
短編小説読書メモ39本目~瀧羽麻子『夜明けのレタス』
初めての作家の本になる。
書店で見かけ、何となく気になったので、借りてみた。(最近、野菜はなるべく取るように意識しているからか、タイトルに惹かれた)
一作目は、『夜明けのレタス』。
東京での会社勤めに疲れはてた主人公・沙帆が、群馬の農場に転職するも、という物語。
都会で、システムエンジニアとして、クライアントや上司に色々と振り回されながら、深夜過ぎての残業も普通だった日々に比べると、「大変さ」は変わりないだろうが、彼女にとって百八十度の転換と言っても良い。
日の出前からのレタス収穫は、読んでいるだけでもその過酷さがわかる。が、主人公がそれに順応していることも文からは伝わってくる。
社長をはじめ、周りの人も温かい。
しかし、主人公にはある秘密があった。
それは、実家の両親に、特に母親に農園で働いていることを未だに伝えられていないこと。
そのせいで、ある日、自分にとって「群馬のお母さん」とも言える人を傷つけてしまう。
夜明けの風景の美しさ、そして朝食や昼食に出てくるレタスの味の描写が丁寧で、心に染みてくる。
他の作品が楽しみだ。