ナンパのテクニック2
渋谷でロールケーキをもぐもぐ食べていたら、ナンパに遭ってしまった。
「おねえさん、それなに食べてるんすか?ロールケーキ?美味そー。おれロールケーキだいすきなんですよ。」
げげ。これから知り合いのDJ観に行くってのに足止めに遭ってしまった。
「これからなにするんすか?」
DJを聴きに行きます
「えーなに系の?」
なに系…わからないけど…kawaii future bassとかさっき聴いてました…
「あー!おれそんな詳しくないけど、じゃあ、重低音好き??」
まあ…
「てか紅茶のロールケーキいいなー!おれも紅茶好きー。週一で紅茶飲むよー」
え、なに飲んでるの?
「リプトン」
そこで、リプトンは紅茶じゃない!とブチギレてしまった。いや、リプトンにも美味しい茶葉はある。しかも缶に入った。君が飲んでるようなスーパーやコンビニに売ってるリプトンだけがリプトンなんじゃない。
「おねえさん何歳?」
そういう君は何歳なんだ
「おれ?おれは19歳」
年下と聞いて、なんかこわくなくなった。
わたしは知っている。こういうナンパをするとき、大抵近くに友だちがいるもんなんだ。
「ともだちは?どこいんの?」
「えっ、あそこにいるけど」
「よし、じゃあ挨拶に行きます」
どうやら彼らはふたりともグラフィックをしているようで、これからその関連の展示に行くつもりだったみたいだ。なんでそのタイミングで声掛けたのかわからないが、インスタを教えてくれと言われて、迷った挙句にどこ出身か聞いてみたらわたしと同じ横浜だったので、はまっこに免じて教えた。ナンパしてきた相手に自分の素性を教えるなんてしたことがなかった…と教えた直後に気づき、教えなきゃよかったかな…危ないな…と思っていたが、インスタでわたしが撮った「破壊的価値創造」の映像を観て「すげー!」と言ってくれたので、気分が良くなった。なんと地元の最寄駅が隣だった。近い場所で生まれ育ったひとは似た空気を纏っているものなのだろうか。
彼らの話を聞いてみたらなんとなく面白そうだったのと、声をかけてきた彼はチャラかったが友だちの子が信頼できそうだったので、ちょっとのあいだついていってみることにした。好奇心!
その友だちの子が展示の前にタワレコに目当てのCDを買いに行きたいというのでみてみたら、わたしもちょこっとだけ知ってて動向が気になっていたアイドルグループだった。ちょっとだけその話ができたので、知っていてよかった。リプトン兄貴は、海外のコアなヒップホップを聴いているみたいだった。あと、でかいスピーカー載せた車で音楽聴くのめっちゃいいよ、今度来なよ、と言われた。それは考えとくと言った。
知り合いのDJが始まる時間が来てしまうので結局タワレコでおさらばだったが、友だちの子がアイドルの話を少しした後に最後にこれあげる…と言って手描きのグラフィティのステッカーをくれた。なんだかそれがすごく、HOT、だった。手描きっていいよね。この子が将来ものすごい売れっ子になったらこのステッカーを自慢しよう。
こういうひともいるのかー。とおもしろかった。リプトン兄貴は、相変わらずチャラかったが大学でなんの勉強してるのかと聞いたらITと法律と言っていて、グラフィティも本当は好きだけど、合法の範囲だと一般道に落書きとかできないからそれはやっておらず、そのかわりともだちのスケボーにペイントしたりしてるらしい。真面目なのね。
夜の渋谷歩いてる人間なんてろくな奴いないから、ナンパしてないでグラフィティ極めてるほうが良い出逢いがあるよ。
最後別れるとき、握手でもなくハイタッチでもない、グーで拳合わせるやつをやって、横浜のストリートでパルクールを撮っていた19歳のときの自分のことを思い出していた。
🤜🤛
二人の人生に幸あれ。