夏目

読書ノート

夏目

読書ノート

最近の記事

『働け』という有形無形の圧力

「〇〇(内定先)で働くとは」という課題が出された。そもそも「働くとは」の時点でつまづいている。 私は25歳で、来春から社会人になる。4年制大学を卒業した後、2年で修士号を取得した。今は博士課程1年だが、中退して来年から働くことにした。研究を続けるか悩んでいたから昨年度は就活をしなかったが、悩むくらいなら。と思って就活を始めたのだった。感染症が世界を混乱の渦に巻き込み始めた頃だった。 思いの外、就活はうまくいった。リモートの面接は直接の面接と大して変わらなかったし、当時はど

    • 「家族の幸せ」の経済学

      『経済学』といわれると、なにやらお金にかかわる小難しい話をされるのではないかとドギマギしてしまう。しかし著者に言わせてみるとそうではない。経済学とは、人びとがなぜ・どのように意思決定し、行動に移すのかについて考える学問をいう。経済学で得られる知見を『家族の幸せ』に活かす。これが本書のタイトルが言わんとしていることだ。 本書は「家族の幸せ」に関連する6つの章(結婚、赤ちゃん、育休、イクメン、保育園、離婚)で構成されている。 本書では、当たり前だとされることをデータで示すこと

      • No.2 岩井勇気 「僕の人生には事件が起きない」

        お笑いコンビ「ハライチ」の岩井さんによるエッセイだ。ハライチの目立たないほう。そんな風に呼ばれがちだが、この人はネタ作り、絵、ピアノ、サッカーなど多彩な能力を持つ。 僕の人生には事件が起きない。 そう。本書では事件が起きない。それなのに、違う角度から日常を見る筆者のショートストーリーに、思わずクスリと笑ってしまう。ほんの6ページ程度の物語が20以上詰め込まれている。いずれも筆者の日常に根差したものだ。 私が気に入ったエピソードを1つだけ紹介しよう。 風邪をこ

        • No.1 五木寛之 「大河の一滴」

          マイナス思考のどん底の中からしか本当のプラス思考はつかめない 初版から20年たった今、話題になっている五木寛之さんのエッセイ。論理的というよりも直感的な物言いに戸惑う部分もあるだろう。しかし、筆者の主張したいところはそこなのだ。つまり、論理的には説明しきれない、人間的な感情が今の時代には軽視されているのだ。と。 筆者は幼少期の体験、親鸞への信仰心、自殺という心の内戦、著者に影響を与えてきた書籍、さまざまな観点からマイナス思考の重要性を説く。 「ポジティブでいるべきだ。」 我