【読書メモ】リーマンの牢獄 齋藤栄功著
2008年に発覚した、病院再生ビジネスを手がけていたアスクレピオスなる法人を舞台に、371億円にものぼる巨額詐欺事件について、主犯の一人である齋藤栄氏により、何が行われていたかを明らかにした手記となる。
私はこの著者がYouTube動画で顔出しをしてこの事件の概要について説明されたことに興味を持ち、本書を手に取った(動画は下記を参照)。
https://youtu.be/ltjR1FBpgro?si=_mvBFghiRcsGk6zu
さて、本書を読了し、2点コメントを残したい。
一つが事件の概要と共犯者の具体的な詐欺手口について、もう一つがどうすればこの詐欺を防げたかについてとなる。下記の要点メモは、事件の詳細を知っていることを前提に作成したので、まずはYouTubeの動画だけでも倍速で視聴することをオススメ。
(メモ1)共犯者の具体的な詐欺手口
著者は裁判所の認定事項には承服していないので、ここは割り引いて捉える必要があり、本書で記載された内容に留意が必要だが、共犯者とされる某大手商社の契約社員が、この詐欺事件の根幹をなしたように思える。この某商社の契約社員が、同社の印鑑証明や納品請求受領証の偽造、自身が勤める商社の会議室で替え玉の部長を投資家と会わせたエピソードが、この詐欺をうまく遂行できたファクターだろう。たしかに、ここまで準備されてしまうと、投資家は騙されてしまうことには納得してしまった。
ちなみに、類似した手口で、某携帯大手会社の元部長による詐欺事件を彷彿とさせられた。この詐欺事件でも舞台装置として、実際に某携帯大手本社の会議室が投資家との面談で使われていたのだ。大手会社の現役社員で、そいつが勤務する本社にある瀟洒(しょうしゃ)な会議室に案内されただけでは、信用してはならないと戒められる。
(メモ2)どうすれば防げたか?
担当直入に防御方法を書けば、今回の事件であれば、内容証明郵便を某商社の財務部門なり法務部門へ展開していればよかったのだ。
著者は、当時小さな証券会社で投資銀行業務を目論んでおり、この某大手商社の看板が使える投資チャンスを逃したくないと考え、内容証明郵便の送付先を共犯者(と後になる担当者)の受け取り限りとしてしまったのだ。もし、共犯者が勤める会社の、財務部門なり法務部門へ内容証明郵便を展開していれば、この詐欺は発覚できたのであろう。この記述は、人は大きなニンジンを前に見たいものしか見えなくなってしまうこと。そして、ファンド投資は実体の確認が大事であることを伺わせる。
最後に、読み物として感想を述べれば、著者の筆致が読者へ読ませるものではなく、それでいて主張したいことを一冊の本に無理やりまとめてしまったためか、かなり冗長で読みづらかったとだけ言わせてもらう。あと、不倫についての記載はウザかった。