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カール・ズスケの芸術-私が敬愛するヴァイオリン奏者について
カール・ズスケは旧東ドイツを代表するヴァイオリン奏者である。
参考までに、ドイツ・シャルプラッテン・リマスタリング・プロジェクトのブックレットによれば次の通り。
カール・ズスケ
1934年、ドイツのライヘンベルク(北ボヘミアのリベレツ)生まれ。ライプツィヒ音楽大学でゲアハルト・ボッセ(後のゲヴァントハウス管弦楽団のコンサートマスター)に学ぶ。54年、ゲヴァントハウス管弦楽団に入団、同時にボッセが第1ヴァイオリンをつとめるゲヴァントハウス弦楽四重奏団の第2ヴァイオリン奏者となった。62年にベルリン国立歌劇場管弦楽団に移って第1コンサートマスターとなる。66年にズスケ弦楽四重奏団(後にベルリン弦楽四重奏団と改称)を結成。77年にゲヴァントハウス管弦楽団の第1コンサートマスターとなり、ゲヴァントハウス弦楽四重奏団のリーダーも務め、93年までその地位にあった。91年から2000年まではバイロイト音楽祭の第1コンサートマスターも務めた。
さて、バッハの有名なガヴォットは、彼の魅力をありのままに伝えてくれる。
テンポ、フレージング、アーティキュレーション、どれをとってもまさにお手本のような演奏だが、退屈さは皆無、むしろ聞けば聞くほどに彼の音楽の揺るぎのなさ、実直さに深く魅了される。
それでいて彼の音楽は実に気さくで、素朴ですらあり、妙な近寄りがたさとは無縁なのである。
なによりもまた、彼のヴァイオリンの音色は極めて印象的で、一度聞いたら忘れられない独特の美音を特徴としている。
彼の音色は、しなやかで、独特のツヤと透明感がある。
木のぬくもりという表現が適切かどうかはわからないが、彼の音にはそういった素朴で自然なぬくもりが感じられるように思える。
上質な木の香りや土の香りと言ってもいいのかもしれない。
彼の音色からは、ドイツというよりむしろ東欧系の、肥沃な大地の豊かな土の匂いが、ほんのり香ってくる気がするのである。
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彼は生粋のオケマンであり、アンサンブル奏者である。
揺るぎないテンポ感、抑制のきいたビブラートやポルタメント、節度あるダイナミクスはもちろんのこと、その脱力の加減、力の抜き加減が絶妙なのである。良い音楽を阻害する力みが皆無なのである。
彼の自然体で誠実な仕事ぶりはまさに職人、ドイツのマイスターである。
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しかし、何と言っても彼の最大の功績は、ベートーヴェンだろう。
彼らのベートーヴェン弦楽四重奏曲全集は、まさに演奏史に残る名盤である。
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残念ながら、私は彼の実演に触れることはできなかったし、今後もそれは望めないだろう。
彼の芸術は録音を通じてますます輝きを増すばかりである。