ナンパのテクニック
一人で渋谷を歩いてたら男性に声を掛けられた。わたしのオーラはサングラスをしていても溢れてしまっているようだ。
「おねえさん!」
反射的に反応してしまった。しまった。
「おねえさんめっちゃ服かっこいいすね!俺そういうの好きっすよー。サングラスもかっこいい。俺にちょっと掛けさせてくださいよ。」
逃げようがなくてこわい。YESともNOとも言わず、目線を合わせず、曖昧な笑顔だけを返す
「それどこで買えるんすか?そんなの売ってるの見たことないですよー。手縫い?まさかおばあちゃんにつくってもらったとか?おねえさんアーティストとかっすか?」
マシンガントークは止まらない。文脈がはちゃめちゃすぎる。さては、脳を混乱させて正常な判断ができなくなる催眠術をかけているな。
「やっぱりそうなんだ。漏れ出ちゃってますよ。」
おれの漏れ出るアーティスト性には気づけるのに、漏れ出る不快感には気づかないのか。
「おねえさん髪サラサラですね!トリートメントとかやってます?俺美容師なんですよ。どうやったらその髪の毛保てるか聞かせてくださいよ。」
一瞬本当に美容師と信じて普通に答えてしまう。
「そっかー。俺カツラだからさーお姉さんと交換してもらおうと思ったんだけど。ほら!みて!」
嘘だった
「俺友だちと遊ぶ約束してたんですけどー。ハブられちゃってー。可哀想じゃないですか?おねえさんこのあとどこ行くんですか?」
…友だちと待ち合わせしてます
「またまたそんな見え透いた嘘つかないでくださいよー」
さっさと離れたいけど人混みだから走れないし、変な刺激を与えて不快な目に遭いたくない。
わたしがこの人から逃げずにこの人がわたしから逃げるように仕向ければいいんだ。と閃いた。
「本当にしてますよ。あと6分後の電車に乗らなきゃいけないんです。お兄さん一緒に駅まで走って着いてきてくれますか?」
そこで初めて笑みを浮かべてしっかり相手の目に視線を向けてみた。
「あー、。。それは…。俺走るの遅くて。」
「ですよね!じゃ!」
「ごめんね」
あなたについて行った先に自分には得るものがない、逆の立場にして教えてあげた。自分のペースに乗せようとする相手には、無理やりわたしのほうに引き込んで振り回しちゃえばいいんだ。前みたいに怒りが湧かなくなった。互いに互いを思いやれる相手が見つかるといいね、あなたにも。