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例えそれが1杯であったとしても。

案の定で緊急事態宣言は+1ヵ月。3/7までとなってしまった。
しかし、花見時季はまた抑えたいという思惑があるのは想像に難くない。ならば「4月中旬くらいまでこのまま」と言われた方が肚を括りやすい。…でもそこまで延ばしたとなるとGWも抑えたいだろうからその終わりまでという方がいいのかもしれない。
まあそうなったらなったで補償の問題が出てくる。”延ばすならその分の補償を”という声が上がるのは言わずもがな。
補償と言ったって無尽蔵ではない。打ち出の小槌でもあるなら別だけどそうじゃないから考えなくてはならない。故に期間を小出しにしたいのもある程度の理解はする。が、そろそろこちらも”補償をしてくれればそれで良い”では済まなくなってくるのだ。いや、この現状でさえそうなっている。少なくとも僕は。

小出しにされるとモチベーションがキツい。ゴールが見えたと思ったらさらに先に延ばされるわけだ。これはなによりココロを折ってくれる。
僕はコミュニケーションをそんな積極的に行うタイプではない。
それでもほぼ人と会わない、店も開けないで過ごすのはそれなりにメンタルをやられる。

先日、「予約を入れるならそこそこ飲まないと申し訳なくて軽い気持ちで入れられない」とお話しされてくれた方もある。そのお気遣いはとてもありがたい。
けれど、1杯だけ飲むためでもまったく構わないです。そもそもBARとはそういう場所ではなかったか。まあこれは予約制を取った僕の判断ミスかも知れないな。あるいは”予約は普通に入ってくる”と思っていた慢心かも知れない。

いまこの状況において何が辛いかと言えばカウンターに立てない、カクテルが作れないのが辛いのだ。
体に不調をきたして立てないというのなら諦めもつくけど、そうではない。やれるのにやれない。これがとてももどかしく辛い。
もちろん技術維持なり研究なりで作るというのも悪いものじゃない。けれど飲んでくれるゲストに向けて作るものとそうでないものというのは明らかな違いがある。気がする。
どこか緊張感に欠けている気がしてならないのだ。
「具体的にそれはどこか?」と問われても、明確に「ここ!」とは言えない。或いは自分のメンタル的な話だけで実際には変わりないのかも知れないけど、これはもう自身の感覚なのでなんとも言えない。

いま、予約が入らなければ開けないというBARは少なからずあると思う。
前述のように当店もそのスタンスだ。
世の流れをみて予約制にした結果、やるつもりはあれどもほぼ休業状態のところもまた少なくないだろう。
だからアナタが1杯だけでも飲みたいと思ったら−馴染みでも行ってみたかったBARでも−、予約を入れて足を向けていただけたらと思う。
きっとそこのバーテンダーはいつも以上に楽しそうに作るんじゃないだろうか。
そして、やたらと手の込んだカクテルをオーダーしても嫌な顔ひとつせずに作るんじゃないだろうか(まあ平時に嫌な顔していたのならそれはそれで問題だが)。
或いはその1杯で会話が弾み、うっかりグラスを重ねる気になってくれたらそのバーテンダーとしては望外の喜びだと思う(書くまでもなく、要請時間内でのお話)。

僕も基本的にはそう、作れるというシンプルな喜びを感じる。が、「さすがにこれは…」とお断りするものがある。
プースカクテル(リキュールやスピリッツ等の糖分比重差を利用して層を重ねていくもの)だ。
これについては丁重にお断りしているので悪しからず。他は喜んでお作りします。きっと。

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BAR illud
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