見出し画像

忘れたい恋を忘れたくない。



文字通り、身を削る恋だった。
人生で一番辛くて、一番幸せな恋だった。



久しぶりの投稿がこんな記事になると思わなった。
でも吐き出し続けていないと堪えられない。


出会ったその日に、この人しかいないと思った。
お互いに、惹かれ合うことを避けられなかった。

どんな人だろう?
私のこと好きなのかな?
彼のこと好きなのかな?

お互いそんなこと思う暇もなく、
愛に落ちてしまった。


出会ってからしばらくは毎日一緒に居た。
あまりにも幸せで怖いくらいだった。
毎日一緒に居ても足りなくて、
いくら話しても足りなくて。


この人と出会うために今までの人生があったんだと
本気で思った。


でも最初からうまくいってなんかいなかった。
彼はずっと不安定で、私の些細な言動に気分を損ねて
10分前にお店に入ったのに、「今日は帰ろうかな」と理由も告げずに帰る人だった。

3日に1回は「離れよう」と言われた。

価値観が合わないと。
もっと長い期間一緒に居て、もっと好きになって、離れるのが辛くなる前に終わりにしようと。


私は彼がそんなことを言う理由が
全く分からなかった。
こんなにお互い好きなのに。
価値観がぴったり合う人なんて居ないのに。
合わないところはお互い理解し合って歩み寄ればいいのに。
時間が経っても、
離れるときは「離れたい」と思う時だ。


だから3日に1回、
彼に話をして理解してもらおうとした。
彼の話を聞いて、理解しようと努力した。


そして彼も、勝手に戻ってきていた。
離れていった数時間後には隣に居た。


愛情表現をたくさんする人だった。
愛情表現が苦手だった私には少しこっぱずかしくて、でも嬉しかった。
私も同じだけ返そうと、恥ずかしさを隠してたくさん愛情表現をした。そのうちそれが当たり前になって、言われる前に伝えたいとさえ思うようになった。


彼のためなら何でもしたいと思った。
生きづらさを抱えてきた彼の支えになりたいと思った。もともと恋人に染まりやすい私は、一瞬で彼に染まった。


涙が出るほど笑い合ったり
寝不足を鑑みずに明け方まで喋ったり
作ったことのないレシピに挑戦したり
子供みたいに夢中で卓球をしたり
彼にダーツを教えたり
2人の共通言語がたくさんできて
どうせこう考えてるんでしょって当て合って
弾丸で旅行に行って
夏の予定を決めるまで帰らないと決めたのに6時間も違う話でお酒を飲んで


毎日が輝いていた。
離れてる時間さえ、彼と生きていると感じられた。


親友にも、そんなに好きになってる姿初めて見たと言われた。


それでも彼は何度も離れて、何度も戻ってきた。
離れることに慣れたくなくて、離れるたびに絶望を味わった。




彼が家を出ていくのをドラマのように追いかけたりした。
朝日がのぼる時間に外に声が洩れるほど玄関で大泣きして、帰ってきた彼に倒れ込むように抱きしめられたこともあった。
彼がずっと居たこの部屋に耐えられなくて、平日の夜中三時に泣きながら散歩したりもした。
電車で泣きながら出社した。
仕事中我慢できなくて、トイレで声を殺しながら泣いたりもした。


でも何度離れても、彼は特大の愛情で私を包み込んだ。だから私も、何度でも受け入れた。何度でも信じれた。


「死ぬまで傷つけあって生きていくか」
そう呆れたように笑いながら彼は言っていた。

「離れるのなんて無理だね」
と二人で抱きしめ合った。

「”離れよう”と答えを出してもその前に書く”A”がbambiだから答えにならないんだ」
彼なりの論理で彼はいつも納得していた。

「今までずっと一人で生きてきた気がしてたけど、初めて2人だと感じた」
「毎日なんでこうして生きてるんだろと思ってたけど初めて生きてる意味を感じた」
そう言われた時は本当に嬉しかった



この人となら幸せになれる。
この人と幸せになる。
そう信じて疑わなかった。


でも確実に歯車は噛み合わなくなっていた。
私が彼を理解していくほどに、彼は私を疑い始めた。
人格を否定し始め、私を縛り始めた。


それでもいいと思ってしまっていた。
彼が安心できるなら、彼に愛が伝わるなら。
もっと染まっていいと思っていた。


話し合いが重く長くなり、しこりが残るようになった。
彼に押さえつけられる感覚が増して、私はどんどん息苦しくなって、彼の「離れよう」をすんなり受け入れられるようになっていた。


思い返せば私はずっと泣いていた。

それでも愛していたし愛されていた。
絶対に平穏な日が来ると思っていた。



だけど無理だった。
私は私の限界を感じ、心の危険を察知した。

「これ以上いくと壊れる」

本能がそう叫んだ。


そして最悪な終わり方をした。
これ以上ないという程に、最悪な。

でもその時しかなかった。
彼のことを最悪だと、最低だと思える瞬間はその時しかなかった。


「離れたい」じゃなく、「離れなきゃいけない」と思ってしまった。彼の答えの”A”は私じゃなくなった。



彼が最初に言っていた通りの結末になってしまった。
だからきっと彼に未練はない。
彼を理解していたからこそ、自分の考えが正しかったと、時間を無駄にしただけだったと思っている気がしてならない。


周りは皆、「離れて正解だった」と言う。
私もそう思う。

「彼の愛は愛じゃなかった」とも言う。
私はそうは思わない。思えない。思いたくない。



お互いに、望むことは一つだけだった。
その一つさえ叶えば、他には何も要らなかった。
でもそれを、永遠に叶え合えなかった。


世の中には何個も望み合って、何個も嫌悪し合いながらも一緒に居る2人はいるはずなのに。
100%幸せだと思えなくても一緒に居続けられる2人はいるはずなのに。

私たちは、1個ずつしか望んでないのに。
一緒に居れば200%幸せなのに。


壊し合うことしかできなかった。
お互いにお互いを満たそうと全力だった。
お互いに満たされたくて必死だった。
なのに何でそれができなかったんだろう。


たった一つ、愛する人の望むことを叶えるだけだったのに。
どうして私たちにはそれができなかったんだろう。


誰よりも愛してたのに。
誰よりも一緒に居たかったのに。
誰よりも大事に思ってたのに。
誰よりも幸せになれると信じてたのに。
1個の望み以外は何も要らないと本気で思ってたのに。


考えても考えても分からない。
私が彼を満たせなかった理由も、彼が私を満たせなかった理由も。


求めすぎた?もっと踏ん張ればよかった?
でもそんなことしたらお互いにもっと壊れていた。
だからきっとお互いに自分を守るため、離れるしかなかった。
離れることでしか大事にできなかった。


私は彼の幸せにはなれなかった。
彼の幸せを願うことでしか、彼を幸せにできなかった。


私達の関係が誰の目にどう映ろうと
私達にしか分からないものがあると思っている。
もがいて苦しみながら求め合って与え合って。
例えそれが闇のような世界だったとしても、それが私達だった。誰かに理解してもらおうとは思わないし、理解しなくていいと思う。
誰にも簡単に触れてほしくない。

私が盲目だったのは分かってる。
彼の全てが嘘だったかもしれない。
愛があっても何があっても、彼はしてはいけないことをしたのは間違いない。
でも
彼を知らない誰かに彼を否定して欲しくない。


もう戻ってくる彼は居ない。
どんなに泣いても抱きしめてくれる彼は居ない。
私に愛は伝えてくれない。


自分の生活ができていることを幸せに思う。
ラインが来ないことに慣れて
電話が来ないことに慣れて
予定を好きに入れて、好きな人と会える。
この恋のおかげで、自分のことをもっと知ることができた。きっと次の恋はもっと幸せになれるし、もっと幸せにできる。


だから忘れないといけない。
前に進まないといけない。
きっともう少し時間が経てば、進めてしまう。
だって、この結末は正しかったと思えるから。


だけど、戻ってくる彼をどこかで待っている自分が居る。気づいて、求めて、「ごめん」と一言謝ってくれることを願ってしまっている。


それができない彼なのも分かった上で、
まだ信じている。

あの終わり方は到底許されるものではないのに、
許してしまいそうな自分が居る。


全部わかっていた、と。
愛も傷も全部、彼のものだから大丈夫、と。


まだ、忘れたくない。
前に進めそうな自分がこわい。
もしも彼が戻ってきたとき、「もう戻れないよ」と言ってしまう自分になるのがこわい。


彼の中にいつまでも私を残していて欲しい。
それが彼を苦しめたとしても。
あんなに夢中になった恋はないと
せめて彼がそう思える女でありたい。


だから辛い。
忘れたくて、忘れたくなくて。
平気になりたくて、なりたくなくて。
会いたくなくて、死ぬほど会いたい。

愛してると伝えたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?