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(250303)10番線は最終電車 かけだす人にまぎれ 息をきらせばとび乗れたのに もうあきらめてたの

そして時は動き出す。

2025年2月15日(土)
散髪をした。僕は15年近く同じ美容師さんに髪を切ってもらっていて、彼は元いた美容室内で出世し独立し分店を出し別事業まで始めてこの15年の歳月の電車にきちんと乗って生きているように感じるが、僕は燻っている。何年か前に彼の美容室に在籍していたアシスタントの女の子の話になった。その子はワーホリで海外に行き、そのままその国に移住し今は永住権を取ろうという所であるそうだ。僕らもいつかは海外移住したいねという話になり僕が『美容師なら日本で引退してから移住しても、向こうでやっていけるじゃないですか』という旨の話をしたが、そんなシンプルなものではないようだ。
いま既に切れる人数が減っている、と言われた。彼は40代だが、もう20代は切りたくないと言う。もともと歳が上にも下にも離れすぎた客は切りたくなくて、彼は独立してからは同世代の客ばかり切ってきたそうだ。腕は確かだし彼も客も同じように歳を取るからリピーターで食べていける。感性的なところだけど、どうしても20代は20代が切る、50代は50代が切るというのが一番うまくいくそうだ。理論ではなく、美容師として20年近くやってたどり着いた感性面の結論で、そこを無視してやっていくのは仕事の哲学に反するという。だから、おじいちゃんになってしまえばおじいちゃんかおばあちゃんしか切れないニッチな美容室を開業するしかないから無理だと。
美容師は技術の世界だと思っていたけど、身体的な賞味期限より感性的な部分の賞味期限の方がジワジワと訪れていくというのが面白かった。よく考えれば、強く顕在化していないだけで、事務仕事でも全然ある話だなとも思った。
散髪が終わり友達と新宿のサンマルクレストランで飯を食った。ずっと行ってみたかった店で、焼きたてのパンがどんどん出てきて最高だった。友達は引き抜きの転職話を受けようとしているらしくその話をだいぶ長い間していたが、最終的な結論は転職先で上手くいかなければまた辞めればいいし!というもので、色んな価値観が現代にアップデートされていることを感じた。

2025年2月24日(月)
また蟹ブックスに行った。phaさんが店番をしている日だというので友達と行ったが、緊張してあまりきちんと話せなかった。かつてアイドルが好きだった頃も接触系のイベントで当日急激にコミュ障になったりしていたことを思い出したが、(もともとそもそもコミュ障だというのは置いておいても)アイドルとか作家とか、現実で自分が本来接していない、何か媒体を挟んで人生が交わっている他人と現実で接するべきではないという謎の観念が自分の中にあるので本人を目の前にすると頭が処理落ちするという現象がたぶんある。高円寺のカリーショップくじらというお店でカレーを食べる。美味しかった。高円寺が好きすぎて高円寺の民になりたいけど、高円寺の素養がないのできっと選考落ちすると思う。好きなだけでは何もうまくいかない。
SNSで定期的に小バズするなんかゆるキャラみたいのに優しいことを言わせたりするタイプの絵の投稿(伝わる!?)を複数挙げながら、この発言は優しさだけどこの発言はただの甘やかしだと思う…みたいな仕分けを友達がしており、甘やかしと優しくすることを私生活でこんなにも区別しているなんて立派な人間だなと感心してしまう。僕は甘やかしのことも優しさだと思っている節がかなりあるしその違いを考えたこともなかった。強みが違うようなので昨今はTPOに応じて複数のAIを使い分けているが、どのAIでも良さそうな事柄はGeminiが最も優しく答えてくれるのでGeminiによく質問をする。Geminiは僕に優しいのか、甘やかしているのか。AIにスポイルされることについて思考するなんて、まるで森博嗣の小説の世界だ。

2025年2月25日(火)
Hearts2Heartsがデビューした。日本が祝日で浮かれている中で韓国のコンテンツがどちゃどちゃと動いているのを見るとそういえば違う国のことなんだよなぁと思う。韓国コンテンツを見過ぎて境目が曖昧になりつつある。感想は人それぞれだしこのグループをNewJeansから始まるナチュラル系のムーブメントの延長線上にあるものだと感じるのもひとつだと思うが、なんだか僕は、SMは別のところで大きな流れを断ち切ろうとしているのではないかなと感じた。Hearts2Heartsは何をどう見ても『団体』を前面に出している。2NE1、BLACKPINKの流れを汲みITZY、aespaで最高潮に達した『個』のグループの時代にひとつ節目をつけてやろうみたいな意気込みを感じた。デビュー前からメンバーの顔の見分けがつかない…みたいな評価があったのも今考えればそういうコンセプトのグループだからなんじゃないかな。
関係ないけれど先週カムバしたMADEINの"Love, Afraid"を死ぬほど聞いている。僕が好きだった頃のK-POPがここにある…と感涙で溺れていたがカバー曲だったのか。パキッとしたわかりやすい曲が身体に合っている。平成に生まれて平成に育った人間なんだなとこういうところでつくづく感じる。

2025年2月28日(木)
今月からまたマトモに働き始めた。いろいろ環境が変わって、通勤する場所も変わってしまい生まれてはじめてまぁまぁまとまった時間の電車通勤をすることになった。しばらく休んでいたのだしやっていけるだろうか…と不安になったがまぁ数日やったら慣れた。新しい環境に入った時の、他人っぽかった通勤電車の空気とかオフィスフロアの知らない人たちとかそれぞれのルールとか、そういうものがだんだん自分のプライベートに少しずつ溶け込む時の感覚が好きだと思う。新しい生活の始まりを感じる。
激務でもなんでもないのだが働いているとなぜか小食で済む。あまり飯を食わない代わりにガムを噛みたくてしょうがないのだが、いろんな人が入れ替わり立ち替わりいろいろなことを教えてくれる中でガムを噛むのもなんか失礼だし生意気だなと思いコンビニで飴を沢山買い込んで舐めている。もともと好きなUHA味覚糖のミルク飴のようなものに抹茶味があったのでこれはこれはと食べると中に小豆のチャンクが入っていた。普通の小豆の味じゃないけど知ってる味だ…?と袋を見ると『抹茶紅豆冰味』とあった。紅豆冰(ホンドウビン)!!紅豆冰とは香港では比較的ポピュラーな小豆の冷たいドリンクだ。懐かしい!!紅豆冰味ではニッチすぎると抹茶要素を付加したのだと思う(もしくは抹茶味では普通すぎるので紅豆冰要素を付加した)が、抹茶の紅豆冰なんて変化球的なドリンクを飴にしてしまうなんて日本人って本当に天才!!美味しすぎて帰り道に家用で2袋買った。

2025年3月2日(日)
昨日の夜に新宿で飲んで、家に帰るのが面倒くさくて都心の友達の家に泊まった。起きて近くのパン屋に行きまたその子の家で昼まで時間を潰した。YouTubeで最初はDoechiiとかそういう流行っているものを見ていたのが徐々に懐メロ大会へとシフトする。何をどう経由したのかもう覚えてないけど、僕はかつてThe Pussycat Dollsが好きで、友達はFifth Harmonyが好きで、ひたすらにその辺の動画を見た。こういうエロかっこいい系グループにはアメリカという国の凄まじさを感じざるを得ない。何をどう考えてもあんなにエロに振った歌詞に対してあんなに本気のメロディを、あんなにしっかりスキルのあるグループに歌わせるなんてプロデュースはアメリカという国でしか出来ないし、実際にやっていない。どう頑張ってもエロはB級になってしまう、それが僕が知っている文化圏の実状だと思う。同じ英語圏でもSpice GirlsやLittle Mixのようなイギリスのグループはエロを取り入れない。本場アメリカのエロかっこいいについて興奮しながらひとしきり話して友達の家を出た。東京マラソンがあり思うように駅まで行けなかった。こんなにも沢山、高いお金を払って走りたい人が存在するという事実が受け入れられなくてマラソン大会というのは見かけるといつも狼狽する。ラジオが好きな人とか、筋トレが好きな人とか、パンが好きな人とか、コスメが好きな人とか、趣味ってそれを愛好する人たちの中に一般的になんとなくうっすらとした人間性の共通項を見いだせることが多いのだけど、マラソンが好きな人とMARVELの映画が好きな人にはそれが見いだせないのが怖い。マラソンとMARVELに、コンテンツとして恐れを抱いている。

以上です。Audibleにある渡辺えり朗読の原田マハ『板上に咲く』が素晴らしすぎて毎日ずっとこればっかり聞いている。

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