書評 勇魚 ガイジンさんが描く日本の歴史活劇
五十路のおじさん、ばっどです。
勇魚
C.W. ニコル
書評のネタを探して本棚を漁る。
若かりし頃に読んだ本も結構残っていて、その中の一冊(文庫上下セット)。
高校時分に氏のエッセイはずいぶん読んだ。
自然の中で生きていけるヒトに憧れがあったのだと思う。
また、自分はキャラとしてはおとなし目だったので、「やんちゃ」にも惹かれたのであろう。
で、この本はエッセイではなく長編の物語。その存在は知っていたが、大人(20代前半)になって、やっと読んだという記憶がある。
幕末鯨捕りの話として、比較的新しいものだと、伊藤潤氏の鯨分限なんかがあって、これは明るめの冒険活劇だったりするのだが、勇魚はどっちかというとクラめのトーンである。
幕末。漁獲が下り坂で先行き不安な紀州太地。
将来を嘱望される若き鯨捕りは、ある不幸な出来事により、思いもよらない人生を歩みます。
思いもよらないというか、ありえないというか、まぁどえらい話です。激動する歴史描写、主人公の行く先で起こる騒動、生々しい人の営み。
恋あり冒険ありと、内容的にはテンコ盛です。
いろんな意味でドキドキしたりヒリヒリしながら楽しめます。
あまりワクワク、という感じではありません。
驚くべきはイギリス(ウエールズ)人のニコル氏がこれを書けたという事実。
翻訳ではあるにせよ、歴史やその時の文化を理解してないといけないわけで、日本人であってもおいそれと書ける内容ではないお話です。
どういうとき、人におすすめかというと、はっきりはしないけど、おっさんじゃなくて若い人に読んで欲しくはあります。
クラめだけど冒険活劇で、サーガ的なところもあるので、いったい自分は何をしたいねん的な時期に読むと良いかもしれません。