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お台場合衆国幻影探究⑤ -舌鼓-
《チリーン………チリーン……》
ネプリーグメンバーが全員去ると、すぐに日が沈み、あたりは闇の静寂に包まれた。
──はずだった。
《チリーン………チリーン……チリーン…》
幻聴だろうか…。いや、確かに聴こえる。
《チリンチリン……チリーン……》
夜空の向こうから、ちいさなベルのような、か細い音が聞こえるのだ。
旧友の声よりも聴いたような、いま人生で初めて聴くような…。
不可能かもしれな
お台場合衆国幻影探究④ -贖罪-
粉々になったフジテレビの球体展望台の破片を拾い集めようと、軍手を二重に嵌めたその時、聞き覚えのある声がこだました。
「ホンマごめんホンマごめんホンマごめん」
フジテレビ本社屋全壁側面駆け巡りネプリーグトロッコ展望台到達瞬間展望台粉々トロッコ落下全員死不可避命背負い平謝り名倉潤だった。
本当に謝っても謝りきれないという顔をしていた。
確かに、これまで本社屋の中を歩いている最中にも、時折窓の外
お台場合衆国幻影探究③ -邂逅-
「いいねぇ……」
お台場合衆国大統領のマイケル・サンデルに別れを告げてフジテレビ本社屋の廊下を歩いていると、家族ゲームの時の櫻井翔が現れた。
家族ゲームの時の櫻井翔は、両腕を過剰に振り回して歩いている。
「いいねぇ……いいねぇ……」
櫻井翔の手のひらの上をよく見ると、小さな街を持っていて、その中に小さな櫻井翔が歩いていた。
「エンディングのミニチュアみたいなやつここで撮ってたんですね。」
お台場合衆国幻影探究② -突撃-
人ひとりを0.1世紀も隔ててもなお惹きつける、この土地と季節の異様なムードを、過去の足跡をなぞることで、改めて身体感覚に刻みつけようというのが、今回の目的だった。
いや違う。
数々の合衆国ランドスケープを尻目に、我々の足は、気づいた頃にはもう、取り返しのつかない方向へと進んでいた。
「フジテレビ お台場合衆国係」
果たして、どのくらい歩いたのだろう。
その文字が刻まれた鈍い金色のプレート
お台場合衆国幻影探求① -到着-
2022年8月27日。
怠惰な真夏の陽が、晴れ渡った空に照りつける中、我々はついにフジテレビ本社を訪れた。
目的はひとつ。
お台場合衆国の幻影を探し求め、追憶に思いを馳せること。
以下はその詳細な記録と所感である。
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12時ごろ、東京テレポート駅に到着。
電車のドアが開いた瞬間、『踊る大捜査線』の駅メロに出迎えられて早くも心を鷲掴みされる。前に来た時の記憶の
【お台場シリーズとは?】
2009〜13年の夏にフジテレビで開催されていた「お台場合衆国」の楽しさを未だに忘れられない筆者が、お台場を訪れ、フジテレビの記憶を彩るいろんなモノや人に遭遇するドキュメント。「お台場合衆国幻影探究」と題している。どこからでも読めます。