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辛さと安堵と〜小川糸 著「小鳥とリムジン」

東野圭吾さんの作品を読み終え、引き続き小川糸さんの新刊を読みました。

主人公の小鳥のささやかな楽しみは、仕事の帰り道に灯りのともったお弁当屋さんから漂うおいしそうなにおいをかぐこと。人と接することが得意ではない小鳥は、心惹かれつつも長らくお店のドアを開けられずにいた。十年ほど前、家族に恵まれず、生きる術も住む場所もなかった18歳の小鳥に、病を得た自身の介護を仕事として依頼してきたのは、小鳥の父親だというコジマさんだった。病によって衰え、コミュニケーションが難しくなっていくのと反比例するように、少しずつ心が通いあうようにもなっていたが、ある日出勤すると、コジマさんは眠るように亡くなっていた。その帰り、小鳥は初めてお弁当屋さんのドアを開ける――
傷口に、おいしいものがしみていく苦しい環境にあり、人を信頼することをあきらめ、自分の人生すらもあきらめていた主人公が、かけがえのない人たちと出逢うことで自らの心と体を取り戻していく。

Amazon内容紹介より

『食堂かたつむり』では「食べることは、生きること」『ライオンのおやつ』では「死にむかうことは、生きること」そして、今回小川糸さんが描き出す3つめの「生」の物語は、「愛することは、生きること」です。

前半の小鳥の生い立ちからコジマさんと出会い、コジマさんとの永遠の別れまでは、簡単には言い尽くせない辛く、これほどの苦悩を幼い頃から背負う人生をよく耐えてきたと、胸を締め付けられながらページをめくりました。

後半に入ってニオイに釣られて入った弁当屋さんで出会った、弁当屋の主人理夢人(リムジン)がこれまで小鳥が味わったことのない人間らしい愛情を与えてくれたことは、生きていけばいつか幸せを掴むことができるかもしれないと希望を持たせてくれたことに感謝しつつ読み終えました。

本物のオルガズムは、人間しか生み出すことができない。そこから生まれるのは、愛であり、調和なんだ。

本文p129抜粋

最近では若い人の安易なセックスや望まぬ妊娠が問題になることが多くなっています。そういう若い人たちに送りたい言葉ですね。

更に、辛い出会いと思っていた美船との出会いも、彼女が産んだ息子と巡り合って小鳥はこう語ります。

美船と出会えたことも、理夢人と会えたことも、大きくなった美船の息子に会えたことも、最高に最高にかけがえのないギフトだ。

本文p243

これから生まれてくる人が愛に包まれて生きてくれること、そしてお互いを尊重する愛を知ってくれることを願ってやみません。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。連日本の感想になりました。週末も本を読んでいきたいと思います。

#シニア #田舎暮らし #今日のつぶやき #小川糸 #小鳥とリムジン #ポプラ社 #読書感想文

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