【作品】黒百合
淀んだ空の下、激流の川の中に
人一人やっと立てるほどの岩が頭を出している。
激流を割る小岩の上に
闇から紡いだ糸で誂えたような、漆黒のドレスを纏った貴婦人が立っている。
一見うなだれているように見える貴婦人の片手に
一輪の黒百合。
その花言葉は「恋の呪い」。
貴婦人の無言の声が聞こえる。
この激流を、ためらわずにここまでおいでなさい。
私はここに立っている、この激流の真ん中の、あなたからとてもよく見えるこの場所に立っている。
この一輪の黒百合と共に。
激流の中 もしもここまで来れたなら、
私を抱きしめるよりも前に、この黒百合を私の手から受け取って下さい。
そして呪いを完成させてください。
愛しく狂う、魔法よりも強固なこの呪いを、
私から受け取って下さい。
私はそれまでこの黒百合を
片手にだらりと持って 激流の中に 永遠に居ります。
【追記】
この作品は10年以上前に書いた作品です。
昔書いたものもいくつか手元に残っているので、たまにそれらを見つけると気に入ったものや使えそうなものは都度保存しております。
そして今回は見出し画像を久々に自分で作りました。
見出しに使っている範囲より予め余分に紙にイラストを描いておき(必要な部分を選択しバランスを決めるための目安)、
「(必要箇所を)綺麗にカットするより手で千切って使いたい」
と思ったのでお手手で必要な部分だけビリビリ。
そして見出しサイズに適合するよう、元イラストに背景などを施したものです。
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