都築郷夫(つゞき·くにを)の詩と歌と句 act 8 by Tsudsuki, Kunio 附・詩人の為のワードローブ集
ユーグはふだんよりずっと悲しい気持ちでノートル·ダムの外に出た。(G.ローデンバック『死都ブリュージュ』)
【詩①】
聖人はイナダとマグロの区別がつかない
あ、何? うちの食卓の話よ
聖人は然し白身と赤身の別
ぐらゐはつけやうと思ふ
そして彼の聖性は失はれるか
絵の具をべつたり付けられるか
兎に角スポイルされるのだ。
聖人とは僕だ そんな間抜けだとは
君も考へつかなかつたらう?
だが世間知は
確実に詩を損なふ
よく覚えておいて欲しい、
「哲」は漂ふ雲の如し
白身と赤身ぢやないんだと。
試しに稲垣足穂に..
いや、やめたやめた
僕は僕でゐたいだけなんだよ。
©都築郷夫
【雑詠①】
猛暑日のやもり未だに子供なり
(©都築郷夫)俳句 kigo
シャツ乾く迄にいろいろ出来るざう
(©都築郷夫)川柳 senryu
※キャンプ場にて?
かう日々の旱つゞきはうんざりで井月夏の句少なさ思ふ
(©都築郷夫)短歌 tanka
水のある所に曳き寄せらる或る日
(©都築郷夫)川柳 senryu
ぱんぱんと柏手めく掌(て)歌などは早々切りあげキムチだビールだ
(©都築郷夫)短歌 tanka
溢れ出る残暑光にはタイ黑し
(©都築郷夫)俳句 kigo
【詩②】
ツイッターで、JET BOYSのオノチン
に リプライ貰つた
「オノチンさんは本物なのに、ホンモノマーク
つかないんですか?」つて
己は問うたんだよね、
だつて世界的なアーティストぢやん。
そしたら ホンモノマーク(正確には
「本人」マークだらうけど)
欲しいどー!!つて
頭の悪い不良(この場合褒め言葉)みたいにさ、
答へてくれて
オノチンはほんとグッドヴァイブな
いゝをぢさんだよ!
彼のステージ観ると
みんな再確認するんだよなー
パンクロックは
やつぱりいゝなつてさ。
みんな頭の悪い不良に還るんだねー
己もさうだよ パンクロックが大好きだ!!
©都築郷夫
巻頭の引用、ジョルジュ·ローデンバック『死都ブリュージュ』(窪田般彌訳 / 岩波文庫赤)より。實を云うと今まさに讀んでゐる最中で、まだ讀後のイメージ(この本の中心的イメージ)から抽出した一行ではないんですが、←正直者。たぶんこれやろな、つーとこを私はチクリ、とつつ突いてみたのです。愛妻を若くして亡くした男が目指し、自らを瞞着するやうに棲み付いた町 - それがブリュージュ(ブリュッセル)。この町に吹く風は哀しみの風(おつと詩人の地が)。よーするに哀しみたがりの人、なんですよ主人公は。私はさう思ひ、この一行に「賭けた」。だから極私的には既に讀みを終はらせてゐる訳で - でも不義理は厭だから最後までお付き合ひしてやらう、そんな讀書(をしたことがあるかい?)。さう云ふ一行なのですよ。果たして当たつてゐるや否や。文章壊れてるなー。都築。
【雑詠②】
わたくしこと都築郷夫に纏わる「飢ゑ」何食うたとて癒されるものか
(©都築郷夫)短歌 tanka
工場氏の画観てはつと息嚥む人の集まりなのだこの界隈は
(©都築郷夫)短歌 tanka
「発秋(はつあき)」と名前を貰ふ赤ちやんか
(©都築郷夫)俳句 kigo
桃食ふにましら満足忘るゝぞ
(©都築郷夫)俳句 kigo
遠花火誰ぞ撃たれた音すれば
(©都築郷夫)俳句 kigo
※コロナ禍で花火大会は軒並み中止ですね。
もう二時も過ぎるわが詩も眠いつて
(©都築郷夫)川柳 senryu
【詩③】
所詮カネぢやん
昔付き合つてた女の子、
口癖なのだ。
証券会社で事務やつてた。
何でもカネ、カネ、カネ
だろ?
ライドンさんは
記者会見の時は決まつて
さう毒づく。
これは、彼には
秘められたユートピスト傾向が
あつて、
なんて言つたら
唾かけられさうだが。
「正直お金あると助かるよ」 -
福祉作業所のかつての
仲間がさう云ふ。
まあ認めざるを得ない、
特に反論もないし。
特に反論は
ない、このトシになつて
初めてさう打ち明けるのである。
己は
バカだ。今でも
でも、つて 心の奥では
火を焚いてゐる。
このくそ暑いさなか。
©都築郷夫
【後記】
あゝもうあとがき。早いもんで八冊めのnoteである。今回は漢詩はお休み。余りにも出鱈目なので、ちよつと鬱入つてゐるこゝ一二日ではでつち上げるの無理つぽい。まあいづれつまびらかにせにやならんが、私は健常人ではない。こんな体調の時『死都~』讀んでゐる。良くはないだらう。つー事で脱稿させて貰ひます。なんかお茶濁し感があるのは氣のせい、としときませう。それでは!都築拝。
【オマケ】
誰にでも優しき詩人ブロックし己は好んで悪路迷ひ入る
(©都築郷夫)短歌 tanka
ブコウスキーぢやないけど、勝手に生きろ!つて事だあよ。
RIP 山崎正和。ぢやまた。
【オマケii】
針ネズミ己れの針を嘆きをり
(©都築郷夫)川柳 senryu
ちやんちやん。
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