革命機 KD-A5 ビクターカセットデッキ
KD-A5いうカセットデッキがビクターより1978年に発売されました。
丁度日本初のメタルカセットテープが発売されたタイミングとほぼ同じ
です。
翌年になると国内テープメーカーはメタルテープの量産を始め市場に
投入します。
しかし1979年初めころはメタルテープ対応カセットデッキはまだ
数台だけに留まっていました。
そんな状況下でこのKD-A5は1978年のメタルテープ発売に合わせて
年末に登場した「先手必勝戦略」で大成功を収めます。
価格は59800円。
この価格はカセットデッキにおいては普及価格帯にあたります。
中級機の下のランクです。
当時はこの価格帯のモデルは操作ボタンはピアノレバー式で
指先でレバーをガチャンと押し込むメカニカルなタイプしか
ありませんでした。
それをこのKD-A5は中級機以降標準装備のロジックコントロールを
採用したのです。
これはこの価格帯では初号機だったと記憶しています。
当時の車業界で置き換えると
オプションだったパワーステアリングが価格据え置きで標準装備になった。
というお得感です。
1979年ではメタルテープ対応機は少なく既存の59800円価格帯のライバル機に大きく水をあけリードすることになります。
ライバル他社がメタル対応機を市場投入するころにはKD-A5はかなりの台数販売をこなしたと思われます。
ヤフオクでは未だに動作品がかなりの台数が取引されているのが
分かります。
後述しますが、この理由は有ることが影響しているのかもしれません。
僕は当時ビクター特有のデザインが好きではありませんでした。
カセットホルダーが右、レベルメーターが左、録音レベルボリュームが
センターという作りに違和感がありましたね。
どうしても好きになれなかった。
その後普及価格帯でのロジックコントロール標準仕様はこのKD-A5の登場がきっかけではないかと思っています。
先にも書きましたがデザインにときめかないので長い間触れずにいたのですが、デッキをコレクションしているうちにカセットデッキ市場に大きな影響を与えた記念すべきKD-A5を一度触ってみたくなり数年前にゲットして
しまいました。
コンデンサー交換や一部分解清掃などお決まりのメンテナンスを施し
復活させました。
筐体はかなり頑丈にできていてビクターはかなりしっかり設計したのだなと
感じられます。
音質はかなり元気のいいダイナミック感あふれるサウンドです。
ロックやジャズなどに向いてるかなと思います。
再生回路はまぁ価格相応なので音の解像度はあまり高くないと感じますが、
主要部のコンデンサーをオーディオ用に交換するなどしてそこそこの
改善は感じられました。
それでも10年後の同価格帯機には音質的には及びませんが。
個人的に特筆すべき拘りがこのKD-A5にはあると感じています。
この機能は音質に関係するわけでもなく無いからと言ってカセットデッキとしての評価が下がるわけでもありません。
無ければ無いで全く問題ない。
デッキとしての構成に必要のないものです。
それはカセットテープ検出機能です。
ホルダー内にテープが装填されているかどうかを判断する機能です。
通電中にテープが装填されると突起が押されスイッチが入り
キャプスタンが回ります。
通常は電源スイッチをオンにするとテープの有無に関係なく自然に
キャプスタンが回るのが一般的なデッキの仕様です。
僕が所有している他のデッキも全て電源オンと同時にキャプスタンが
回ります。
通電中は回りっぱなしになります。
これが普通です。
しかしごく一部の中級機以降機で恐らくこのカセット検出機能が付いているタイプが存在したと記憶しています。
この機能の意味はキャプスタンモーターの寿命を延ばすことが目的です。
通常は再生していなくてもモーターは常時回りっぱなしになります。
この為モーターハウジング内に回転制御回路を持つタイプは
ハウジング内部温度が上がり制御回路のパーツが故障しモーター制御が
出来なくなります。
カセットを取り出していれば電源がオンであってもキャプスタンモーターは止まったままですから温度上昇を抑えることが出来ます。
そして消費電力も抑えることが出来るので電源回路への負担も減らすことが出来ます。
こういう拘り機能を普及価格帯に取り入れたことは非常に高評価に
値します。
現在の言葉で言い換えると某CMのような「お値段以上」のクォリティ
だったと言えます。
59800円で中級機の性能を取り入れたKD-A5はまさにカセットデッキに
革命を起こしたと僕は感じています。
当時KD-A5のプロジェクトに関わった関係者などの話を聞いてみたいと
思いますね。
どんな戦略で開発したか興味があります。
そんな当時を思い浮かべながらメンテナンスをして
永く使っていこうと思います。
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