⚾たたき上げの底力-泥臭く、諦めない気持ち-
大学野球は、野球エリートの集まりだ。
私にはそんな先入観がありました。甲子園出場はおろか、優勝校から進学した選手も珍しくなく、強豪校で主将をつとめるような選手も当たり前のようにいます(もちろん、住んでいる地域や所属する連盟で事情は異なると思います)。
私は首都大学リーグを十年ほど観戦しています。様々な選手を見てきましたが『野球エリート』ばかりではないという現実を知りました。確かに凄いやつだらけではありますが、その中でも泥臭く奮闘する一般生(※ここでは推薦入学ではなく、通常の受験で入学した選手を指します)が存在します。
とはいえ一定、素晴らしい技術をもった選手が集まるのは間違いありません。近年、首都大学リーグは首都劇場と呼ばれ、その名の通りハイレベルな戦いを繰り広げています。どの試合も緊迫する内容で、最後まで行方がわかりません。優勝校はもちろん、最下位さえも予想できない。そんなリーグです。その中で活躍をするのは、至難の業です。
凄いやつだらけの中で、頑張った人がチャンスを掴む。
ある選手をきっかけに、そのように考えるようになりました。
首都大学リーグに所属する日本体育大学は、いわずとしれた強豪チームです。冒頭書いたように、野球エリートの集まりです。しかし、その中には一般生も当然ながら在籍しています。今秋、一般生の星とも呼べる選手が頭角をあらわしています。松本佳高選手(初芝立命館④)です。
四年秋にベンチ入りを果たし、ここ数試合はスタメンで起用をされています。それだけではなく、要所で適時打を放つなど、チームの勝利に貢献しています。凄いやつを押しのけて、チャンスを掴みとったのです。
私が松本選手の存在に気が付いたのは、彼が大学三年生のときでした。もともと彼の先輩である三野原愛望選手(現:KMGホールディングス)を応援していて、その三野原選手が最も可愛がっていた後輩だったのです。
そんなきっかけから松本選手を気にするようになっていたのですが、当初はAチーム(いわゆるレギュラークラス)ではなく、Bチームに身を置いていました。驚いたのは、彼は推薦入学ではなく『一般入学』で野球部の門を叩いたのです。
日体大は、学生コーチとマネージャーを除いても200人以上の部員がいます。人数もさることながら、素晴らしい経歴をもった選手がたくさんいます。その実績にすがることなく、血のにじむような努力をする人もいます。凄いやつだって頑張っているのだから、かなりの力を注がなければならない。レギュラーの座を掴むことの難しさがわかります。
今年も何度か日体大のグラウンドに訪れました。松本選手に声をかけても「Bチームです」と一蹴されてしまい、なかなか目にすることはありませんでした。晴れてAチームに昇格し、オープン戦で活躍をすることがあっても、運悪く私が行かない日ばかりです。そんなことから、こんな皮肉までいわれるようになりました。
どんなジンクスだよと思いますが、概ね事実なのが辛いところです。秋季リーグ戦の後半は全て観戦しているので、許してほしいと思っています。
日体大には本間巧真選手(東海大相模③)、中妻翔選手(常総学院③)や南大輔選手(花咲徳栄②)など、とてつもないスキルをもった外野手が多数存在します。出身校はいわずもがな甲子園常連で、何度も書くように、正真正銘の『野球エリート』です。それでも、松本選手は泥臭くここまでやってきました。
ネームバリューが全てではないことは、もちろん承知の上です。でも事実、周りは凄いやつだらけなのです。私だったら、心が折れてしまうかもしれません。どうせとか、仕方ないと言い訳をするかもしれません。彼は、それをしなかった。諦めずに突き進んできたのです。
自分、今日もBなんすよ。
そうやってグラウンドで苦笑いしていたのが嘘のようです。スタメンで名前を呼ばれるたびに、私はいつも嬉しく思っています。
そんな松本選手が残した、印象的な投稿を紹介します。
大学生はとても楽しい時期です。特に日体大は繁華街へのアクセスも抜群なところから、たくさんの誘惑があります。それでも彼は、信念をもって歩んできました。こんなことをいっていたこともあります。
その言葉通り、この秋は素晴らしい活躍を見せています。まだ、関東大会も続きます。ラストイヤー、このまま駆け抜け全国の扉を開くことを、私は切に願っています。
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どの選手にも色々な物語があります。誰一人として、順調にすすんできた選手はいないのではないかと思います。入ってしまえば推薦だろうと一般だろうと関係ありません。もちろん実績や経歴は変えられないので、スタートラインが違うことは否めません。しかし一番大切なのは、そこでどう頑張るかなのだと思います。
もちろん、真面目にやってきても報われるとは限りません。それでも、諦めてしまえば未来は閉ざされてしまいます。頑張ったって結果がついてくるわけがないのですから、頑張らなかったらもっと成果はあらわれません。
野球をみるたび、選手をみるたび、多くのことを考えさせられます。それと同時に、色々な側面をみられることに幸せも感じます。私も頑張ろう、もっと努力しようと励みにもなります。いやでも残り僅か。私も一生懸命応援します。頑張れ、日体大。頑張れ、松本選手。
いただいたサポートは野球の遠征費、カメラの維持費などに活用をさせていただきます。何を残せるか、私に何ができるかまだまだ模索中ですが、よろしくお願いします。