日立台の魔法使い 3 りゅうすけ 2021年3月11日 18:53 フランソアウド・セナ・ジ・ソウザ(Françoaldo Sena de Souza)Wikipediaでの本名は、こうなっている。多くのブラジル人がそうであるように、彼もまた長い本名ではなく、ニックネームで呼ばれることの方が多い。"フランサ"かつて、Jリーグ柏レイソルに在籍していたブラジル人選手だ。Jリーグ創立から今日まで、幾人もの外国人選手が、来日しては消えていった。その多くはサッカー王国ブラジル産で、フランサもまた、王国からの使者だった。「サッカーが上手い」という表現には、2つの角度があると思う。僕みたいな経験者ではない人間が理解できる「わかりやすい」上手さと、サッカー経験者でしかわからないであろう「わかりにくい」上手さだ。フランサのプレーは、圧倒的に前者だった。稀有なテクニックと意外性のあるプレーで、観客を沸かし、スタジアムを揺らす。かと思えば、守備はしっかりサボって、試合中のピッチで、つまらなそうに歩いている姿をよく見かけた。そんなところも愛らしかった。いつも頭に太いヘアバンドを巻いて、ミズノ製の真っ赤なスパイクのつま先には、"穴が空いていた。本人曰く、穴が開くくらいに履きこんだスパイク"が最高らしい。そんな特異な容貌や、哲学的ともいえる道具へのこだわりもまた、彼が「魔法使い」と呼ばれ、愛された一因なのかもしれない。フランサの生まれたブラジルや隣国のアルゼンチンには、「魔法使い」と呼ばれる選手がたくさんいる。だけれど、僕に一番の魔法を見せてくれたのは、間違いなくフランサだった。別にレイソルサポーターでもないのに、彼の魔法を一目見たくて、何度も日立台に足を運んだ。(レイソルサポの方すみません!)うまいこと魔法が発動して、スタジアムを幸せで包んでくれる日もあったし、調子が悪く、輝きを放てない日もあった。そのどちらもがフランサで、彼の一挙手一投足を目で追った。フランサが日本で使った魔法で一番好きなのは、アウェイの浦和戦で放ったこの一発。試合終了間際ロスタイム、満員のアウェイ埼玉スタジアム、そしてこの名実況。すべての要素が完璧に噛み合った極上の魔法は、いつまでも解けることはない。 いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する この記事が参加している募集 #スポーツ観戦記 15,983件 #すごい選手がいるんです 3,173件 #エッセイ #スポーツ観戦記 #すごい選手がいるんです #魔法使い #柏レイソル #魔術師 #Jリーグを語ろう #サッカーの忘れられないシーン #ロスタイム #日立台 #名実況 #フランサ #浦和戦 3