葉がある。それが
・チューバ遅い
・チューバ聞こえない
・チューバもこもこしていて何を吹いているのかわからない
これだ。
遅れる。。。
アンサンブルでチューバは低音域を担当し、バンドの一番低音域で和音の根底を担当することが多い。こうすることでバランスが良くなりバンドの音色が整い、さらに音量も大きく聞こえるように鳴る。さらに伴奏を担当することが多くてみなさんが一番想像しやすい
ブンブンブンブン、ボンボンボンボン
などといったビートを刻みテンポと和音を作る作業も多い。
この役割の際にかなりの確率で
遅い!
と言われるのだ。つまり僕たちチューバ奏者の音が指揮者のいる地点ですでに遅れて聞こえているのだ。そこで遅れているということは広い演奏会場、つまりホールでは倍以上遅く聞こえていることだろう。
これは多くの場合で言われているのではないか?
音が小さい。。。
繰り返しになるがアンサンブルの中で最低音域を担当するということはソプラノ・アルト・テナー・ベースの中で一番下のベースを担当するということだ。交響的な美しいバランスを保つには上の写真のような三角形のバランスが必要と良く言われる。
三角形の上からソプラノ、その下にアルトと続きテナー、そして底辺にベースだ。多くのアンサンブルではこの音量バランスで演奏されることを求められる。(ジャンルや曲、バンドによってもちろん変わる、今は多数派の話)
なので一番底辺のベースのパート、つまりここで言えばチューバが最大音量で吹かなければその上のテナー、アルト、ソプラノはそのチューバが出す音量に比例して小さくなってしまう。逆にチューバが伸び伸びと雄大に響く音量で演奏をすれば、そのバランスの上で演奏する他三声も大きく演奏できるのだ。
しかし、どのアンサンブルでも多くの場合旋律を担当する高音楽器(ソプラノやアルト声部)の方が人数が多い(オケでもヴァイオリンとコントラバスならヴァイオリンの方が倍以上多いでしょ?)。
なので必然的に楽器が鳴らせていないと適正なチューバの本数がいたとしても
もっとチューバ吹いて!
と言われることになる。
何をやっているのかわからない。。。
管が長く、太く大きいチューバは地道な特訓を続けないと高音域の楽器に比べて細かい音符などが聞こえづらい。
トンネルの中で話すと「ウワーンウワーン」と声が篭ったりうねるのと同じだ。なので細かい音符が2個以上繋がると言われるのが
・モコモコしていて何をしているのかわからない
・もっとはっきり吹いて
・音程が聞こえるように、音符の形(長さ)が見えるように吹いて
じゃあどうする?
これらを解決する”方法”は世の中に溢れている。
しかし、このような指示をされ続けるというのには理由があるはずだ。
僕もさっき”ある時まで”良く言われていたという風に書いたけれども、そのある時に何を変えたのかが今日の本題。
それは
意識を変えた。
である。
いつも
遅れる、小さい、はっきり聞こえない
となるのであれば
必要な速さで、大きく、はっきり吹くように意識を変える
これだけだ。このように日々の練習から意識を変えたし、そうするためにはどうしたら良いのか調べて練習をした。
すると研究の過程でやり過ぎて、
走ってる(速すぎる)、大きすぎる
とまで言われるようになった。ここまでくれば後は曲や一緒に演奏するアンサンブルに合わせて自分の中の演奏の幅を上げ下げすれば良い。
でも遅れる、小さい、はっきり聞こえない演奏能力の達人のままでいても必要な速さで、大きく、はっきり聞こえるように吹く能力は得られない。
意識を変えて、これまでとは違う練習や研究が必ず、絶対に必要だ。
でも、みんなやらない
日々の習慣を変えるのってとても難しいし根気がいる。
これまで毎日7時に起きていたものを自分の意思だけで毎朝5時おきに変えるのもこれまで何年も7時に起きていた習慣を2時間ずらすのは大変だ。
喫煙の習慣も止めるのは大変だし、健康に良いからとジョギングの習慣をつけるまでも大変だ。
なのでチューバでいくら毎度、遅い、小さい、はっきり聞こえないと言われ続けても
自分自身が本当に変わりたい!!
と思えるまで絶対に意識なんて変わらないし、ましてや習慣になんかならない。そうして多くの人はやらない。
今は良い悪いの話をしているのではなく、ここで意識を変えたり習慣にできた時のメリットを二つ書く。
まず一つ目は言わずもがな演奏のレベルが上がり次のステップへ上がれる。
そして二つ目は、多くの場合誰もそう簡単に意識を変えたり、習慣づけるまでやらないので
ちょっとでもやれば多くの人に差をつけることができる
だ。
自分も烏合の衆に成るか、一歩進んで自分オリジナルを作っていくかは自分自身しか決められない。
まとめ
楽器によって様々な傾向があるはずだ。
例えば日本で言えば
・コルネットならヴィブラートの練習が仕切れていない、音色の研究、高い音が苦手な人がやるパートナだけではない2nd, 3rd Cor.、ミュートを付け外しする練習やミュートをしての実際の練習が足りていない。ブレスを分ける相談も足りず旋律が切れてしまう、低音域まで練習しない。
・テナーホーンやバリトンホーンならそもそも音量が足りていない、音程が取れていない。楽器の癖に負けている。低音域まで練習しない。
etc
などそれぞれの楽器に様々な癖や習慣がある。
これらを意識し新しい世界を見ようと変えていくのか、そうではなく結果的に今のままで良いと現状維持を行うのかは自分しか決められない。
( 繰り返しになるがどちらが良いや悪いという話ではなく、選択肢の話。)
生涯「遅い!」と言われ、「小さい、もっと吹いて!」、「はっきり聞こえない!」と言われ続けるか、選ぶのは自分である。
自分の音楽、ぜひ作ってみてほしい。どう聞こえていたら幸せなのか。
単純に変えていく過程は楽しいよ。
Thank you
Kazz