書評 戦艦武蔵 報告書文学?!
五十路のおじさん、ばっどです。
戦艦武蔵
吉村昭
ノンフィクション系小説の大家、吉村昭氏の初期の傑作。
社会人なって間もないころ、出張のお供にテキトーに買った本だったような気がするが、初読時は衝撃であった。
報告書か!という読感とはうらはらに、面白いのである。
資料含め取材から起こした記述もあるものの、徹頭徹尾事実事実事実。。。
感情の入り込むすきがありません。
とはいうものの、読み物としての面白さは十分。
テーマ選定と物語の構成が巧みだからでしょう。
「戦艦武蔵」の場合、戦争や建艦と関係がなさそうな市井のある異変から物語が始まり、それが武蔵建造の重要なポイントにつながって行きます。
同じく兵器の通史ものである「零式戦闘機」では「マジか!」という製造時の秘話というか意外過ぎる事実からお話が始まりますが、取材力やネタのぶち込み方に凄さを感じます。
エキサイトメントはきちんとあり、読書の楽しみにも溢れています。
これはテーマ選びが重要なんだと思います。
こういう衝撃をもって、社会人前半期には、吉村作品を読み漁ることになります。
三陸海岸大津波、熊嵐、破獄、などなど。。。戦史もの以外でもまぁ様々なテーマを書かれており、いずれも傑作ぞろいです。
氏の作品にはエッセイや創作もありますが、エッセイはちょっと?だったですが、創作の小説では「仮釈放」は面白く(切なく)読めました。
ノンフィクションの極地みたいな文学で、氏の世界観に引き込まれましたが、近年読み返そうとすると、昔は良いと感じた結構な無機質さが、ちょっとしんどかったりします。
これは恐らく自分の読書力の低下によるもの。スマホばっかさわってるからこうなったんじゃないかと勝手に思っています。
吉村昭を集中して読める人は、きっとスマホとかに脳を侵されてないなんじゃないかと思います。
氏の作品を読んだことがない人、ダマされたと思って一度読んでみてください。
読書の新境地が拓けることウケアイです。(しらんけど!)