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アートディレクターの1日

ゲーム開発のアートディレクションとは実際どんな仕事なのか?
調べても求人情報が圧倒的に多く、実務を想像できる記事は少ない。
なので、筆者の1日を例としてご紹介。
この実務内容は開発会社のアートディレクションなのでパブリッシャーさんより現場寄りかもしれない。それだけご了承頂きたい。

・ほぼ1日ミーティングの日
・チェックだらけの1日
・実際にゲームを触って確認する日
・納品間際の実機チェックが多くなる日
・なかなか無いが、作業に専念できる日

上記のように毎日ルーチンという訳ではない。
バリエーションに富んでいて飽きる暇はないのでご安心を。
上記のようなパターンに加えて、開発フェーズや採用シーズンなどシーズナルな変化も加わってくる。
筆者の場合はそれに加えて会社の運営面の仕事もある。
そういった部分が混ざると内容がボヤけるので今回は割愛。
ここでは、アートディレクションの代表的な実務に焦点を絞ってご紹介したい。

Aパターン

■社内ミーティング中心の日
11:00
出社後、スタンドアップ
11:30 〜13:00
Slack、メール確認、返信
最新ビルドデータ取得、各種チェック作業
13:00〜14:00
ランチ、余裕があれば外食
14:00〜15:00
リーダー陣(組織図の)の定例ミーティング
15:00〜16:00
プロジェクトリーダー陣定例ミーティング
16:00〜17:00
プロジェクトの進捗確認会
17:00〜18:00
少し、一息付いてからチェック作業
18:00〜18:30
プロジェクトの夕会
18:30〜
チェックが立て込む時間
問題があれば1on1やお悩み相談など
20:00〜
自分の作業に集中できる時間

Bパターン

■クライアント対応の日

11:00

出社後、スタンドアップ
11:30 〜13:00
Slack、メール確認、返信
クライアントとのミーティング資料、確認事項まとめ
13:00〜14:00
ランチ、余裕があれば外食
14:00〜15:00
クライアントとのミーティング準備
15:00〜17:00
クライアントとの定例ミーティング
17:00〜19:00
チェックが立て込む時間
19:00〜20:00
実機確認会
20:00〜
自分の作業に集中できる時間

Cパターン

■作業日

11:00

出社後、スタンドアップ
11:30 〜14:00
Slack、メール確認、返信
最新ビルドデータ取得、各種チェック作業
13:00〜14:00
ランチ、余裕があれば外食
14:00〜18:00
チェックバック、指示書作成など
作業時間
18:00〜18:30
プロジェクトの夕会
18:30〜
チェックが立て込む時間
自分の作業に集中できる時間
こういう日は早めに上がる

大きく3パターン

■Aパターン
社内ミーティング中心の日

■Bパターン
クライアント対応の日

■Cパターン
作業日

Aが2日、Bが1日、Cが2日くらいが理想。
Cが確保できないとミーティングだらけの予定になってしまい…なかなかチェック作業が捗らない。
ミーティングも大事な仕事だが、ご覧のようにご想像より純粋にアート仕事は少なく見える。これが大体20:00以降の「自分の作業に集中できる時間」に偏りがち…

配分と移譲が大事

どのパターンにも夕方に「チェックが立て込む時間」がある。これは作業者が帰り間際、今日の作業を終えたりキリの良いとこでチェックを投げてくることが多いためだ。
この時間意外にも随時、方向性に迷ったりした場合に途中経過の確認も送られて来る。
随時これに対応していたら身が持たない。

配分
そのため、2Dデザイン段階のチェックは月、水、金
3Dは火、木などチェック種別毎に振り分けている。
カテゴリで分けるのは、効率化のため。
なぜなら2Dも3Dも混合だと色々なツールを行き来してチェックすることになり非効率だから。
いつも当日の夕方来たものを全てその日に返すのは難しいため、翌日いっぱいまでにはお返しする。たまに、できない場合もあるが…
特に重い内容(赤ペンを沢山入れる場合)やクライアント確認が必要そうな場合は時間を貰い、他の作業を進めて貰う。
チェックが滞り手ブラにならないよう次の次くらまで作業はお渡ししておく。
配分しても総量は変わらないので、あとは時間との勝負。

■移譲
開発期間の長いコンソールタイトルでは、序盤は細かいチェックに時間を多く取るが徐々に各チームのリーダーにチェックを移譲して行く。ポイントとコツが分かれば、チェックは徐々になら他者にお任せして行ける。
どうにも判断が難しい場合だけ投げて貰うくらいでいい。

移譲することによって楽になったように思われるかもしれない。が、残念ながらそうではない。

この段階では、実装されたデータ類のアニメーション、エフェクト、レベル、ライティング含むゲームの画面作りや演出面のチェックに移行している。

工程が変わるだけで、チェックは開発が終わるまで続く。
こうして、フェーズ毎にチェック段階を移譲、移行しながら進まないと今のコンシューマー開発は確認できる規模ではない。

その他

採用関連
上のようなバリエーションの他、協力会社さん選定、書類選考、面接など開発ラインの強化、増強も大事な仕事。
新卒採用の展示、説明会、最近ではリモート選考会への参加もある。
コロナ禍でなければ、採用シーズンには地方の専門学校や大学など出張する場合も。そういう非日常もまた楽しい。

お付き合い
クライアントさん、協力会社さん、営業を兼ねた会食などお付き合いも重要。こういう機会は息抜きになる場合もあるので、せっかくなら楽しむ。

などなど…
また書き出すと長くなりそうなので他のお仕事は、以前の記事をご確認を。

意外に大事なこと


ご覧のようにコミュニケーションに割く時間が多く、自分で絵を作る時間はあまりない。
やろうと思えば、プライベートの時間を削った分だけ出来はする。
ただ、それでは確実に潰れる。仕事も嫌いになる。
アートのディレクターなので、ディレクションが仕事。20:00以降の時間で絵は描けなくもない。けど、上のスケジュールをこなして十分すり減っているはず。
そんな状態でも自分ならいい絵が描けるって人はいい。
でも筆者は無理だ。それやったらいつか身体か精神を壊す気がする。

日中にちゃんと時間を使っていい絵を作れる誰かにお任せした方がいい結果も出るはず。
それをディレクションするのがアートディレクターの仕事のはずなので。
無理は禁物。

開発チームなんだから何でも自分でやって自分で決める必要は無いし、人を頼れるとこは人を頼るべき。
抱え込んで自分がボトルネックになる方が周囲に迷惑だし、それで信頼を失っては元も子もない。
何でも俺が俺がってしゃしゃり出ずに、ここぞという時「代打、オレッ!」って感じでバシッといい絵を出す方がカッコいいし。いい絵が出ないとカッコ悪いけど…
そんな時に備えて、人を頼れるところは手放して温存しておくのも大事。

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